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365日のてのひら話

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200文字を基本に500文字までの物語。
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2024年3月の記事一覧

2024/03/31 輝雲(きうん)

「天使のはしごが伸びてる」 同居人の言葉に空を見上げると、はしごというよりは階段のような…

名野凪咲
4か月前

2024/03/20 「春分の日」

昼も夜も半々……だというのに、空は曇り。昼というには暗く、夜というには明るい中途半端な明…

名野凪咲
4か月前
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2024/03/30 妖花(よみはな)

ふっと心を奪われたのはその美しさだった。 けれど、美しいと言っていいのかわからない。その…

名野凪咲
4か月前

2024/03/19 「ミュージックの日」

どどそそららそ。 ヘタクソな鍵盤ハーモニカの音が響いている。 弾いているのは新一年生………

名野凪咲
4か月前
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2024/03/29 鐘霞む(かねかすむ)

鐘が霞んで見えることではなく、春ののどかさが鐘の音を霞ませる、という意から。のんびりとし…

名野凪咲
4か月前

2024/03/28 菫野(すみれの)

目の前に広がる紫の色に思わず、感嘆の声が上がる。 「うわぁお。むらさきーーー」 子供のよ…

名野凪咲
4か月前

2024/03/18 「春の睡眠の日」

うとうとと……沈む意識の間を漂っていた。 ことんと小さな音がする。小人が走り回る音が続く。 ……眠い。起きた方がいいのだろうかという意識と、眠いという意識が戦っている。 スズメの鳴き声もするが全てが遠い。眠った方がいいのだろうかと思いながら、意識はまだ間にいる。 誰かが私の髪を引っ張った。痛みはない。ただ、髪を動かされた感覚だけがある。起きた方がいい。 意識がふわりと浮くと同時に、空から落ちる感覚に足が跳ねあがった。 目が覚めると、小人がいる。 夢だ。 起きたつ

2024/03/27 春北風(はるならい)

降り注ぐ日差しは春の暖かさだというのに、吹き付ける風は冬のものだった。 コートの首元を押…

名野凪咲
4か月前
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2024/03/17 「セントパトリックスデー」

同居人がド派手な緑のいでたちで部屋から出てきた。 「それ、あれ……えっと。おさるのアニメ…

名野凪咲
4か月前

2024/03/26 春挽糸(はるびきいと)

からりからりと音がする。 今どきどこにそんな骨董品があったんだというようなよくわからない…

名野凪咲
4か月前

2024/03/15 「オリーブの日」

ピザに丸い輪切りの変わったものが乗っている。思わず匂いを嗅ぐ。ピザの香りしかしない。 「…

名野凪咲
4か月前

2024/03/25 蓮植うる(はすううる)

蓮の花が咲いたのは初夏だったような気がする。 ジャングル化した庭を2年かけて少しずつ整え…

名野凪咲
4か月前

2024/03/14 「ホワイトデー」

部屋に戻ると、テーブルの上のお皿に白い物体が置いてあった。 「餌? ネコでも持ち込んだ?…

名野凪咲
4か月前

2024/03/24 花種蒔く(はなだねまく)

朝顔の種を手に少し考える。最近の気温と湿度、他の植物の開き具合。そして、体感的な温度。考えて、朝顔の種を元に戻した。まだ早い。 室温10℃前後。私の小指はしもやけでまだ痛い。 「傷ついた手で土いじりをするのは良くない」 独り言のようにつぶやいた声に同居人が答えた。 「破傷風……だっけ?」 そう言ってペチュニアの種を渡してきた。一年草の朝顔と同じだがこの時期に植える花だ。 「金魚草もいいんだけどな」 そう呟くとすぐに種が出てきた。よく見ると、いろんな種がすでに準備さ