ドジャースタジアムで大谷翔平の試合を観戦してみてわかったこと
サンフランシスコからロサンゼルスへ飛行機で向かう。
およそ1時間30分ほどで着く。
向かったのはドジャースタジアム。
ドジャースvsパドレスの試合が行われる。
完全なる「にわか」ドジャースファンだが、せっかくなので大谷翔平の試合を観戦したいと思って予約していた。
だが写真のとおり雨天である。試合が行われるか不安だ。
たまたま屋根のおかげでギリギリ雨に濡れない席だったが、開始時間の延期を知り、しばしスタジアム内を散策。
あ、「ドジャー・ドッグ」だ!!
にわかファンがギリギリ知っているスタジアム名物のソウルフード。お腹は空いてなかったが勢いで買ってみる。
なるほど自分の好みでトッピングも自由か。
グラウンドシートに溜まる雨を見ながらドジャー・ドッグを食べる。
う、美味い!!
しかし食べ終わったあとに、オニオンをトッピングし忘れていたことに気づく。手づかみするわけにもいかないので、とりあえずポテトにトッピングしてみる。
入れてみてすぐに気づく。
……これは全く意味がない。
ポテトを1本取り出すたびに、ポロポロと底の方にたまねぎが落ちていく。結果、ポテトだけを食べることになる。
意味のないものの例えとして「ぬかに釘」ということわざがあるが「ポテトにたまねぎ」もぜひ加えてもらいたい。
続いてグッズ販売店を覗いてみる。
大谷翔平Tシャツがこれ見よがしに一番目立つところで売られている。「ここは日本か」と思うほど日本人がたむろっている。これは勢いで買ってはいけないやつだ。
まぁ、でも、せっかく日本から来たのなら、ついつい買っちゃう人もいるよね……とやや肯定的に受け止めなおした数分後、1人の男が勢いでユニフォームを買っていた。
仕事以外の軸のなさに自分でも呆れる。一体、明日以降、いつこのユニフォームを着るというのか。買った瞬間にこれほど喜びと後悔が同時に押し寄せることも珍しい。
そうこうしているうちに晴れ間も出てきた。35分遅れで試合が開始。パドレスの先発ピッチャーの発表に驚いた。
なんと、ダルビッシュが投手ではないか!
WBCで大きな感動を作り出した立役者が見れるとは。先頭打者のベッツがセンター前ヒットを打ったところで……。
きた!大谷翔平だ!
iPhone15ProMAXのカメラズーム機能が素晴らしい。いや、そんなところに感動してる場合じゃない。
メジャー通算175号でゴジラ松井秀喜と並び、「ゴジラ超え」を期待してか、打席に立つとゴジラのテーマソングが流れる。決定的瞬間を見られるかもしれない!
……空振り三振。まぁ、仕方ない。
大谷翔平の打席が終わって他の打者が出てくると、もはやダルビッシュの好投を応援している自分に気づく。ドジャースのユニフォームを着た「にわかパドレスファン」の誕生である。自分の軸のなさはもう責めない。同じ日本人を応援したいだけだ。
初めてのメジャー観戦で驚いたのは、ファン巻き込みイベントの多さだ。1イニング終わるごとに下記のような感じでファンの人にクイズやゲームをして、うまくいけば賞品がプレゼントされる。
特に子供たちを巻き込んだ企画が多かった。
そして「レッツゴー!ドージャース!」と多くのファンが声を上げる。しかし意外だったのは、日本で見るような個々の選手に対する応援歌みたいなものは全く聞こえてこない。
みんなそれぞれが思うままに応援している感じだ。
そして電光掲示板にこんな表示がされるとみんなが騒ぐ。
応援団がいない代わりに電光掲示板が応援団長の役割を担っているようだ。
そして、一番驚いたのは、大谷翔平が打席に立っても、ほとんどの人が写真を撮らずに普通に応援していることだ。
周りを見渡しても僕しか大谷翔平にiPhoneを向けてない。
そうか、日本では連日、大谷翔平がニュースになるほどアイドル的に扱われているが、現地ドジャースファンは彼をアイドル扱いはしないのだ。
あくまで期待の大きな一選手という感じ。もちろん彼が打席に立てばスタジアムの声援は大きいが、それはベッツも同じことだ。
あくまでドジャースファンが求めているのはドジャースの勝利であり、選手にはその勝利への貢献を求めている。
そんな印象を受けた。
そして大谷翔平は8回裏にようやくヒットを打った。
パドレスに3点差をつけられたまま、8回裏を無得点で終えると、なんと、多くのドジャースファンが一斉に立ちあがり帰っていった。
僕の感覚的には1/4のファンが帰った。
3点差なら9回裏に劇的なサヨナラ満塁ホームランの可能性だってあるじゃないか。
……でも、ふと思う。
僕にとっては特別な非日常でも、彼らにとってドジャースタジアムは日常なのだ。
今日の試合展開みたいに今ひとつパッとしない日もあるだろう。そんな時はまた改めて来れば良いのだ。特に試合時間も遅れた日曜の夜ならなおさらだろう。
結局、そのまま6-3でパドレスが勝ち、ダルビッシュに勝利はつかなかったが継投した松井投手に勝利がついた。
実際にドジャースタジアムで初めてメジャーリーグの試合を観戦する前は、何かとてつもないものを目にするのではないかと気持ちが舞い上がっていた。
勢いあまって次いつ着るかも分からないユニフォームまで買ってしまったが、実際の試合を観て、大谷翔平のプレーを見て、いい意味で憧れすぎる必要はないと思った。
「憧れるのをやめましょう」
大谷翔平がWBC決勝直前にロッカールームで話した言葉を思いだす。僕自身がメディアに踊らされ、大谷翔平に対する憧れが強くなりすぎていたことを思い知る。
これは何も野球に限った話ではない。
自分の中でメジャーリーグのように巨大なものとして捉えている存在も、大谷翔平のように手が届かないと思っている存在も、自分が勝手にそういうイメージをつくりあげているだけかもしれない。
そう、まさに彼自身がWBCで言ったように「憧れてしまったら、その相手を超えられない」のだ。
2004年に、イチロー選手がメジャーリーグの年間安打記録を破ったときの記者会見でこんなことを言っている。
この日「ホームラン」も「ゴジラ越え」もなく、4打数1安打2三振に終わった大谷翔平の姿を見て、かえって、小さなことの積み重ねの途上を見た気がして嬉しかった。
(つづきはこちら)
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