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『いのちのレジリエンス』     漢方とブリーフセラピーを精神科治療に生かす         岡留美子著 東洋学術出版社刊

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本の紹介 その2 メンタルヘルスと漢方薬について

その1では本書のレジリエンスの部分を紹介したのだが、今回は漢方薬の話について書いていこうと思う。

向精神薬の減薬と回復について、医師や患者さんに色々な取材をしていると、漢方薬や栄養療法の情報に行き着くことが多い。

取材を続けていると、長年服薬した向精神薬が合わなくて副作用に苦しんだり、減らそうとしても依存性がありうまく減薬できなかったり、そもそも服薬の必要がなかったかも知れないと感じられるいわゆる誤診や過剰診断の方もいたりして、脳に作用するこの向精神薬というのは、種類はどれでもかなり厄介な薬であると感じることが多い。

とはいえ、苦しい時にそれなりの効果があり必要だったとする声もあるので、絶対ダメな薬ともいえないのだろうが、そもそも適切な使い方や減らし方などについて精神科医の薬の扱いが杜撰すぎるという印象は拭えない。

最近は脳に直接作用する西洋薬に対して、体全体の代謝をよくするといった観点で漢方薬を精神科の治療に使っている医師の本を読んだりお話を聞かせてもらったりしている。

『減薬』というのが一種のブームみたいになっていることもあり、HPなどで『減薬』を売りにしたクリニックもあるようだが、本当に丁寧に慎重に薬を調整してくれるのか疑わしいことも少なくない。

薬を減らすことそのものを人生の目的のように考えて大変な努力しながら減薬している人もいるが、一方で「知らないうちに薬がいらなくなっていた」「飲み忘れているうちにいらなくなった」という人もいるから不思議なものではある。

どちらかというとこの自然な感じで減薬や断薬できた方々の中に栄養療法や漢方を取り入れた人が多いような印象を私は持っている。または減薬断薬後に栄養療法や漢方薬で体調を管理している方もいるだろう。

私の印象では漢方薬を扱っている医師は、西洋薬だけしか使わない精神科医に比べて人間や症状に対する理解が柔らかい感じがする。本書の著者岡先生も、西洋薬と漢方薬とセラピーをうまく組み合わせるこで緩やかに患者さんの回復を支援しているエピソードが多く紹介されている。

精神科治療で漢方を活用する意義を本書の中で岡先生はこのように説明している
1 漢方薬自体に効果がある
2 服薬抵抗を軽減できる
3 精神科薬物を減量できる
4 精神科薬物の副作用を軽減できる
5 良好な治療関係を構築できる
そして漢方薬を十分に効かせるためには、それぞれの漢方薬がどう効くのかをよく知り、処方する際に患者さんの回復する力を引き出すように工夫することが大事としている。

本書の第4章では、岡医師が普段の治療でよく活用する漢方薬がほんの中では症例も紹介して詳しく紹介されている。

1半夏厚朴湯 (気の滞りを改善する)
2柴胡加骨牡蠣湯(ストレスが体の症状となって出る時)
3四逆算(ストレスがあっても表現できない時)
4抑肝散 抑肝散加陳皮半夏(怒りがある時)
5甘麦大棗湯(悲しみ抑うつ 不安が強い時)
6桂枝加芍薬湯(お腹の症状が強い時)

上記は私がただ本の小見出しを紹介させてもらっただけなので詳しくは本を読んでいただくのが一番良いと思うが、いわゆる向精神薬を医師が処方するときのDSM -5の診断基準とはまた趣の違う人間への理解を元に処方の選択を考えているように思える。

また漢方薬はゆっくりとしか効果が現れないというイメージがあるけれど即効性のあるものとして、喉の痛みに効く桔梗湯や、気象や気圧の変化で不調になったときの五零散、寒さや腹痛には真武湯などが有効であるとも紹介されている。

漢方薬のチョイスや使い方、西洋薬とどのように組み合わせるか、またどのようなセラピーと共に処方するかは、医師と患者それぞれの関係や考え方によって異なってくると思う。

本書で岡先生が紹介しているどのエピソードも「色々なことがあっても人は大丈夫」と感じられるほっこりした暖かさ、そして強さが感じられる。

もちろんどの人の回復もそれぞれで、これが正解とかはないのだと思うが、回復を支える臨床現場の実践として本書を読むことで、患者さんが自分の主治医との間に回復のイメージを共有できたら良いなあと思うのだ。

現在保険が適用されている漢方薬は148種類 以下はツムラの一覧ですが、クラシエ、JPSなど複数のメーカーが漢方製剤を発売しています。

漢方薬を使っている精神科医のインタビューはこちらです。
精神科医 山田宗良医師インタビュー
https://note.com/tokio_tsukizaki/n/n5e6b65583eea

本の紹介その1 レジリエンスについてはこちらです
https://note.com/tokio_tsukizaki/n/n8e4220ce34c5


https://note.com/tokio_tsukizaki/n/n8e4220ce34c5




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