市楽のコピー

築コレ〜オツな若ぇの生け捕ってきやした98 柳亭市楽

柳亭市楽さんと歌舞伎座で待ち合わせ。落語よりも先に歌舞伎を好きになったそうで…。  大学生の頃、学内の新聞に掲載されているプレゼントに歌舞伎のチケットが出ていて、応募する人が少ないようで出してみたら当選したんです。国立劇場の「三人吉三」だったんですけど、ストーリーが面白く好きになりました。それから勘三郎さんだ、コクーンだ、夏になれば納涼歌舞伎だとか観に行ってました。前座の頃、たまたま空いた時間があったんで幕見を見ようと歌舞伎座に着いたときに師匠から「お前、今どこにいる?」と電話があったんです。「幕見にきてます。すぐに向かいます」と言ったら、「たいした用事じゃないから、見てきな」って。師匠は歌舞伎に寛容です。ただ、「歌舞伎や相撲の噺は本当に好きな人がやるもので、そうでないならやるな」とも言います。『七段目』の稽古をつけてもらったとき、「その台詞が芝居のどういう場面で役者は誰で衣装はどんなものだというのが、自然と頭に浮かぶぐらいにならないとやる資格はない」と言われました。  大学2年の秋に授業で講談『宇治川先陣争い』を聴きまして、それが面白かったんです。昔から物語を読んだり聴いたりすることが好きで、他にも聴いてみようと、ちょうど新聞で読んだ神田山陽先生の真打披露興行に行ってみました。そこに一緒に出ていた噺家の師匠方も面白く、落語会に行くうちに、師匠・市馬に出会いました。大学3年には噺家になろうと決めていたので、卒業単位が揃った卒業直前、親に「噺家になります」と話をしました。それを聞いた父は寝込みまして、その間に既成事実を作ろうと(笑)師匠に入門のお願いに行きました。  入るまでどんな世界か全く知らなかったので、あまりの無知さ加減に師匠は呆れたと思います。それでも一つ一つ丁寧に教えていただきました。たとえば僕がほかの師匠に稽古のお願いに行く前に、その師匠の声マネをしながらお願いの練習をさせてくれたり。  以前は自分の中にあった〝噺家はこうあるべきだ〟というものに縛られていました。今は高座も含め決めすぎないよう心がけています。将来は、僕が好きな野球のように、落語会で求められる打順ごとの使命を全うできるようになりたい。会場の空気が重たい時には、サッと明るくできるような噺家になれれば最高ですね。

●市楽さんの落語会は8月23日(水)「市楽三席」、25日(金)「文七三人会」29日(火)「二ツ目勉強会」 、9月26日(火)「赤坂倶楽部 市楽たっぷり」などがあります。

柳亭市楽 本名=佐藤陸一。1981年4月10日生まれ。千葉県富里市出身。巣鴨中・高を経て、早稲田大学教育学部社会科卒業。2005年3月、柳亭市馬に入門。05年11月に「市朗」で前座。08年11月二ツ目昇進し「市楽」。出囃子=三亀松三番。血液型B型。日本国籍のほかにブラジル国籍も持つ。


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