『資本論』を自分なりに読みやすくリライトしていく試み3 -生産性が高くなるとものの価値は減る
資本論
第1部 資本の生産過程
第1篇 商品と貨幣
第1章 商品
第1節 商品をめぐる2つの価値-「使用価値」と「価値」3/3
前の記事:第1節 商品をめぐる2つの価値-「使用価値」と「価値」2/3
■労働の生産性が高くなるとものの価値は減る
労働時間は、労働の生産力が変化するたびに、それにつれて変動します。
労働の生産力は、いろいろな事情によって規定されます。
労働者の平均熟練度
科学の現状とその実用化の程度
生産の組織化
生産手段の規模と能力
自然条件
などなど。
たとえば、同じ量の労働をしていても、豊作のときには小麦8ブッシェルになり、凶作のときは4ブッシェルにしかなりません。また豊かな鉱山では貧しい鉱山よりも多くの金属を供給できます。
ダイヤモンドを例に考えてみましょう。
ダイヤモンドは非常にまれにしか存在しないため、発見には平均して多くの労働時間が費やされます。その結果、ダイヤモンドはわずかな体積で多くの労働時間をあらわすことになります。
けれど、もしももっと豊かな鉱山があれば、同じ量の労働がより多くのダイヤモンドを生み出すことになり、その価値は低下するでしょう。
さらに、もしもほんのわずかな労働で炭素をダイヤモンドに変えることに成功すれば、ダイヤモンドの価値はレンガの価値以下になり得ます。
一般に、労働の生産性が高くなるほど、物品の生産に必要な労働時間は短くなり、その物品に結晶化された労働の量は減り、その価値は低くなります。
逆も同様で、労働の生産性が低いほど、物品の生産に必要な労働時間は長くなり、その価値は高くなります。
したがって、商品の価値は、そこに組み込まれた労働の量に直接的に影響し、生産性に反比例して変化します。
■ものが商品となる条件とは
ところで、ある種ものには(商品としての)価値がなくても、使用価値を持つ場合があります。これは、人間に対するその有用性が、労働によって生じてはいないものです。
例えば、
空気
未使用の土壌
自然の牧草地
原生林
などです。
ものには商品であることなしに役に立ち、人間的労働の生産物であり得る場合があります。(自給自足などのように)自分の労働の生産物で自分の欲望を直接満たす人は、確かに使用価値を創造しますが、商品は創造しません。
商品を生み出すためには、使用価値を生み出すだけでなく、他者のための使用価値、つまり社会的使用価値も生み出さなければなりません。
■商品の条件=社会的な使用価値を持つこと
しかも、他者のためならなんでもいいというわけではありません。中世の農民は、封建領主のために年貢の穀物を生産し、さらに僧侶のために十分の一税の穀物を生産しました。が、年貢も税も、次の理由で商品にはなりませんでした。
商品になるためには、生産物は他人の手に、使用価値とともに交換を通して移されなけらばならないからです。(それが、社会的な使用価値を持つということです)
最後に、どんな物も、有用物であることなしには価値を持つことはできません。物が無用であれば、それに含まれている労働もまた無用であり、労働としてはカウントされず、価値は生まれません。
第1節おわり
第2節へつづく
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