2024/03/20 「春分の日」

昼も夜も半々……だというのに、空は曇り。昼というには暗く、夜というには明るい中途半端な明るさの一日。

「暦の上では半分でも、実際には夜の方が長くかな」

空はどんより灰色なだけではなく、冷たい風と雨が吹き荒れている。陽気な春の空気は一切ない。どちらかと言えば、『冬』の空気だ。

「まぁ。数日すれば、晴れるよ。今年はそうだってだけだし、毎年、雨なわけでもないんだから」

「暦の上では春真っ盛り……現実は咲き始めた花が雨風にさらされてズタボロ」
風が花を丸ごとさらうかのように吹いて、小さな花弁が散っていく。

「春の嵐」
「たぶん、違うと思う」
こたつ必須の春分の日は、まるで季節が戻ったようだ。

「暦は目安で現実は行ったり来たり……時々、行き過ぎて初夏にもなる」
同居人の言葉は確かにその通り。今年は現実が『冬』だっただけだ。

「真冬じゃないだけマシかな」

そうぼやいた次の日。外はうっすら銀世界になっていた。
「言霊って怖いねぇ」
同居人が笑った。

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