クッキーとクロワッサン
気付けばハロウィンが終わっていた。国内規模のイベントも直近はなく、街全体を覆うような統一色や雰囲気も消えて、素っ気ない光景が駅前に広がるばかり。アパレルショップの前を通ると、マネキンは暖かそうな冬服を着ている。猛暑日が連続した今年の夏も、気付けば完全に終わった。いつ終わったかは、もはや覚えていない。あれだけ衝撃的なシーズンだったのに。
雪にも対応する重たいコートを着込みながら駅から少し離れた場所を歩いていると、大きいパン屋を発見した。駅から徒歩15分あるかないかの位置。アクセスが悪いとも言えないが、良いわけでもない。そんな絶妙な立地に構えられた店舗は優秀なのか。気になったので調査してみた。
店を支えるおすすめ商品
店内は駅構内のパン屋やカフェよりも広く、縦長の間取りだった。店のドアを開けてすぐに目に飛び込んできたのは、『クロワッサン✖️クッキー クロッキー』の宣伝カード。入り口付近に、おすすめ商品を配置するのは、パン屋の暗黙の了解なので、文句を言わず一個トングで掴んだ。
広い店内の割には、そこまで品揃えが豊富ということではなかった。惣菜パン(主にピザに近い形)の種類は比較的多く揃えられていたが、筆者はあまり塩っぽいパンが得意ではないので、他の商品よりも売りに出されている面積が広く山積みになっている、大福風のパンをまたトングで一個掴んだ。購入したパンはこれら二つ。
イートインコーナーは十卓ほど完備されており、給水機の近くには自由に使用可能なオーブンも置かれてあった。どうやらこの店は朝には食べ放題も実施されているようで、店内飲食する際の自由度はかなり高いようだ。
期待を超えてくる食感
クロッキーからいただいた。今まで食べたことのない食感だった。『クロワッサン✖️クッキー』の宣伝は正確に的を得ていて、パリパリするが決して軽くない。固くてずっしりと重く、ねっとりする箇所もあって噛みごたえはものすごい。練り込まれているチョコチップはパンの部分と味が分離することなく、全体に甘さが浸透しているようだった。どちらかというとパンよりもお菓子に近い。
大福パンの中身はクロッキーと同じく、甘いチョコレートだった。じゃあ普通のチョコ大福なのか、と一瞬白けるがそういうわけではなかった。中に敷き詰められていたのは、大粒の麦チョコだった。麦チョコ独特の、柔らかいけど噛み切るのには少し時間がかかるあの食感が、パンの中でそのまま生きていた。
工場で大量生産されている菓子パンには、到底真似できないクオリティに、オリジナリティが合わさった二品で、筆者は大変満足した。
しかし、あまりの甘さとそのボリュームに、終盤は体も限界を感じ始めていたので、甘い食べ物をしばらくは差し控えたい。辛いものが食べたい。
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