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「リスクを考える」とは?|アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば

アートプロジェクトの運営にまつわる「ことば」を取り上げ、現場の運営を支えるために必要な視点を紹介する動画シリーズ「アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば。」から、「リスクを考える」を公開しました!

この動画では、東京アートポイント計画で、アートプロジェクトの中間支援に携わる専門スタッフ(プログラムオフィサー)が、『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本 <増補版>』(略して「ことば本」)から「ことば」を選んで、紹介しています。

2022年7月には、7本の動画を公開しましたが、今回の続編と合わせて14本の動画シリーズとなりました。この記事で取り上げる「リスクを考える」について、ことば本では以下のように書かれています。

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リスクを考える:プロジェクトを守るためにリスクを想定し管理する 

アートプロジェクトは、常にさまざまなリスクと隣り合わせである。これから起こるかもしれない危険に対し、いかなる事前策を講じるべきか、「リスクアセスメント」をしながら進めていこう。イベント実施時に事故やトラブルが発生したらどうするか。個人情報などの機密情報が漏洩したら? 制作物が著作権や肖像権など法に触れる可能性はないか? 潜在的リスクを洗いだすと、関係者間の緊急連絡網の作成や、リスク対策マニュアルの制定、近隣の病院や交番などの確認、各種保険への加入、定期的な研修の実施など、組織内でプロジェクトを守るためのルールづくりなど必要な対策がみえてくる。

リスクマネジメントは、プログラム実施よりも先行してとりかからなくてはいけない。現場や日常業務で事故、または事故の疑いのあるものが起こった際には、まず「一報(=簡潔な連絡)」を関係者に入れること。悪い情報ほどすぐに共有すること。緊急連絡網をかける練習をするなど、普段から、即時に連絡・共有のできる関係性を築いておくこともリスクマネジメントになる。

『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本<増補版>』アーツカウンシル東京、2020年、37頁より。本書は、以下のリンク先よりPDFダウンロード、もしくは郵送(送料のみ/着払い)にてお読みいただけます。

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アートプロジェクトに潜むリスクは、見えないものです。危険だと思っていないものはあらかじめ認識をすることができません。それでも、準備をする作業の工程の一つにリスクを「想定すること」「イメージすること」を入れておくことで、可視化すること、未然に防ぐための策を練ることができます。つまり「シミュレーション」です。ことば本31頁の「シミュレーション」から引用します。

イベント本番を迎える前に、準備が行き届いているかみなで現場を見回してみよう。タイムスケジュール、人員配置や役割分担表など当日の動きをまとめた資料をもとに、スタッフの動きを確認する。自分の担当だけでなく、ほかの人の動きも知っておくと、当日のフォローがしやすくなる。
               (中略)
だが、どれだけ事前準備を重ねても当日は想定外のことが必ず起こる。だからこそ、書面や口頭でイメージ を共有するだけでなく、実際の空間を体感しながら情報を身体化しておくことが、現場でのとっさの対応に生かされる。

「シミュレーション」解説

準備におけるリスクの可視化/資料化、いざという時に動くための情報の身体化。リスクを考える際には欠くことのできないポイントです。

また、今日的なリスクとして押さえておく必要のある事象として「個人情報の取り扱い」があります。東京アートポイント計画では2012年に個人情報流出事故を経験し、管理体制の見直しとチェックシートの開発を行いました。いつ、どんな時に事故の可能性があるのかを洗い出し、フローとしてチェックすることを習慣化しました。それは2023年の現在でも継続して行っています。経緯とチェックシートは『これからの文化を「10年単位」で語るために ― 東京アートポイント計画 2009-2018 ―』の102頁から105頁に掲載しています。


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まちなか、ひいては現代社会が舞台となるアートプロジェクトは常に変化します。いつも同じ対策やルールが通用するとは限りません。その都度、状況を観察、シミュレーションし、場に応じたリスク検証をすること。意識的に考え方をアップデートしながらプロジェクトを守るための一手、さらにその先のもう一手を編み出してください。

大内伸輔

▼ Tokyo Art Research Lab「アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば」の再生リストは、以下のリンク先からご覧いただけます。