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転職エントリ①|DeNA to ナレッジワーク|キャリアの3つのこだわりと"イネーブルメント"との出会い

●はじめに

2014年に新卒で入社して8年間勤めたDeNAを退職し、ナレッジワークという会社に転職する。

DeNAでの経験を中心とした自己紹介は前回の記事で書いたので、ご興味あればお目通し頂ければと思う。

今回は個人的な転職の話となる。誰かの参考になる話ではないと思うが、少しでも読んで共感頂ける方がいらっしゃれば嬉しい限りだ。

長文となるので、以下のように3つの記事に分けて書いていく。

①キャリアの3つのこだわりとイネーブルメントとの出会い
②イネーブルメントという海に起きている3つの波
③ナレッジワークという船が持つ4つのコンパス

私の個人的な転職活動経緯に興味がある方は当記事①を、イネーブルメントという概念・市場に興味がある方は記事②を、ナレッジワークという会社に興味がある方は記事③を中心に読んで頂ければ幸いだ。

●スタートアップとの出会い・きっかけ

2021年11月、Buffというスタートアップで創業CEOを務めるDeNA同期の中内と食事に行った際に、人事が必要だから副業で手伝ってくれないかと誘いを受けた。
僕はあまり要領良くマルチに仕事をこなせるタイプではない。
しかし、以前から彼の情熱や才能には深く敬意を持って応援していたし、DeNAがLP出資するDelight Venturesの投資先でもあったので、少し無理をしてでもと思い、副業を始めた。

Buffでの仕事はとても充実していた。自分自身がファーストキャリアで原体験を持つセールス領域の事業で、かつコンパクトな組織で濁りなく事業・顧客に向き合っていた。誰もが自身の成長に貪欲な一方で、一切の利己精神なく身を粉にして働いていた。微力ではあったが、自分の努力次第でこの先1-2年の事業の成長角度が変わるという良質な危機感とも向き合えた。カオスの中で多少はストレスもあったが、自分にはもったいないと思うほど澄み切った世界だった。

●転職活動へ

一方、DeNAではPococha事業のHRBP(≒事業部付人事)として少しずつ役割の幅を広げていった。DeNAというコングロマリットな事業ポートフォリオの中で少し注目を浴びづらいが、Pocochaはとてつもないサービスである。

Pocochaを含むDeNAライブストリーミング事業実績
出典:株式会社ディー・エヌ・エー 2022年3月期決算説明会資料

ここ3年程度の間に急激な成長を遂げ、かつ、グローバル展開も含めて事業の戦略上の広がり・可能性も豊かだ。ライブコミュニケーションという革新的なコミュニケーションフォーマットに、"ロングテール"というインターネットビジネスの王道思想を込めた、とても高いポテンシャルを秘めたサービスだ。
僕が語るのもおこがましいので、POの水田さんのnoteなどもご覧頂きたい。

また、組織開発の解像度・緻密性・徹底度が非常に高く、人事として舌を巻いた。世の中の人事・組織マネジメントに関わるビジネスパーソンの99%が「付いていけないかも」と感じる水準の組織作りをしていると言っても過言ではない。シリコンバレーや日本のユニコーンの歴史を真摯に学習し、自組織に吸収しようとしているのである。時価総額換算すれば優に「ユニコーン」と呼んで良いはずの事業なので当然かもしれないが、世界で戦える水準の事業・組織運営に本気で取り組んでいる。

そんな環境を求めていてソーシャル性のあるto Cの柔らかいサービスが好きな方にオススメするフィールドとしては、Pococha一択だ。

しかし困ったことに、副業を通じて沸々と湧いてきた自身のこだわりは少々Pocochaとは趣が異なったし、懐の深いDeNAの中でも見つけられそうになかった。詳しくは書き切れないが業務における葛藤もあり、転職活動へと進んだ。

転職活動には、Bizreachとfor Startups(人材エージェント)を利用した。こだわりが明確だったため、副業先のBuffに加えて結局2社だけ選考に進ませて頂き、いずれも内定を頂いた。

ダイレクトリクルーティング・リファラルが声高に称賛される中で人事経験を積んだ自分が人材エージェントを利用することは意外と言われることも多い。

しかし、後述の通りスタートアップへの転職に絞り込んでいたため、自身を過信せずに、その業界に精通したプロフェッショナルに相談するのは結果的に大正解だった。
for Startups執行役員の六丸さんにお声掛けし、洗いざらい自分の状況をお伝えした結果、ナレッジワークとのご縁を一発で繋いでくださった。

その際にお伝えしていた転職の軸は以下3つだ。

1.ドメインへのこだわり | 仕事人生に活力を
2.フェーズへのこだわり | 若いフェーズから物語の起承転結を
3.カルチャーへのこだわり | マチュアでバランスの取れた経営チームと

それぞれかいつまんでご紹介したい。

1.ドメインへのこだわり | 仕事人生に活力を

僕が人事職に就いたのはきっかけがあった。

DeNAに入社して最初に営業職を担っていた際のことだ。入社して半年後に、自分含めた新卒メンバーの平均売上が既存メンバーの平均売上を30%も上回ってしまったのだ。百戦錬磨で優秀な先輩達の結果が振るわない違和感。その後も、新卒・既存メンバー問わず、(時には自分自身も含めて)その力やポテンシャルを最大限に発揮出来ない状態が存在することへの違和感や憤りが強くなった。

当時のステークホルダーを大雑把に分類すれば、1.サービスユーザー、2.お取引先、3.社内メンバーの3つに分かれる。いずれも好きだし情熱を注いだが、どうしても社内メンバーの状態が気になってしょうがなくなった。当時の事業部の担当人事の方にも指導頂きながら、組織開発もどきのような動きをするようになった。それをきっかけに紆余曲折を経て人事へとキャリアチェンジした。

そして、人事になってからは、ご存知の方もいるかもしれないが、派手にコケた。営業のような成果・プロセス・リズムが明確な業務とは全く性質が異なり、かつ微細なコミュニケーションスタイル含めてカルチャーも全く異なり、強く混乱した。(今となっては笑い話だが、営業時代は日中に社内mtgを入れるのが厳禁だったため人事になっても社内mtgに躊躇していたら、仕事がどんどん遅延していった)

組織に活力をと思い人事になったのに、自分自身が急速に活力を失った。ミイラ取りがミイラになった

その後は眼前の仕事で成果を出すことに必死で余裕の無い20代を過ごしたが、ふと我に返って、何を通じて世の中と繋がるかを自分に問うた。

  • 仕事人生をより良いものにする

  • 組織活動に活力を与える

そんな活動に自分の大事な人生の一部を賭けようと考えるに至った。

2.フェーズへのこだわり | 若いフェーズから物語の起承転結を

僕はDeNA Games Tokyoという250名規模の子会社に3年間ほど出向していた。管理部長を担い、実質的には経営チームと言って良い役割・期待を頂いていたので、自分が会社の潮目を変える・時代を変えるという気概で臨んでいた。

社長と会社と一蓮托生の関係で、重い責任と大きな権利をセットで背負う環境には強く活力を貰った。客観的にそれほどの重みがあったかは分からないが、少なくともそれほどの使命感を僕に育んでくれた社長のねじさんには本当に感謝している。

一方で、その会社のプロパー社員ではないことや、創業期から組織を牽引してきたわけではないことには、心の隅では少し寂しさも感じていた。

そして、DeNAに帰任してからは、さすがに子会社に出向していたときほどの自身の介在価値は感じられなかった。また、偉大な会社ならばこそなので敢えて言うと、大きな組織の複雑系の中で調整弁としてのタフな役割を今の自分のキャリアフェーズにおいて担いたいとも思えなかった。(補足すると、その役割を経験してこそキャリアに深みが出るはずだし、いつか絶対にチャレンジしたい)

人事は、会社という器のバランスを保つために、清濁飲み合わせることも仕事の一つだ。ただ、まだ今は青くありたい、澄んだ物語の第一章から出演したいという我儘な気持ちが芽生えたのであった。

そのため、シード期からシリーズAぐらいまでのアーリーステージ(社員数でいうと5-30名程度)のスタートアップを志望した。

3.カルチャーへのこだわり | マチュアでバランスの取れた経営チームと

人事は経営の拡声機能としての役割を持つと考えている。経営の意志を実現すべく組織・労働市場と対話し、仕組みを構築するのだ。

逆を言えば、リーダーとの意思疎通にエラーが生じると人事は無能化する。経営の意志とAlign出来ていない誤ったメッセージや仕組みを打ち出し、経営から疎まれ、誰がやっても変わらない標準化された領域に仕事を限定される。経営と人事が分断された状態になる。

そして人事は言うのである。
「経営が人事を軽視している」
「もっと経営から人事に関わりたい」

そんな状態を見聞きしたこともあるし、常に自分もその危機感に苛まれながら人事業務に臨んできた。

だからこそ経営チームと「価値観が近いこと」「価値観のズレを対話で解決出来る見込みがあること」を、自分自身を活かしてもらうためにもキャリア選定軸の一つとした。後者については自分の対話スキルにも依存するので甘えかもしれないが、最初から互いに意思疎通にストレスが無いに越したことはない。

また、一丁前に語るのも恐れ多いのだが、経営のサステナビリティとスケーラビリティの維持・向上には、経営チームのバランス感覚の高さが極めて重要なファクターだと考えている。

何かを生み出すだめの狂気を持つ経営者には、エキセントリックな方も多いしそういった方には心の底から畏怖の念を覚える。ただし、自分なりに足りない頭で考えた結果、経営は日々押し寄せる適応課題を速やかに解決していくゲームとも捉えている。

個人のケイパビリティ上の凹凸はあって然るべきだが、それを自覚すること、補完する術を持つこと、価値観を受容することは、偉大な組織を作る上での必要条件なのだと考えている。

ここまで偉そうに述べてしまうことに恥ずかしさも幾分感じている。しかし、いつかそのような経営チームの一員としてお呼ばれされるような人間にならなければいけないという自分へのプレッシャーも込めて、「マチュアでバランスの取れた経営チームと働けるか」という転職軸を置いた。

●ナレッジワーク|CEO麻野耕司とイネーブルメントとの出会い

以上のような転職軸をお伝えしたところ、for Startupsの六丸さんから真っ先にナレッジワークを紹介頂いた(今思うと本当に完璧なご紹介だったと思う)。

まだ創業2年にも満たないが、ステルスでサービスを展開し、近年お目に掛かれないスピードで成長しているらしい。そして社員数も15名程度とのこと。フェーズとしてもエキサイティングで期待が膨らむ。

ただ、CEOの麻野さんの著書『すべての組織は変えられる』『THE TEAM』は人事としてもちろん拝読していたが、いかんせんプロダクトが非公開ということで、実態が分からない。そこで一度カジュアル面談でお話したところ、別途食事に行くことになった。

その食事の場での会話一つひとつが深く刺さり、ナレッジワークにのめり込んで行くこととなる。印象に残ったのは以下のようなメッセージだった。

1.「労働は苦役なり」という人類数千年の固定観念に抗う
2.競争ではなく独占というコンセプトにリソースを投下する
3.人・組織の幸福を目的化する|「コト」に向かうだけが経営ではない

1.「労働は苦役なり」という人類数千年の固定観念に抗う

食事の場では様々な話を伺った。

まず、麻野さん自身が人生を賭けた取り組みとして、『労働は苦役なり』という固定観念を壊したいというのだ。

そしてナレッジワークでは「イネーブルメント」(社員の能力向上や成果創出)というコンセプトを通じて『労働は苦役なり』に抗うプロダクトを開発しているとのことだ。

その想いは麻野さんが直接綴っているので是非ご一読頂きたい。

労働に期待し、苦しみ、抗ってきた身として、このビジョンには何かこみ上げるものをその場で感じた。

2.競争ではなく独占というコンセプトにリソースを投下する

どのように高尚なビジョンを実現していくのか。
綺麗事は僕でも並べられるが、実際に実現するまでの道のりは、山道の如く険しく、針の穴を通すように難解である。

そんな事業戦略の話になった際に、麻野さんが参考に挙げた本が『Zero to One(ピーター・ティール著)』だ。
『イノベーションのジレンマ(クレイトン・クリステンセン著)』『クラウド誕生(マーク・ベニオフ、カーリー・アドラー著)』と並び、擦り減るほど読んだ名著の一つとのことだ。

僕もIT業界のはしくれとして何度か読んだが、麻野さんは全文記憶しているのではないかというほど丁寧に読み解き、著書内で挙げられている"独占"というコンセプトの実現に向けた戦略を忠実に組み立てていた。(独占というと聞こえが悪く感じるが、つまりは圧倒的に差別化されたイノベーションのことだ)

戦略に関わる話なので詳述出来ないことが残念だが、CEO麻野耕司へのイメージは「百戦錬磨の組織コンサルタント」から「世界を変えるプロダクト・戦略を生み出すCEO」へとガラっと切り替わった。

3.人・組織の幸福を目的化する|「コト」に向かうだけが経営ではない

最後に、経営のスタンスについても伺った。
前述の通り、この点の価値観の相違は大いなる不幸に繋がると直感していたためだ。

経営スタンスとは何か。
これも語り口は無数にあるが、シンプルに「商品市場・資本市場・労働市場にどのような態度で対峙するか」という話をした。

麻野さんは人・組織の物心両面の幸福は最重要な目的の一つであると明言した。また、『心の底から世界を変えたいが、従業員が不幸になるぐらいなら世界なんて変えられなくていい』と言い切った。そして、一意的な目標に照準を絞って成果を出すのは簡単だが、すべての目的を実現するという難しい道のりをいかに踏破するかにこそ、経営力が試されると考えているとのことだった。

少々ハイコンテクストなやりとりだったので、自分がこの話を上手く伝える語彙をまだ持たないことが悔やまれる。
それまで一直線・最短ルートで顧客価値や業績に突き進む組織もいくらか経験してきた分、このやり取りは自分にとっては強く衝撃で、帰り道でもずっと反芻していた。

ビジョン・戦略・カルチャーいずれも、自分が当初想像していた以上の強い共感をもたらすものだったのだ。

最後に

以上が、僕が転職を考えるに至ってから、ナレッジワークに出会うまでの経緯だ。大変個人的な文章なのでここまで読んでくださっている方がいるか心配だが、何か思考や感情に訴えるものがあれば幸いである。

この後、自分自身が選考で実力を試してもらいながらも、さらにナレッジワークを深く知り、意思決定をしていくことになるが、その話は次回記事以降に譲りたい。

まず、ナレッジワークという船を選ぶ話の前に、その船が旅立つ"イネーブルメント"という大海と、その海に起きている大きな波について語らなければいけないと思う。

次回、市場環境について大雑把ではあるが自分なりの解釈を紹介したい。


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