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Story of Kanoso#90「運試し擬人化」/毎週ショートショートnote

 運試しをしようよ、書きかけの原稿用紙が話しかけてきた。

 「……寝かせてくれ、明日でこの町を離れるんだ。最後の夜ぐらいゆっくり過ごさせろ……」
 私はそう呟いて眠りについた。

 今日で彼礎かのそ市を離れ、別の町で新年と新生活を迎えるつもりだった。
最後の夜をゆっくり過ごそうと思っていたのに、なぜか起こされる。
 訳がわからないぜと思って、眠りにつこうとすると、用紙はボン、と煙を上げながら女の子に変化した。

 「さあ、次の町ではどうするかを決めよう!」
彼女は運試しの定番、じゃんけんを要求してきた。
「あたしが勝てばあたしの指定する通り、あなたが勝てばあなたの思い通りよ!」

 面白い。乗ってやろう。
どうせこれも夢なのだからと思い、私は彼女とのじゃんけんに臨んだ。

 「最初はグー、じゃんけん、ホイ!」

 負けた。
「それじゃあ、頑張ってね!」彼女は薄くなって消えていった。

 目覚めると、そこには新たな原稿用紙と、ペンがあった。
 面白い。次の町でも頑張ってやろう。

(完)(415文字)


あとがき

 90回に渡って、彼礎市に生きる人々の日々を描いた「Story of Kanoso」。今日で完結です。
 最終回は旅立ちの日を描こう、と決めていました。
擬人化要素を出せたか不安です。
運試しはじゃんけんを通じて表現しています。
 別の町でどう過ごすのか。また「原稿用紙とペン」は…また小説を書く、という事です。
 新連載もお楽しみに。

 90回の長きに渡る本作をご覧いただいた皆さんに、この場を借りてお礼を申し上げます。


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