Turkish delight はそんなに魅惑なのか【我流英語教室R-18】番外編
今日の【我流英語教室R-18】は、それほどR-18じゃありません。お子様方に読ませるかどうかは、どうぞおとうさんおかあさんでご判断ください。
さて、Turkish delight なるお菓子をご存知でしょうか。直訳すると、「トルコの悦び」。中東、トルコのお菓子です。トルコ語だと、lokum 、アラビア語の halqum(喉の満足)が語源だそうです。
このお菓子、C.S.ルイスの「ナルニア国物語」第1巻、「ライオンと魔女」に出てきます。ペペンシー四きょうだいのひとり、エドマンドが、白い魔女に篭絡される時に食べるお菓子です。このお菓子には魔法がかかっていて、そのためにエドマンドは心を奪われてしまって、白い魔女に取り込まれてしまう羽目になるのですが、日本語訳では「プリン」となっている。訳者の瀬田貞二さんのあとがきによりますと、「ターキッシュ・ディライトというお菓子はなじみがないので、ことさらに違うプリンに移し替えた」ということです。
わたしは小学校4年生の時に初めて「ライオンと魔女」を読み、それから大ファンになって、年に1冊のペースで買い揃えていったのですが、今でも「ライオンと魔女」が一番好きです。大人になってさらに「ホビットの冒険」「指輪物語」のトールキンを知り、こちらにも心奪われたのですが、ルイスとトールキンはお友達の同僚で、とても仲が良かったそうです。もしかすると彼らも、fuck fuck 言い合ってたのかもしれないですね。いや、オックスフォードの先生方は、そんな言葉使わないよね。
と、それは余談で、子ども心にも「プリンなど立ったまま手づかみで食えるものなのか」と疑問を抱いたのですが、あとがきに「実はターキッシュ・ディライトだ」と書いてありましたので、なんといいますか、そのお菓子はわたしの中で、憧憬の彼方にあるお菓子となったのです。だって、ファンタジーの世界の中の、日本語訳しても読者には分かりかねると訳者が判断した、さらにまたファンタジーなお菓子な訳じゃないですか。なんかすごく、エキゾチックですよね。わたしの想像の中では、それはぼんやりと、エッグタルトのようなお菓子として浮かんでおりました。やっぱり、立ったまま歩きながら食える形状と大きさだとタルトくらいで、エッグはプリンからの連想ですかね。
ところがですね、先日彼氏が、「僕の大好物のお菓子♡」と、ネットの国際通販のサイトで、Turkish delight を見せて寄越したのでございます。え、ちょっと待って、Turkish delight って、あのターキッシュ・ディライト?あの、「ライオンと魔女」に出てくる、ファンタジーの中のファンタジーの、あのお菓子?マジですか、本の中でしか知らなくて、しかもその本の中でも正体が不明だった夢の彼方のお菓子が、この隣にいる彼氏の好物。
あらためて見てみた Turkish delight は、なんか半透明でぶにゅぶにゅしていて、白い粉に包まれています。断面には、ピスタチオやヘーゼルナッツや、ドライフルーツの刻みなどが見えている。彼氏が説明することには、「多分、スターチとお水とナッツを混ぜて、この白いのはお砂糖」。うん、あまりにも想像と違い過ぎて、味が全然想像つかない。
すると彼氏が言うのでございます「あ、あれあれ、あれに似てる。ゆべし」。え!?ゆべし!?ゆべしですか!?あの、道の駅とか駅のお土産店とかで売ってる、くるみとか胡麻とか入った、ニッポンの伝統銘菓ゆべしですかね!?
申し訳ないのですが、わたしは、ゆべしはあんまり好物とは言い難い。うーん、若干くどくしょっぱ甘く、まぶしたお砂糖がじゃみじゃみして、しかもにちゃにちゃする。あの、エドマンド、あなたは本当に、この食うと歯にくっつくようなゆべし形状のお菓子に心奪われて、きょうだいを裏切るまでに至ったのですか。そんなに魅惑のお菓子だったのですか。夢の彼方の魅惑のファンタジーから、ゆべし。しかも彼氏の好物。あまりにもいきなり現実のものとなって、ちょっと考え込みました。
次の日、高速のサービスエリアで、彼氏はゆべしを買って食ってました。
さて、そんないきなり現実のものとなった Turkish delight ですが、わたしにはもうひとつ憧れのお菓子があります。アラビアン・ナイトに出てくる、「クナファ」。日本語では「糸素麺」という漢字が当ててある。どういうお菓子かといいますと、小麦粉を練って細く紐状にしたものを、お砂糖とかはちみつで甘味をつけたつゆに浸したものなのだそうです。やばい、うまそう。うちの方の郷土料理で、うどんを小豆汁にぶちこんだような料理があるのですが(盆などに作るハレの日のお菓子)、わたしはそれが好物で、小鍋一杯くらいは食えます。それと通ずるものがあるではないですか。
Turkish delight は別にいいですが、いつの日か、クナファは食べてみたい。もしかしてがっかりするかもしれないけれど。そして、ターキッシュ・ディライトまたはクナファを食べたことのある方は、是非、その感想をお知らせいただけたらと思うのです。
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C.S.ルイス/瀬田貞二訳「ライオンと魔女」岩波書店1966
豊島与志雄・渡辺一夫・佐藤正彰・岡部正孝訳「完訳千一夜物語」岩波書店1988
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