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伊与原新『八月の銀の雪』感想文

羽田椿です。

伊与原新さんの独立短編小説です。

中身は以下の通り。

八月の銀の雪
海へ還る日
アルノーと檸檬
玻璃を拾う
十万年の西風

まず、購入した本に帯がついていたので紹介しますね。

科学の揺るぎない真実が、人知れず傷ついた心に希望の灯りをともす全5編
耳を澄ませていよう、地球の奥底で大切な何かが静かに降り積もる音に-。

なるほど。うまくまとめたなという感じです。

けど、「科学の真実」というよりは「自然の在り方」みたいなものなのではないかと思いました。

それぞれ主人公が抜け出せない暗い穴に落ちていて、たまたま出会った人を通して、さまざまな自然の在り方を知り、それが希望になっていく。

その描写がとても美しくて、心情にフィットしているし、それぞれ主人公が「自然」に思いを馳せ、同調していく場面には解放感がありました。

だから、それが彼らにとって救いなのだということがすんなりと受け入れられた気がします。

登場人物が類型的だったり、言動に疑問を持つ場面もありましたが、独特の魅力がある作品だなと思いました。

いわゆるうんちくの部分もおもしろくて、どっかで聞いたなというレベルからぐぐっと深くまでいくので、次の題材はなんだろう?と楽しみながら読みました。

ただ、お話の並びのせいもあると思うのですが、ややワンパターンかなと。よく言えば統一感があるのですけど、直木賞の選考委員がどう見るか。

五話目に関しては資料を読んでいるような、もしくは教育番組を見ているような感じで、内容は興味深かったけど、小説として楽しんだかというと、微妙かなあ。

個人的には推したい作品ですが、不安要素もあるという感じです。

ちょっと読む人を選ぶ作品かもしれません。わたしは好きです。

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