日本人ですらあまり知らない温泉の秘密(2)〜療養泉の泉質ってなに?
温泉の知られざる魅力について、どしどし書いていこうと思う菅野です。
前回は、「そもそも温泉ってなんだろう?」ということを書きました。
|療養泉ってそもそもなに?
そこでも書いた「療養泉」について今日は書いてみようと思っています。ここでまた、登場するのは、温泉法です。管轄の環境省のホームページを見てみますと、療養泉の定義が掲載されています。
温泉の定義だと水蒸気やガスも含んでいましたが、療養泉はそれらを除く温泉のみで、また、温泉の定義のミネラル19種類から一部へと絞られ、さらに量も増えております。
つまり、あるミネラル成分が、ある程度多く含まれていると、「療養泉」=治療の目的に供するもの、ということで、泉質名がつくのです。
|泉質名ってどんな?
日本における「温泉法」にのっとり、療養泉につけられる泉質名は現在10種類に分類されています。
”現在”と書いたのは、かつて日本の温泉法、鉱泉分析法指針は何度か改定が行われており(昭和23年、昭和54年、昭和57年と改定あり)、療養泉と言われる物質が外されたり、追加されたりしました。
平成27年には泉質名の付け方・温泉分析書の掲示義務等も変わったりしている経緯があります。9種類だった時もあるし、11種類だった時もあり、旧泉質名で書いているお宿もあったりもします。
現在は、10種類。そして温泉分析書の掲示は10年ごとのチェックによって新たな分析書に変更しなければならない。そのため、平成27年=2015年に変更されたこの法律では、2025年以降、全ての温泉提供施設での温泉分析書は新泉質名に変わっていく過渡期にある、と言えます。旧泉質名で書いているお宿があるのは、このためです。
|10種類の療養泉がある
さて、泉質名についてです。
単純泉・塩化物泉・炭酸水素塩・硫酸塩泉・二酸化炭素泉・含鉄泉・酸性泉・硫黄泉・放射能泉・含よう素泉の10種類となります。
これは、例えるなら、性格10区分、みたいなもの、血液型タイプ別性格、みたいなもの、、、、と思います。
温泉は、ひとつひとつ個性豊かであり、含まれている成分・ロケーション・提供している宿や温泉を経営しているひと・湯の提供の仕方は微妙にひとつずつ違うもの。同じ単純泉でも、隣の温泉の単純泉とはまた違っています。
これが、温泉ちゃんと呼びたくなるゆえんなのですが、
ひとりひとり個性があるように、
ひとつひとつの温泉にも個性がある。
そのことはお伝えしておきたいひとつです。
|効果に期待できる「適応症」と、こういう人は入っちゃいけない「禁忌症」
療養泉だと泉質ごとに、何に効果が期待できるのか?という「適応症」があります。
適応症は、泉質を問わず共通して期待できる効果をまとめた「一般的適応症」と、泉質ごとに違う「泉質別適応症」のふたつがあります。
まずは、温泉で期待できる効果 = 一般的適応症は・・・
・筋肉・関節の慢性的痛み、こわばり
・運動麻痺による筋肉のこわばり
・痔の痛み
・冷え性・末梢循環障害
・胃腸機能の低下
・自律神経不安定症やストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)
・疲労回復、健康増進
・軽い抗コレステロール血症
・軽い喘息・肺気腫
・軽症高血圧
です。これも実は温泉分析書に書いてあるのですが、いちいち読みませんね。これら全てに効果が期待できるもの、ということです。(たまには読んでみてください◎)
次に、泉質別適応症ですが、これも環境省「温泉療養のイ・ロ・ハ」や様々なサイトでまとめられています。ここでは環境省の「温泉療養のイ・ロ・ハ」から引用したいと思います。ホームページでも公開されています。
温泉に入る「浴用」、そして温泉を飲む「飲用」でそれぞれ異なる役割があります。
痛風持ちの方は、放射能泉に入ると効果が期待できる、とあるし、鉄分補給に含鉄泉を飲むと鉄欠乏症貧血を緩和できる可能性があります。
同時に、「禁忌症」もあります。
こちらも環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」が発刊されており、ホームページに記載されていますのでここから引用します。
上記の方々は、温泉にそもそも入っちゃいけません、っていうものです。
誰でも温泉は効果があるとは限りません。
こちらは、酸性泉と言われるすっぱいキシキシした温泉や、白濁や黄色・緑など様々な色を見せてくれる硫黄泉は、皮膚が乾燥しがちな高齢者・皮膚が弱い赤ちゃんは入浴するとさらに悪化してしまうため、禁忌とされています。
上記は、飲泉についての禁忌です。
ミネラルたっぷりの温泉は、飲む薬や硬水のようなものなので、量を超えるとお腹を下したり、持っている症状を悪化させることもあります。
また保健所で「飲泉許可」を発行している飲泉場でしか、衛生的だと判断されていません。この飲泉許可も、提供側が数年に一度点検をして取り続ける必要があります。
温泉は薬のような役割もありますので、自覚症状がある方や、中度〜重度の症状をお持ちの方は、必ずかかりつけ医や紹介してもらえる温泉療法医と相談の上、入浴・飲用をされてください。
・・・・とまあ、ご紹介するとめちゃくちゃ沢山実は規定やルールもあります。
温泉マニアな私としては、全部知りたいので勉強しましたが、「普段の健康体」で入る温泉ならば、このチャートを使って、自分のなんとな〜く感じている状態に合わせて、「温泉をチョイスできるんだな」「温泉をスタバみたいにカスタマイズできるんだな」というのが面白い視点だと私は感じて活用しています。
|10種類の泉質の違いを、スタバみたいにカスタマイズする
上記に示したのは「療養」での温泉の使い方ですが、病名が書かれていてTHE 湯治っぽい。
でも、温泉って、色が違ったり、匂いが違ったり、適応症や禁忌症だけで語れないものがある。
そこで、意訳してみました笑。
実際には、上記の通りのきちんとした裏付けがありますので、
以下の表は、「健康体の方にももっと温泉に親しみを持ちながら、知ってもらいたい」という観点で作っています。
上記の泉質一覧は、私の暮らす別府で、よく温泉講座や湯治講座をする際に使う自分の資料から抜粋してきました。
ランダムに一部、ご紹介していきます。
|夏こそ、硫黄泉
先ほどもご紹介した通り、肌の乾燥をさせてしまう役割があります。つまり、肌の油分を除去してくれている。ニキビの予防薬にもイオウが含まれていますね。またメラニンの生成を抑制してくれる役割もある。脂っぽくなったり、日焼けしちゃった夏のお肌ケアにはぴったりです。
|肌の弱い方が温泉を楽しむなら、単純泉
他の○○泉と名づけられるほど、成分ががつんと入っていないマイルドな温泉。赤ちゃん連れや、高齢者の祖父母といく温泉旅なら、単純泉をお勧めします。
そして、それでいて、単純な温泉と言うのは、単純泉に失礼な気がしております。。。。マイルドなんだけど、やっぱり個性があるものです。
|pH2.0以下の酸性泉はピーリング温泉
ケミカルピーリングは、pH2.0あたりの薬剤を使って、肌をむいていくケアをしますが、
ならば、pH2.0以下の酸性泉に入るって、え、ケミカルピーリング並みじゃん?っていうやつです。
私は、強酸性温泉に2泊したときには、粘膜が弱い手足、胸などがぴりぴりぽろぽろと剥けてきました・・・笑。シミケアに入りにいく時があります。
|ラップフィルム温泉と名付けたい塩化物泉
塩化物泉は、読んで字の如く、塩分が多い温泉です。
海のべとべと感はなく、さらっとしていて、
温泉なのでそもそもあったかいのですが、いつまでもぽっかぽかが持続するという保温の効果が増します。
塩のベールをまとう感覚、つまり、ラップを巻いたようにいつまでもぽかぽか感覚。ラップフィルム温泉と名付けたいです。(ネーミングが長いうえにわかりづらいw)
乾燥しがちな冬〜春、塩化物泉をチョイスしています。
全種類ご紹介したいくらいですが、ちょっと長くなるから割愛。
そんなふうに、それぞれの泉質によってある特徴を、
実際に入浴して確かめていく作業をもうここ数年行っています。
こんなふうに泉質をよく知り、使い分けることで、天然のエステのような効果を期待できるというのが、温泉のおもしろい魅力2つめだと思っています。
車で端から端まで40分以内であちこち行けてしまう別府にはこのうち、7種類の泉質が楽しめてしまうのが、すごいところ!
しかも、その温泉の数は源泉数だけでも約2,800本。(これが移住してきた理由のひとつ)2,800本の温泉ちゃん、ひとりひとりに会うのに、どのくらいかかるでしょうか?う〜!
温泉の魅力、温泉の秘密はまだまだ続く・・・!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?