時間旅行
俺に身内はいない
物心ついた時から
ずっと一人で生きてきた
山のように積み上げられた廃材の中から
異次元メタルを拾い出すのが
子供の頃からの俺の仕事
宇宙大戦は終結し
この星にも平和が戻った
だが俺の暮らしに変化は無く
この世界の最下部で
静かに時の流れを見つめながら
息を潜めて生きていた
そんな時だった
鳴り響くベルに俺は目を開けた
俺の前に立つその男を
思い出すのに時間は掛からなかった
男は満面の笑みを浮かべ俺に言った
「体験型時間旅行はいかがでしたか?お望みの宇宙大戦集結時の混沌とした世界はお気に召されたでしょうか?」
俺は曖昧に頷きその部屋を出た
「今度は関ヶ原の戦いに足軽として参加してみるか」
タイムマシンと記憶制御装置が実用化され旅行会社の営業形態もずいぶん様変わりした
俺は仕事に戻るため自家用小型宇宙船リトルスターに乗り込んだ
また来る日まで、さよなら俺の故郷地球
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