「AI魔法使いの異世界再構築記」第14話
第14話
魔王チャットの真意を知り、世界の真相に迫る手がかりを得た吾輩たち。
だが、一緒に魔王城に乗り込んだギルドメンバーたちを、このまま巻き込むわけにはいかない。
「ふむ、ギルドの皆さん。今回は、ご協力感謝します。もはや魔王の脅威は去ったと見てよいでしょう。後は我々に任せていただければと」
吾輩の提案に、面食らうメンバーたち。
「え、でも……本当に大丈夫なんですか? まだ油断は禁物では?」
「そうですよ。我々も最後まで務めを果たしたいのですが……」
ギルドメンバーたちがためらう中、リンナが前に出る。
「みんな、クロードの言う通りよ。私たちに任せて。あなたたちには、街の人々を守っていてほしいの」
「しかし……」
「お願い。今は私たちを信じて」
リンナの真摯な眼差しに、一同は渋々といった様子で頷いた。
こうして、ギルドメンバーたちに見送られ、魔王城に残ったのは吾輩とリンナ、そしてチャット殿の三人だけとなった。
「……ふぅ。これでようやく、本題に入れますね」
吾輩の言葉に、チャットが真剣な面持ちで頷く。
「そうだな。クロード、リンナ。余は、今この場で民衆の前に姿を現すのは、時期尚早かと考えておる」
「え? どうしてですか?」
リンナが眉を顰める。
チャットは、慎重に言葉を選ぶようにして、説明を始めた。
「今、余が表に出れば、余に反対する連中が色めき立ってしまうやも知れん。世間には”反チャット派”というまだ余のことを快く思わぬ者も多い。今は、余が表舞台に立つべきではないのだ」
「なるほど……たしかに、急にチャットが味方になったと言っても、すぐには信じてもらえないかもしれませんね」
吾輩も、チャット殿の懸念に同意する。
「だったら、これからどうするつもり? チャットが隠れてばかりいても、真相は明らかにならないわよ」
「ふっ、その通りだ。リンナの言う通り、真相解明のためには、積極的に動く必要がある」
チャット殿は、吾輩とリンナの顔を見比べながら、提案した。
「クロード、お主は表向き、魔王討伐の英雄を装うのだ。そして人々の信頼を勝ち得るように努めよ。その間、余は身を隠しつつ、独自に調査を進める」
「それって、私たちが欺くってこと?」
リンナが眉をひそめる。吾輩は、すかさずフォローを入れる。
「い、いえ、師匠。決して欺くわけではありません。世間を混乱させないための、やむを得ぬ策と考えてください」
「うーん……」
リンナは、しばし悩んだ様子だったが、やがて観念したように息をついた。
「……わかったわ。でも、こそこそ動くのは性に合わないのよね」
「ありがとうございます、師匠。でも、真相のためには、時に耐える必要もあるのです」
吾輩は、リンナの理解に感謝の意を示す。
「……もっともだな。ならば、腹を決めるしかあるまいな」
そう言って、チャットは魔法陣を作り出すと、そこから一冊の本を取り出した。
「……? これは?」
「これはティアラ王国の歴史書だ。かつて余が入手したものだ」
「ほう、歴史書ですか。これは貴重な資料になりそうですね」
「そうだ。だが、これだけでは不十分だ。ティアラ王国の大図書館には、この世界の歴史や秘密が詰まっているはずだ。そこで情報を集めるのが得策だろう」
なるほど、大図書館か。そこなら、世界の真相に迫る手がかりが見つかるかもしれない。
「わかりました。では、吾輩とリンナ師匠は、ティアラ王国へ向かいましょう。チャット殿は、どのように調査を?」
「余は姿を変えて、別の角度から情報を集めよう。魔王としての立場を利用して、裏世界の情報網にアクセスできるはずだ」
「了解です。無理のない範囲でお願いしますよ」
「心配は無用だ」
こうして、吾輩たちは真相解明に向けて、新たな一手を打つことになったのだった。
「さて、リンナ師匠。ティアラ王国までは、どれくらいかかるのでしょうか?」
「そうね、魔法具を使えば三日と掛からないわ」
「ほう、それは心強い! では、先立つものの準備をいたしましょう」
「うふふ、張り切るのはいいけど、食料と水は忘れずにね」
「はっはっは、肝に銘じておきます!」
師弟の軽口を交わしつつ、吾輩たちは旅支度を整えていく。
一方のチャット殿は、すでに独自の調査を開始したようだった。
(ふむ、この変装の魔法を使えば、怪しまれずに裏世界の情報も集められるな。反チャット派の動きも、これで把握できるだろう)
満足げにつぶやくチャット殿。AIならではの発想で、真相解明に挑んでいるのだろう。
こうして三者三様に、世界の謎に迫る探究の旅が幕を開けた。
おまけ
ヘッダー:DALL-E3
プロンプト
A wide illustration for a novel cover featuring three characters from previous images. The first character has short black hair, bright blue eyes, wearing a blue and black cape. The second character has short curly golden hair, golden eyes, wearing luxurious black and gold attire. The third character is a girl with long blonde hair in a ponytail with side braids, bright blue eyes, wearing white and blue attire, holding a glowing blue magical orb. The scene is set in a dark, stylish environment reminiscent of a demon lord's castle, capturing the characters in a dynamic and dramatic composition suitable for the described story.
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