Story of Kanoso#70「穴の中の君に贈る愛のプレゼント」/毎週ショートショートnote
午後2時5分、彼礎市東区の住宅街。ここに、運送会社「ハッピー・トランスポート彼礎」のダイハツ・ハイゼットがやってきた。
ドライバーの鈴木銅鑼権は車を降りると、荷物室からダンボールを取り出し、伝票に記された「届け先」の空き地に向かう。
空き地の地面にはマンホール、インターホン、そして「化石」の表札が埋め込まれていた。
インターホンを足で押し、地面に向かって「お届け物です!」と叫ぶ。
地面から「はーい、すぐ向かいます」と声が返ってくる。
マンホールが開き、穴の中から若い女が顔を出した。
「荷物、ありがとうございます!」
鈴木は一瞬面食らうも、すぐ平静を取り戻した。
「ハンコをここに。サインでもいいですよ」
女は伝票に「化石」のハンコを押すと、荷物を持って穴の中に消えていった。
「やだ、またあいつ……!」
その後、穴の中では、女が「愛のプレゼント」と書かれた箱と伝票を見て顔をしかめていた。
(了)(417文字)
あとがき
今週の毎週ショートショートnoteは「穴の中の君に贈る」ということで、多少変形してこのように。
人間が穴の中に住んでいるという光景自体ビックリなものですが、それ以上にビックリなのはインターホンを足で押すこと。
これも穴の中の住宅ならではか。
そして「愛のプレゼント」とは。女が顔をしかめた理由は。
続きをお楽しみに。
Writen in the commuter train“9312“(Operated by Kintetsu Railway)
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