見出し画像

【ゆっくり減薬のトリセツ2023 vol.11】 向精神薬の減薬は目的なのか結果なのか

私のところにここ数年寄せられる相談の多くは、「精神科にかかって薬を飲んでいるけれど、症状が良くならない。なんとか薬を減らしたい」というものだ。

その方法について調べるために減薬を希望する方々とコミュニティを作り勉強会や読書会を開いて研究を続けてきた。

その結果、減薬をして回復するためには大きく分けると以下の3つくらいの軸があるような気がしている

1● 向精神薬の慎重な減薬   (脳の状態の改善)

一気に減らさず、計画を立てて慎重に1剤ずつ薬を減らしていく。薬を削る、薬を溶かした水溶液などを使う漸減法と日程を決めて定期的に微量ずつ減らす隔日法などを利用し、脳から薬を少しずつ引いていく。

2● 栄養療法による健康状態改善 (身体状態の改善)

薬の調整をする以前、または調整中にオーソモレキュラー(栄養医学)など栄養学に沿った食生活を実践したり、サプリメントを使って栄養状態をコントロールしたりする。運動や鍼治療なども含め体の状態を整える。

3● 問題のある家族などからの脱出と関係性シャットアウト(住環境の改善)

メンタル疾患の方の生育歴や家族歴などには複雑性P T S Dなどが背後にある場合が多い。それが大きなストレスになっていることに気づいていない場合もある。理解ある支援者などの支援によって、ストレスフルな環境から物理的に脱出することで環境は大きく変えられる。

向精神薬の副作用で悩む人が減薬を意識した場合、まず薬を減らすことをいわゆる当面の人生の目標として掲げる場合が多い。その際に「こんな怖い薬は一日でも早くやめたい」と恐怖心をベースに薬を強く否定する場合が多い。

現実的には、サポートしてくれる医師も少ない中、計画的な減薬は、どれも緻密さと忍耐力や継続する力が必要な孤独な作業だ。医師や薬剤師、看護師など専門家の理解と支援が得られない場合には、自分で計量したり調剤したりしなければならない。

それでも強い意志を持って年単位の減薬を計画し実行している人も増えており、やり遂げて回復している人もいる。

これに対して「栄養状態の改善」や「環境改善」に軸足を置いてアプローチする人は、あまり減薬の方法、減らし方に特定のルールを作って実行していない場合が多い。

「どんな方法で減薬しましたか?」の問いに対して「なんとなく、知らないうちに減っていた」「飲み忘れることが増えて次第にいらなくなった」「お守りとしてずっと持っている」といった答えが返ってくることが多く、向精神薬への嫌悪感もあまりない。厳密な計画減薬をしている人と比較するとどこか楽観的だし、減薬断薬は目的ではなく結果のようなのだ。

食生活や栄養状態の改善については、サプリメントを使ったり、糖質制限、グルテンフリー、添加物の除去など諸説あり、本もたくさんある。大体共通するのは、現代人が実は栄養不足に落ちいっているという指摘だ。食べているのに栄養的が不足していたり、バランスが崩れている「新型栄養失調」の可能性があると指摘しそこを改善する情報は色々ある。

もう一つの環境改善の方は、一言で行ってしまうと「引っ越し」という名の自立だ。ストレスフルだった生育歴、夫婦生活 家庭環境から物理的に距離を置く。物理的には大変だが、メンタルが落ち着くと、薬が自然に不要になっていくという意味で、即効性があるようだ。

薬を減らして回復していきたいとき、最初にメンタル不調に陥った元々の原因によって、この3つのアプローチのどこに軸足を置くと効果的なのかは人それぞれなのだろうけれど、一番簡単に少しずつ誰でも改善できるのは食生活なので減薬の準備として有効かもしれないと最近考えている。

よろしければサポートをお願いします。いただいたサポートは取材、インタビュー、資料の入手などに大切に使わせていただきます