noteの課金機能は、お金を簡単に稼ぎたい人のためのものではなくて、ファンがいるのに食えなかった人のために生まれたという歴史
昨日、私がnoteについて、加藤さん、深津さん、最所さんと対談した記事が公開されましたが。
この記事の後半で、軽く触れている私のnoteに対する「誤解」について、この機会に詳しく書いておきたいと思います。
私がnoteについて誤解していたのは、大きく2点あります。
■1. noteは課金システムで儲けるためのプラットフォーム?
■2. noteは特別な「クリエイター」のためのプラットフォーム?
まず、今日は一つ目の課金システムの誤解について、書いておきたいと思います。
2014年:note開始で注目された「記事を売る」機能
noteがそのサービスを開始したのは、もう5年前の2014年の4月7日。
サービス開始初日に1万人が登録するなど、周辺で軽くお祭り状態になっていたと記憶してます。
その中でも特に話題になっていたのが課金機能。
これは編集者出身である加藤さんの、クリエイターに「2万人もファンがいるのに食えないのはおかしい」という問題意識から生まれた仕組みで、コンテンツを生み出しているクリエイターに、今の時代に最適化されたお金を儲けるための新しい方法を提供するための機能でした。
当時の加藤さんの思いは、こちらのアスキーの遠藤さんとの2014年のインタビュー記事に残ってます。
ただ、丁度その頃私は、アジャイルメディア・ネットワークで社長を降りるという決断をしたばかり。
自分の会社における存在意義を証明するのに精一杯で、ブログもろくに書けていませんでしたし、「記事を売る」ということが自分に相性が良いとも思えず、noteのサービスは見に行ったものの、ろくに使いもせずに離脱してます。
2016年:第二次noteブーム到来
その後、私がnoteについて再び良く耳にするようになったのは2016年頃。
noteが儲かるよ、というのがネット界隈で話題になりだした頃ですね。
象徴的なのがこちらのシバタさんの記事でしょう。
当時、私もこの記事を読んで、「アクセス数上位7記事のうち、3位、5位、6位、7位の4つが有料記事という結果でした。全く想定外の結果で本当に驚いています。」というくだりと「月額1万円の法人マガジンが売れています。」というくだりに衝撃を受けたのをよく覚えています。
ただ、当時は並行して、オンラインサロンや有料noteが新手の情報商材になっているのではないか、とか、一部のオンラインサロンオーナーが荒稼ぎしすぎじゃないか、という批判が高まっていた頃で。
個人的にも、アジャイルメディアでアンバサダープログラムの啓発活動が佳境に入っていたこともあり、こういう批判を受けるような商売の仕方は長続きしないだろうなぁとか、加藤さんも収益上げるためにそっちのクラスタと付き合うようになっちゃったのかぁとか、シバタさんみたいなお金払ってでも読みたい情報書ける人って一握りしかいないよなぁとか、勝手に一人で思い込んで、私の中でのnoteウォッチは終わっていました。
2012年:cakes開始時から存在したnoteの構想
でも実は、加藤さんのnoteに対する理念や思いは、ピースオブケイク創業当初から今まで、ほとんどぶれてないんですよね。
加藤さんはピースオブケイクを立ち上げた際に、まずcakesという定額課金の有料配信プラットフォームを立ち上げます。
noteのオープンに先立つこと1年半前の2012年の9月のことです。
当時、cakesは執筆者として、家入さんとか、いしたにさんとか、磯崎さんとか、知り合いがたくさん並んでいたこともあり、登場当時は興味深く見ていましたが、私自身がネット上で読み物を有料で読みたいというモチベーションが全くなかったこともあり、加藤さんはえらい茨の道に行くんだなぁと、他人事のように見ていたのをよく覚えています。
まだ現在のサブスクブームの遠い昔ですからね。
2010年に日経電子版が創刊されているので、2012年と言えばオンラインメディアでの定額課金自体は珍しくはなくなりはじめていた時期でしたが、2012年にはツイッターブームやFacebookブームも一段落して、すでに無料で様々な情報が読めるようになっているタイミングで。
わざわざ有料でコラムを読む必要性は、私ですら感じなくなっていましたから、私もcakesは一時的に契約はしたものの半年ぐらいで解約しています。
でも、加藤さんが良い意味で狂ってるな、と思うのは。
当時からcakesはnoteのための伏線としてはじめたらしいんですよね。
具体的には先程紹介した2014年のインタビューに詳しいんですが。
加藤さんには2014年の段階でcakesを作ったときに、すでにnoteの構想はあったそうです。
いきなりオープンなnoteからはじめると、単純に普通のブログサービスに見えるしサービスの方向性が見えにくい。
なので、まずはクローズドな有料配信プラットフォームとしてcakesを先に公開し、それによってクリエイターの新しい収益化を支援する会社であることを明確にし、満を持して1年半後にnoteを開始するわけです。
普通の人ならそんな遠回りしないですよね。
正直、何度聞いてもビビリな自分ならこの選択はしないなと思ったり。
でも、その順番だったからこそ、今のnoteがあるわけです。
遠藤さんとの対談は、その後未来の本の話に展開していきますので、是非後編も読んで頂ければと思いますが。
このインタビューでもう一つ興味深いのが「課金するとコミュニティが生まれるということが、実際にやってみてわかったんです。」というくだりです。
加藤さんがやりたかったのは、この課金によってクリエイターの周りに生まれるコミュニティの仕組みを作っていくことで。
それが実現できているからこそ、2014年の第二次noteブームに、悪徳情報商材的な人たちも寄ってきてしまった面はあるんだと思います。
便利な課金システムができると、危ない人たちが集まってくるのは、電話におけるダイヤルQ2とか、オレオレ詐欺とか、スパムメールとか、繰り返されてる歴史でもあるんですよね。
でも、実はその裏で、着々と加藤さんがcakes時代から蒔いてきた種は芽吹き、平野啓一郎さんや吉本ばななさんのような著名な小説家から、けんすうさんのようなネット有名人まで、幅広い書き手がnoteで書き続ける結果につながっていたわけです。
2019年とこれから
その後、2017年には深津さんがCXOとして合流するなど、さまざまな人材がピースオブケイクに集まっていくこともあり、加藤さんのビジョンが明確に形となって、noteに細かく表現されて、再度noteは大きな盛り上がりを見せるようになったと感じています。
私も含めて、2016年のブームの印象が強いネットウォッチャー属性の方にとっては、「noteはお金を簡単に稼ぎたい人が金目当てで集まっていたプラットフォーム」という印象を未だに持っている人が多い面はあると思います。
私もそうでした(苦笑)
ただ、今回noteの中に入ってみてようやく理解したのは、加藤さんや深津さんを中心に、noteには明確に「街づくり」としてのビジョンがあり、実は明確な情報商材や、公序良俗に違反しているコンテンツは、削除されたり人の目に触れにくくなるように対応がされています。
定期購読マガジンも誰でも開始できるわけではなく、必ずスタッフによる審査があったりしますし、問題が発覚したマガジンは文字通り街から退去してもらうこともありえるようです。
このあたりのポリシーに対する考え方はこちらの深津さんの記事に詳しいので、譲りたいと思いますが。
今回の加藤さんの対談で、「僕らはインターネット上に、ニューヨークのような「街」をつくりたいと思っています。高層ビルが連なる金融街から、ほとんど中国みたいな中華街、劇場、大自然まで、あらゆる文化圏の人たちが共生している街が理想。」という発言が出てきて、なるほどな、と思ったんですが。
2016年のnoteブームの時の、情報商材論争って、「ニューヨークでギャングによる銃撃事件がおきました」みたいなニュースを私たちが日本から見ているようなイメージなんだと思います。
実際にはnoteもニューヨークも広いので、情報商材問題も、銃撃事件も、街の一角でおきた1つの事件にしかすぎないんですけど、当然街に住んでいない人間からすると、街全体がそういう騒動一色に見えてしまいがちなんですよね。
だからこそ街のリーダーである市長は、2度とそういう問題が起きないようにルールを作ったり、パトロールを厳しくしたり、という即時的な対応もしなければいけないし、来てくれた観光客にそういう事件とは関係ない地域やいろんな街があることをちゃんと伝えてリピートしてもらう必要もあるわけで。
ピースオブケイクの中にいるCTOの今さんを中心としたエンジニアやデザイナー、noteディレクターにサポートにアルバイトも含めた様々なスタッフの方々が、noteという街を良い街にしようという努力を毎日続けているからこそ、これだけ多くの人がnoteに移住し、日々様々なコンテンツを生み出し続けるようになっているんだろうな、と感じています。
私が、noteはお金儲けをする人のためのものと誤解していたnoteの課金システムも、加藤さんが「2万人もファンがいるのに食えないのはおかしい」と思っていた現在のインターネットの課題に対する選択肢の1つでしかないんですよね。
多分、「2万人もファンがいる人がnoteに移住してくれれば、ファンが喜ぶコンテンツを生み出し続けるだけでも生活できる街にする」のが加藤さんが目指している街づくりであって。
noteの課金システムは、そういうファンがいるクリエイターを支援するための1つの手段。
情報商材詐欺のような行為を働く人のための課金システムでもなければ、楽して金儲けをしたい人のための課金システムでもないわけです。
勝手に誤解していた自分の視野の狭さを反省する今日この頃です。
もちろん、この壮大な挑戦的な実験が、加藤さんの思い通りの姿になるかどうかは、これからの私たちにかかっているとも思います。
ということで、「クリエイター」という言葉への誤解については、またの機会に書きたいと思いますが、是非皆さんもまずはnoteのアカウント作って、そんなnoteの「街づくり」に参加して頂ければ幸いです。
(そんなこんなで、私も街づくりの一部に携わる立場になったわけですが、私一人でできることは大して無い気もしているので(汗)。
一緒にnoteにおけるコミュニティの未来とか、noteが取り組むべきオフ会とかミートアップとかを一緒に考えてくれる人を緩募しております。興味がある方は是非徳力宛にメッセして下さい。)
ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございます。 このブログはブレストのための公開メモみたいなものですが、何かの参考になりましたら、是非ツイッター等でシェアしていただければ幸いです。