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部屋に溜まる不要な書類。重要書類と書かれた封筒。契約当時に送られたというID・パスワード記載の書類。何が必要で何が不要なのか大掃除。『デタラメだもの』

長年生きていると、自ずと溜まってくるのが書類関係。何か契約すれば契約関係の書類も溜まってくる。郵送で送られてくる書面類だってある。とにかく書類というものが部屋には大量に舞い込んでくる。

時節はどうやら大掃除の時期らしい。個人的に大掃除というやつは、春やら秋やらといった掃除をしていても苦にならず、清々しい季節に行うのが良しと思う派であるし、水を多量に使うような掃除関係は、気候的に水が乾きやすい夏に行うのが良しと思う派なのであるが、大掃除というイベントにかこつけて、この書類関係という敵をやっつけてやろうと思った。

書類というものは、いざ不要と思って捨て去ってしまうと、数年後、殊更に困らされることがある。やれインターネットの接続にトラブルが生じたときなどは、契約時に郵送した書類に記載のIDやらパスワードやらを確認しなければならないといった難行。購入時に手渡した保証書なる書面が存在すれば、満足の行くアフターサポートが受けられますよ、といった類の難行。重要書類として郵送した書面がお手元になければ、金銭のお支払いができないため、持参くださいといった類の難行。

日々の生活において何年も何年も必要とせず、チラッと見ることすらなかった書類たちが、クリティカルなシチュエーションにおいてのみ、その存在を問われることになり、万が一それを保有していないともなれば、えげつないほどの時間が奪われてしまったり、本来受け取れるはずの金銭が受け取れなかったりと、想像を遥かに超えるペナルティを受けることになるじゃあないの。

それを危惧したある日以来、1ミリでも重要と思しき書類関係は、全て保管しておくことに決めた。保管し始めた頃は、パンチで書類に2穴を開け、ファイルに綴るなどの緻密な管理。それをするのが億劫になってからでも、汎用性のあるファイルを購入し、そこに書類を保管することを習慣としてみた。およそ15年くらい続いた習慣だ。その結果、何が起こったかと言うと、部屋が書類で溢れかえり、生活スペースを確保するのも困難になったというわけである。

「何これ、足の踏み場もないやん」とボヤキながら、重要書類と書かれた封筒を踏みつけて自室に入る。重要書類と書かれた封筒を開封せずに生きているにも関わらず、何ひとつ生活に支障をきたしたことがないぞ、という一点の曇りはさて置き、これらをどうにかせんとあかんということで、およそ15年ほど溜めに溜めた書類の全てにチラッと目を通し、不要なものは全部、シュレッダーしてやることに決めた。シュレッダーというのが、いかにも攻撃的でよろしい。

保管開始からクレジットカードの利用明細は残してあった。どこかの月に見知らぬ誰かの支払いが紛れ込んでいたとして、それを返金してもらう際、明細を突きつけてやらねばならんから。しかし、そういう機会は一度も訪れたことはなく、全てをシュレッダーしてやった。

光熱費や水道代の料金明細をはじめ、あらゆる利用料金明細も残してあった。もし万が一、先方から不正な引き落としがあったとして、返金してもらえる機会に恵まれたとしよう。そんな折り、手元に明細が不在で、不正な引き落としを立証できなかったがために返金を受けられない、なんて損失があった場合に後悔すると思ったから。しかし、そういう機会は一度も訪れたことはなく、全てをシュレッダーしてやった。

故障して既に廃棄済の家電の保証書や取扱説明書。更新が済んで既に不要になってしまった保険証書。過去に勤めていた会社の給与明細。既に乗り換え済の携帯キャリアとの契約書。同じくインターネットプロバイダの契約書。何らかの工事を依頼した際の工事完了報告書。約款。約款。約款。オンラインショップで何かを購入した際の納品書。『あなたもひとつ上のランクのカードを』といった類の、上位版クレジットカードへとスイッチングするための勧誘DMの類。代表的なものを挙げるだけでもキリがない。

実際のところ、自室に足を踏み入れるのが困難なほどになっていた書類と対峙し、シュレッダーで切り刻み続けた結果、30枚程度が本当に必要な書類として手元に残った。いや、勝ち残った。必要かと思い、あれほどまでに溜めに溜めていた書類たちが、最終的には30枚程度にダイエットできた事実。不要で不毛な書類たちに囲まれて過ごしていたと思うとゾッとする。まるで、腰あたりまで伸びた長髪がトレードマークの人間が、スッキリと角刈りにしたほどの様変わりを見せた。こころなしか空気が美味しい気がする。

しかしだ、それもこれも書類というやつが、到着したタイミングと、いざ必要となるタイミングに乖離があり過ぎることに原因があると思ったりする。

「お客様、ご契約時にご郵送いたしました書類をお手元にご準備いただけますでしょうか?」

これだ。仮に15年ほど前に契約した際に送られてきた書類。スピーディーに手元に準備できる人間がどれほどいるだろうか。電話口の声の若いご担当者さんだって、15年前にはきっとその会社にいなかっただろう。もしかすると、社会人にすらなっていないかもしれない。その当時に受け取った書類というものを、いとも容易く準備できるはずがない。

で、必要になるタイミングがかなり先の将来になるにも関わらず、それを保有していないときの厳しさといったら、ない。お手元にIDやらパスワードやらがなかった場合、保障はできかねます。お答えできかねます。ご返金できかねます。できかねますのオンパレードなわけだ。みんな、将来のことに備えるのが大好きでしょう? そりゃ、全ての書類を据え置きたくもなるわなぁ。

他にも、インターネット上でIDやパスワードなど、いわゆるアカウントというものを作成したのはいいものの、その後、そのサービスを利用しなくなったり、IDやパスワードを忘れてしまったり、そのサービスが終了してしまったり、その会社が倒産してしまったり。そういった無数のアカウント情報というものは、どこを彷徨っているのだろうかと思う。誰かが管理してくれているの? 契約当時の書類を手元に準備さえすれば、どうにかこうにかしてくれるの? それとも、闇のDM配信業者の手に、既に渡ってしまってるの? 世の中、不可思議なことが多すぎる。

なぜそれほど収集癖のあった書類関連を捨て去ろうと思ったのか。それには大きなきっかけがあった。

某先日、車検を受ける機会があり、お世話になっているディーラーの担当者さんに必要書類一式を提出した。「ふふふん、安くしてよね」なんて言いながら通常業務をしていると、「すんません。必要な書類が1種類、ないんですわ」という電話が入った。どうにもこうにも、その日に車検の手続きを進めないと、消費税がアップしてしまう兼ね合いで、一刻も早く書類が欲しい。なので、「君の自宅に取りに伺うよ」と相成ったわけだ。

こちらは仕事の真っ只中。自宅に戻る時間的余裕もない。そこで判断した。担当者さんに自室に入ってもらい、画面を見ながら通話できる携帯電話の機能を駆使して、遠隔で書類を掘り起こしてもらおうという算段だ。

きっとここだろうと心あたりのある箇所が数箇所あったので、早速探してもらうも、一向に見つからず。「いや、たぶんそこにあるはずなんです」などと、実際に確認して「ない!」と言っている担当者さんに再捜索を依頼する。が、ないものはない。

ええい。仕方がない。片っ端から探しちゃってくださいと伝え、担当者さんも、「じゃあ、容赦なく探させてもらいま!」とのこと。一抹の不安を覚えながらも電話を切る。

数時間後、担当者さんから「無事、書類があったので、車検通しておきますねー」と連絡があった。すっごくすっごく気になっていたので、「ちなみに、その書類ってどこにありました?」と尋ねてみたところ、「あっ、書類ね、シュレッダーの上に積まれてましたわ」と返ってきた。近々、掃除の際にシュレッダーをかけるべく溜めてあった書類群の中にあったらしい。必要な書類をだ。処分する群れの中に。全くもっと不要な書類たちは部屋に溢れかえっていたにも関わらず、肝心要、必要な書類がシュレッダー予定に組み込まれていたわけだ。あかん。こんなん溜めてても意味がない。全部捨ててしまえ。

という運びで大掃除にシュレッダー。ほんとに身軽になりました。車の保険関係の契約書及び重要書類を誤ってシュレッダーしてしまったことを除けば、特にトラブルもなく。そして、この誤ってシュレッダーしてしまった車の保険関係の書類が近い将来、なんのトラブルも巻き起こさなかった場合、重要書類を保管しておくことは重要なことではなく、重要書類をシュレッダーしてしまっても重大なトラブルにはつながらないと判断し、自室から一切の紙類を処分してやろうと心に誓った。

デタラメだもの。

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《3分後にはもう、別世界。》 広告企業勤め+フリーランスの兼業家。『3分で読めるショートストーリー作家+広告クリエイター+マーケッター』の切り口で記事を執筆しています。https://www.facebook.com/osakamoderndisco/
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