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「なな」③「ほうとう」


「なな」と付き合い始めた頃に、私は「なな」に自分の住んでいたアパートの合鍵を渡しました。

「なな」が私が浮気をしていると疑ったからです。

「それなら合鍵渡すから、好きな時にアパートに入って良いよ」と言って合鍵を私ました。

私は「なな」に惚れ込んでいたので、浮気なんて考えられません。

ただ、友達として親しくしていた女の子は何人もいました。

それも、「なな」が「やめて欲しい」と言えばやめる覚悟はしていました。

そんな時に「なな」がアパートでほうとうを作ってくれました。

会社の旅行で山梨に行ったお土産でした。

私が、いつも「腹減ったなぁー」と言っていたせいで、ほうとうを鍋いっぱいに作ってくれました。

さすがに全部は食べきれないか・・・。

そう思ったのですが、「なな」の喜ぶ顔が見たい一心で、鍋いっぱいのほうとうを全部たいらげました。

「なな」は満面の笑顔で喜んでくれました。

「なな」の笑顔は、本当に可愛くて、愛おしく感じられました。

しかし、その日から私は、ほうとうが苦手になりました。

あの時の「なな」の笑顔を私は忘れられません。

                                                                       つづく

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