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事業再構築補助金 攻略の研究<第5回>

※ 初めての方は<第1回>からお読みください。

 再構築プランの構想が十分に練り上がったら、いよいよ事業計画の策定に取り掛かることになる。審査は事業計画に基づいて行われるのであるから、採択されるためには、合理的で説得力ある事業計画に仕上げる必要がある。ところが補助金申請の事業計画には、やや癖がある。今回はそれを理解しよう。

§5 事業計画の全体像

 本来、事業計画は自社のために策定する(ここでは経営計画と事業計画とをあえて混同して使っている)。そのため次図のような構造をしていることが多い。

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 過去から現在までの経営実績、現事業の市場分析、内部環境分析とから、現事業の将来動向や課題を明らかにする。持続的成長・発展のために新規事業を発想し、市場規模やニーズ、また競合状況の動向などの市場を分析する一方で、具体的な攻略方法を決め、必要な設備投資や経費などを概算して、新規事業の事業性を検討する。そして攻略の手順であったりスケジューリング、あるいは資金調達などの実施計画を決め、最終的に売上予測や利益計画などの経営シミュレーションをおこなう。ざっと言えば、このような流れだ。必要があれば、この事業計画書を提示することで、金融機関などと交渉することになろう。

 さて事業再構築補助金における事業計画については、公募要領(p.23)に必要と思われる項目が記載されているが、上述の事業計画とは、一見かなり構造が違うことに気づく。そこには主に2つの理由が考えられる。

 第1の理由は、補助金における事業計画書は、税金である補助金を投入する必然性を説明する文書であるということだ。ただ売上が落ちているから事業再構築したい、というだけではなく、経営分析に基づいて事業再構築の必要性を考えているのか。具体的にどのような事業再構築を考えているのか。それは事業再構築指針の要件を満たしているのか。実施計画は十分に考えられているのか。どれだけの設備投資が必要で、どれだけの補助金が必要なのか。そして最終的には第1回で述べたように、労働生産性や付加価値額をどれだけ増大できるのか。などなど説明すべきことは多い。

 第2の理由は、対象としている計画期間が2段階であることによる。次は概要(p.8)に掲載されている図である。

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 この図の赤線で示されているように、補助事業期間事業計画期間という2つの期間がある。補助事業というのは、補助金の対象となる事業のことだ。つまり事業再構築に必要な建物の改修や撤去、必要な設備導入等、必要な研修や広告宣伝等は、この補助事業期間に実施したものだけが補助金の対象となる。いわば補助事業期間は、事業再構築の準備期間ということだ。これが終了してから、事業再構築の成果が発揮されるだろう。それが事業計画期間ということになる。

 このように事業再構築の準備期間と成果発揮期間という2つの異なる期間に分かれているため、(補助金申請に必要な)事業計画の構造が通常と異なることになるのだ。

 では、事業再構築補助金申請のための事業計画は、どのような構造で策定すれば説得力あるものになるのだろうか。このとき重要なのは、なるべく概要に提示されている方向性に従うこと、提示されているキーワードは網羅すること(もちろん該当しないものを記載する必要はない)の二点である。次図は筆者が現時点で考えた構造だ。(詳細は個別企業によって異なる。あくまで例示であって、採択を保証するものではないことは言うまでもなかろう。それでも構造化されていることで説得力は増すというものだ。公募要領に記載されている部分と比較してほしい。)

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 次回から、それぞれの詳細について検討することにしよう。

2021/04/04 初稿

⇒ <第6回> 事業計画策定のポイント(1)

第1回 事業再構築補助金の狙いはどこにあるのか
第2回 どのような取組が「事業再構築」に該当するのか
第3回 具体例で理解を深めよう
第4回 事業計画策定の前に、構想を練る

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