この世界は苦味と甘みでできているのね
雨の日の喫茶店_____
「私、雨が好きなの。」窓を覗きながら君は言った。
理由を尋ねると、君は「なんとなく」としか答えなかった。
その曖昧な返事が君らしく、僕は少し微笑んだ。
喫茶店のテーブルに並んだ二つのカップ。
僕のカップはブラックコーヒー、君のカップには砂糖が二杯。
君はいつも
「この世界は苦味と甘みでできているのよ」と言っていた。
その言葉を聞くたびに、僕は少し胸が痛かった。
窓の外では雨が静かに降り続けていた。
君はぼんやりと雨音を聞きながら、時折悲しそうな顔を見せた。
その表情が何に向けられているのか、僕は尋ねなかった。
僕は君のその顔を見るのが嫌だった。
「僕は雨が嫌いだ」と言ってみた。
君の悲しみを少しでも和らげたいと思ったからだ。
でも、君はただ静かに笑って、
「だから私が雨を好きなのかもしれないね」
とつぶやいた。
その言葉が、僕にはとても切なく響いた。
君の心の中の雨は、いつも止むことなく降り続けているのだろう。
その雨が君の悲しみを洗い流してくれることを願いながら、
僕は黙って君の横顔を見つめていた。
だから僕は雨が嫌いだ。
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