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手放せない一冊

 手放せない一冊がある。

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セレーネ・セイレーン
(講談社X文庫―ホワイトハート) 文庫 
1998/9/1
著者:とみなが貴和 
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 内容はティーンエイジャー向けの恋愛小説に区分されるだろう。月面の基地で起こる、ロボットを中心とした人間模様だ。

 最初は、高校生の時に学校の傍の古本屋さんで購入した。その後、友人に貸して帰ってこなくなり、改めて購入した。今手元にあるものは、3冊目に購入したものだ。
 
 頻繁に読み返す本ではない。ただ、手放すつもりはない。
 それを自覚したのは、スーツケースと貴重品の手荷物のみで引っ越ししたときだ。限りなくコンパクトに必要最低限のものを選ぶのだが、この本だけは持っていくことにした。何度か、スーツケースの詰め直しをして、入れたり出したりを繰り返した記憶はある。でも、最終的には持っていく方を選んだ。その後も迷う機会はあったが、結局残した。

 なぜ手放せないのかは、いまだに分からない。共感とか執着とか、もしくは理想や欲なのかもしれない。一言では言い表せない何かがある。きっと、なぜ手放せないのかが理解できれば、私は簡単に手放してしまうのかもしれない。ただ、今の私の中に理由を説明できる言葉はない。

 気に入っているとか、好きだから、とかシンプルな言葉にはなってくれないような気はする。しいて言えば、人生の課題のようなものを揺さぶる機能があるのかな、と思うことはある。

 理由はわからないけど、手放せない一冊、手放さない一冊。
 このまま持ち続けて、最後は一緒に火葬されるのも良いような気がする。

#わたしの本棚



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