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事業再構築補助金 攻略の研究<第8回>

 補助事業期間での、事業再構築に向けた店舗改修や設備導入、従業員研修、販売促進などの具体的計画と、投資内容や金額、実施体制などを述べたら、次は「その事業再構築が(補助事業期間終了後に)うまくいく」ことを説明しなければならない。つまり計画の実効性を示すのである。

§7 事業計画策定のポイント(3)

 今回の対象は次図だ。このセクションの目的は、新しい取組みが有望であることを審査員に納得させることである。

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 (1)市場規模予測では、まず市場(あるいは想定している具体的ユーザー層)を特定しなければならない。これには第4回で解説した事業構想が役に立つ。
 市場(ユーザー層)を特定したならば、その市場規模(数量あるいは金額)の動向を予測しなければならない。しかし直接的に市場規模動向を表すデータは稀だろう。(製造業の場合には、経済産業省が提供する統計分析ツール「グラレスタ」が参考になることもある。) 直接的データがない場合には、周辺データから合理的に推測することになる。このあたりは認定支援機関と相談するのがよかろう。

<第3回>例2 中華料理店における餃子の無人販売
 わが県での餃子支出額は・・・の調査によれば、現在一人年間〇〇〇円である。しかし表□にあるように、商圏内でも高齢単身世帯が増加し惣菜購入が増加していること、および資料◇にあるように有職主婦が増加し惣菜としての餃子支出額は今後増加する見通しであることを考慮すると、一人年間△△△円程度を見込むことができる。他方、市役所の人口統計予測(表□)によれば、当店の商圏人口は表■のように推移していく見通しである。すると商圏内での餃子支出総額は表◆のように推移していくと見込まれる。

 (2)ターゲット顧客とニーズ: 上記で算出した市場規模すべてが顧客になるわけではない。競合も存在するからである。そこで市場を細分化してターゲット顧客を特定する必要がある。このとき第4回で考えた事業構想が再び役立つことになる。ターゲット顧客はニーズが均一になるよう設定する。つまりターゲット顧客とニーズとはセットなのだ。たとえば事業構想で「家族の夕食のためにもう一品欲しくて餃子を購入する」を考えたなら、ターゲット顧客は「有職主婦層」で、そのニーズは「夕食準備に時間余裕がないための惣菜購入」だろう。

 (3)競争環境と当社の優位性: 通常は、新しい取組みをおこなえば、従来とは異なる競合が出現する。餃子の無人販売なら、スーパーやコンビニの総菜や冷凍食品が新たな競合になろう。競合を特定し、その特徴を次図のような表で整理するとよい。

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 ここで重要なのは比較項目だ。味、量、値段など製品・商品・サービスの仕様だけではなく、顧客利便性の観点からも比較するのがよい。たとえば餃子の場合なら<購入に要する時間>などが考えられる。有職主婦にとって夕方の混雑するスーパーで買うのは便利とはいえないだろう。自動販売機ならばすぐに買える。これは当店の優位性だ。もちろん時間に余裕のある主婦なら、混雑するスーパーで買うかもしれない。ターゲット顧客を有職主婦と設定したからこそ当店の優位性が浮かび上がる。そのためにもターゲット顧客をしっかりと定めたい。


2021/04/10 初稿

第1回 事業再構築補助金の狙いはどこにあるのか
第2回 どのような取組が「事業再構築」に該当するのか
第3回 具体例で理解を深めよう
第4回 事業計画策定の前に、構想を練る
第5回 事業計画の全体像
第6回 事業計画策定のポイント(1)
第7回 事業計画策定のポイント(2)



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