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ダンプカー上司、ストレングスファインダーと出合う

会社員時代、ちょうど30をちょっと過ぎたころに役職を与えられ、初めて「後輩」ではなく、「部下」ができた。初めての「上司」役である。正直、何をどうすれば分からず、日々手探りだった。とりあえず、自分の背中を見てもらえばいいと思って、ガツガツ仕事をしていた。そして、自分がやっていることと同じことを部下に要求していた。当然、「私ができているのに、なぜできないのだろう?」ということが多々あった。以前、世の中にはいろいろな人がいるということを10代のうちに教えられたと書いたが、当時はただ知っているだけでそれがきちんと自分のものにはなっていなかった。

とにかく、当時の私は怖い上司だったと思う。怖いというか、圧が強かったと思う。自分でいうのもなんだが、とにかく仕事の処理能力が早かったし、企画を出す数も圧倒的に多かった。ちょうど脂がのっている時期だったともいえる。だから、「自分と同じように仕事をしてもらいたい」と思っていた。そうすれば、チーム全体の効率も上がり、クォリティーの高いものができると思っていた。でも、実際はまったく逆だった。

「なんで? なんで? なんでできないの?」。いつもそんなことを考えていたと思う。さすがに口には出さなかったけど、顔には明らかに出てたと思う。無意識でため息をついたりしていたはずだ。みんなが疲弊していることになかなか気づけなかった。今思えば、自分が甘ちゃんだったなと思うし、当時の部下には申し訳ないことをしたと思っている。彼らも相当追い詰められていたと思う。逆に、よく必死でついてきてくれたと感謝したい。

しばらくして、異動があり、部下の数も増え、その中に子持ちが増えた。当時は独身だったので、子持ちの人の暮らしがあまり理解できなかったが、自分なりに想像して、家のこと、子どものことを優先してもらい、働きやすいようにと配慮はしていた。そうこうしているうちに、自分も結婚し、子供を授かる。ちょうどそのころ、出合ったのが「ストレングスファインダー」という強みを生かすためのツールだった。

基本的に自分好きなので、自分がどんな人間かを知るために占いはよく見てもらっていた。心理テストや行動テスト的なものもよく受けた。それらの中で、とてもしっくりきたのが「ストレングスファインダー」だった。「ストレングスファインダー」は、人間の才能を34の資質で分類する。占いではないので、テストを受けるたびに結果が変わることもあるらしいが(環境や経験で変化が出る)、一番最初に34の資質を意識せずに受けたものがだいたいその人の特性だという。その自分の資質を知るには、専用サイトで170ほどの質問に答えると、最も特徴的なトップ5の資質が診断結果として出てくる。

私は、上から順に「達成欲」「学習欲」「未来志向」「個別化」「目標志向」という結果。これを見たストレングスファインダーのコーチは、「あなた、ダンプカーみたいね。もしくは、後ろの貨車を忘れたシベリア特急ね」と笑った。「???」と思っていたら、「達成欲」の人は、バイタリティーと体力があり、生産性が高く、スケジュール帳は真っ黒、中途半端にはせず必ずやり遂げるといった特徴(強み)があるそう。さらに、「未来志向」は、その名の通り、ポジティブでワクワクする未来を思い描き、そこに引っ張られるようにして行動し、「目標志向」は、目標を決めたらそこへ一直線に進む。この3つの資質がトップ5に入っているということは、周りを見もせず猪突猛進で仕事をしてしまうタイプだと。しかも、「達成欲」の人は、つい周りを自分のペースに当てはめようとしてしまう。だから、ダンプカーのようにガガガガガと突進し、その途中にいろいろなものをひきまくり、後ろを振り返ったときには、ダンプカーにひかれてペラペラになった人たちが宙に舞っているはずと言われた。もしくは、ガンガン石炭をくべて走っていく汽車が私だとしたら、駅に到着した際に、後ろの貨車を忘れてきているはずだと。

これを聞いたときに、ビンゴ!と思った。まさに、私そのものである。「あなたの部下になった人は大変ねー。だから、あなたは自分と同じことを要求しちゃダメよ」と、コーチは笑った。ああ、もう少し、早くストレングスファインダーに出合っていれば…。

ストレングスファインダーの勉強会に出て、他の人のトップ5をたくさん見せてもらった。見事にみんな組み合わせが違っていて、組み合わせによって強みの出方が異なることが分かった。優秀な人の秘書になると強みが発揮できる人、戦略的にものを動かすナンバー2タイプの人、「みんなで一緒に」が口癖の学校の先生のような人など、本当にさまざまだった。「ああ、いろいろな人がいると分かっていたのに、理解が足りなかった。まだまだ甘かった」と気づかされた。ダンプカーでひいてしまい、ペラペラにさせてしまった部下たちに心の中で思いっきり謝罪した(実際、会社を辞めるときに本人たちにも「ひどい上司でごめん」と謝った)。

自分の特性、資質を知り、それを強みとして生かす。使い方を間違わなければ、自分も周りも幸せだ。そういう意味でも、自分の取り扱い説明書を自分が理解することはやはりとても大事だと思う。そして、一人ひとり取り扱い説明書が異なるということをきちんと受け止めておかなければならない。会社の人事の人は、ぜひストレングスファインダーを全社員に受けさせるといいと思う。それぞれの強みを生かした人事は、会社の生産性を確実に上げるだろうし、病気になる人も減ると思う。チームで仕事をする際にもとても役立つはずだ。

ちなみに、自分のトップ5を知ってからは、随分変わったと言われた。自分と同じやり方やペースを押し付けるのはやめ、それぞれの得意・不得意を見極め、ペースを見ながら仕事の割り振りを行うようにした。たまに「達成欲」が顔を出して、ビビられることはあったが…。また、ちょうど子供を産んだあとでもあり、子育てしながら仕事をすることについては、自分の知識の乏しさを最初は痛感したが、自分が子育てをして経験値をあげることで、子育てと仕事の両立に関する理解は深まったと思う。おかげで、部下や後輩からは、理解してくれる人という印象を持たれるようになった(ようだ)。最後はちょっと自画自賛。

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