望郷  超ショートです

草むらの陰から小さなけものがこちらを見ている。これは後で猫という動物だと知った。道端には見たこともない色の花が咲いている。後で黄色という色だと知った。行き交う人はとても奇異な服装をしている。これも後でスーツやブラウス、そしてTシャツやジーンズという服だと知った。道路には轟音をあげて恐ろしげな鉄の固まりが行き交っている。後で車という乗り物だと知った。
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光が、音がそしてすべての感覚が僕を苛む。僕は震えその場に立ちすくむ。
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そして僕は故郷を想う。僕はなぜこんな場所へと来てしまったのか?

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僕は帰りたい・・・
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あの場所へ・・・
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あの音のない・・・

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色もない・・・

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臭いも形もそして光さえもない・・・

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あの懐かしい異次元の世界へ・・・

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