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匿名性のやりとりが電車男のおもしろさ

電車男とは


『電車男』とはインターネットの電子掲示板への書き込みからはじまるラブストーリーです。恋愛と縁がなかったオタクの青年が、秋葉原帰りの電車で酔っ払いに絡まれていた女性を助けたことをきっかけに、『ネット掲示板2ちゃんねる』でアドバイスを受けながらこの女性に告白しました。その経緯が掲示板で実況中継のように進んだ実話をまとめたのが、電車男です。
(参照:http://www.nifty.com/denshaotoko/html/story.htm・https://eiga.com/movie/41347/ )

ネットで生まれた物語、「電車男」は単行本化され2004年10月に発売されたのち、累計105万部を売り上げました。漫画・映画・テレビドラマ・舞台にもなる人気ぶりです。ネットから生まれたことで、注目を浴び、実際に使われたネット掲示板『2ちゃんねる』も世間で話題になりました。

2ちゃんねるとは


1999年に匿名で投稿ができる無料の掲示板サイトとしてスタートし、特徴は分野が広く、政治・経済から地域情報までさまざまな分野があります。通常では知り得ない裏話が聞けるため人気を集めていて、ひと月に数百万人を超える人が訪れると言われています。最近、youtuberとしてバズってるひろゆきさん創設者であります。
(参照:https://www.weblio.jp/content/2%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%81%AD%E3%82%8B)


一方、自分の実名を明かさないで投稿できることから、気軽に本音を話せると同時に誹謗中傷が多いのも事実です。そんな事実もありますが、電車男はこの匿名性を使った掲示板上でのやりとり・アドバイスの面白さがありました。

物語を面白くさせる匿名性


電車男のストーリーは2ちゃんねるの掲示板が舞台です。あるスレッドに、「電車の中で酔っ払いに絡まれていた女性を助けてお礼を言われた」という何気ない書き込みが物語の発端です。そこから数日して、助けたお礼にエルメスのティーカップが届けられたという書き込みをしたため、書き込みをした男性を『電車男』、女性をエルメスのティーカップを贈ったことから『エルメス』と呼ぶようになり、スレッド上で物語が進んでいきます。
アキバのオタク男を自認し、デートも経験したことがない、彼女の経験もない彼。そこでお礼の電話はどうするか・どうやってエルメスを誘ったら良いか・どんな服装をしたら良いか、をスレッドに書き込みました。この相談に対してスレ住人と呼ばれる、掲示板に参加している女性を含む他の人たちから様々なアドバイスが寄せられたことで、電車男は次第にモテない男から成長し、エルメスとの交際するようになったのです。それぞれの名前も架空でつけられたのにも関わらず、会話を重ねることで、愛着が湧き、コミュニティが大きくなっていったのがわかります。

掲示板でのやりとり


ここで全てに共通するのは相手が誰か分からず、匿名でコメントし合い、相談・アドバイスをして成長していく姿です。もちろん、匿名性でやり取りすることは、リスクもあり、顔が見えないことを良いことに誹謗中傷が現在多く問題ともなっています。
しかし、実際現実でも周りや環境を気にして、なかなか相談したくてもできない環境があるのではないでしょうか。自分の本当の居場所を探したり、相手の顔を気にしたり、本音が話せなかったり。しかしこの電車男の舞台となった掲示板はどうだったのでしょう。匿名性ということを良いことに、さりげない書き込みを誰かが見つけ反応してくれます。反応してくれることで、もっと話してみよう・相談してみようという気になったという経験はありませんか。相手を知らないからこそ、相談できる。顔が見えないからこそ、気軽に考えすぎずに相談できる。電車男はそのさりげない書き込みが、物語を面白くさせるきっかけのひとつになったのです。そうやって気軽に呟けるというのは、匿名性ならではの良さだと思います。


匿名者のアドバイス


リアルの世界で、皆さんは誰に相談しますか?もちろん仲のいい友だち、先輩、後輩、親......もちろん、赤の他人に相談に、顔見知りの人に相談する人はあまりいないでしょう。しかし、この物語では掲示板を利用し、匿名で相談・アドバイスを受けます。ここで、匿名性の良いところは普段の生活では関わらないような人から、友だちや親とは違う様々なアドバイスを受けることができます。この掲示板を使わなければ、関わらなかったであろう人から、いろんなアドバイスを受ける。もちろんアドバイスを受けるだけでなく、考え方や視野が広がるに違いありません。

その匿名者同士のアドバイスが、電車男の面白さの一つです。実際に電車男の友人が誰一人登場することなく、最後までネット上の顔も知らない人に助けを求め続けていました。
一方でスレ住人たちも約2ヶ月間電車男を応援し、毎回報告を待ちわびています。二人がどうなるかと見守っていて、電車男から「好きだと告白してうまくいった」の書き込みがあると、掲示板には多くに祝福メッセージが寄せられたのです。
このように、スレ住人がバックアップで彼の恋を成就させる点が感動的です。これが上記で書いたように、互いに顔を見たこともなければ、声も知らない、年齢も分からない。だからこそ、匿名だからこそ、感動に繋がり人々の心を動かしたのでしょう。

匿名性行われるコミュニケーション


コロナ禍における自粛生活で、損なわれている人とのコミュニケーション。やはりこの電車男からも読み取れるように、人とのコミュニケーションは大事であると思います。悩んでいることも、人に話すことで解決策が見えたり、視野が広がったり、価値観が少し変わったり。さりげない雑談は必要であると感じます。普段関わることがない人と関われる匿名性、魅力的ではないでしょうか。

インターネットの匿名性


インターネットの匿名性は、犯罪のきっかけであるという世論も強く、匿名性を利用した誹謗中傷は日常茶飯事で、平気で人を傷つけるメッセージも多く溢れています。
人は匿名であるからこそ実名の自分から解放され、他者に対して攻撃的になる一方で、匿名である安心感から自由な発言や、気軽にコミュニティに参加できるなどポジティブな状況を生み出すことも多数あります。
このように匿名性が、ポジティブな開放性と捉えることができるなら、ありのままの自分を表現できることに繋がります。匿名でこそ、気軽に話せる本音。話す側だけでなく、聞く側にも大きな価値があります。
このように、電車男の物語を読んでも、主人公は役名だからこそ気軽に自分の悩みを相談できたのかもしれません。その相談に対して、応援している住人たちは、それぞれのアドバイスを行いました。だからこそそこに感動が生まれ、匿名性を元に進んでいく物語で新しい分野の面白さだったのではないでしょうか。

過去と現代に共通する匿名の良さ


電車男が有名になったのは、2000年前半です。現代と比べると、およそ20年前。その時からインターネット、匿名が普及されていることが分かります。そこで現代と共通して分かることは、匿名性により救われている人がいるということ。電車男も匿名の人々にアドバイスをもらい、恋愛を成就させました。現代でもZ世代と呼ばれる、デジタルが当たり前の時代に生まれてきた1996年から2015年の間に生まれた世代が、多くの匿名性のアプリを利用しています。
その実態は人々の悩みや居場所を与える良いツールとして広まり、例えばGravity(グラビティ)、yay(イェイ)といったアプリもたくさんリリースされています。今後もこのように人の暖かい居場所の新たなプラットフォームとして発展していくでしょう。

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