追想 那須板室の旅③完結 【勝風館の食事と板室グルメ】
<前回はこちら>
勝風館は連泊すると段階的に宿泊費が安くなっていく。公式サイトでも10泊以上~、という価格設定があり、現在も湯治客が多いことを伺わせる。
私も過去何泊もお邪魔したが、こちらでは同じ献立を見たことがない。
公式サイトからの引用だが、ご家族のほとんどが調理師免許を有しており、山の幸をメインとして健康に配慮した献立を考えるそうだ。
週に一度炊き込みご飯が出るそうで、一回だけ有り付いたことがある。
いつも白米が入っているお櫃をパカっと開けてびっくり。配膳してくれた女将さん、特段何の説明もなくサラっと置いて行った。曜日固定なのか客数に応じてなのかは不明。
旅館は規模が大きくなればなるほど食事のメニューはパッケージ化される。以前連泊したとある伊豆の旅館、連泊しても前日とほぼ同じ料理だった。(※そもそも私の様に湯治をする人間自体が珍しいので、それを自体を否定するつもりはない)
かつては温泉を一興と考え、週末旅で様々な宿に泊まった。
祝い事となると、一泊三万近くする高級旅館にも。あれはあれで良い思い出だが、相応の満足感が得られていたかと振り返ると、今では若干疑問が残る。
そしてある時、何処の旅館に宿泊しようと大概決まりきった物しか出てこないことに気が付く。やがて温泉が治療になってくると、、山へ山へ。
偏狭かも知れないが、今思うのは結局は水と米、野菜が美味ければそれなりに満足してしまう(藪にらみか、、)。
昨年湯治した先で食したうまい物、印象に残っているものと言えばーー
長野県栄村の道の駅で食べたキノコ汁(単品250円だったか?)、新潟県石打塩沢のおにぎり屋の塩むすび(120円)、同新潟県松之山近くにあった湧水「庚清水」(FREE)、群馬県片品村の湧水「観音様の水」(FREE)、山梨県増富温泉三英荘の女将さんが自家菜園で引っこ抜いてきた無農薬キュウリ(PRICELESS)。
素養の問題だろうか。温泉も食事も、旅を重ねるほど安い方へ。
豪華な客室や懐石料理はなくても、私の食指が動くのは、家族経営の小さい宿。
勝風館は2食付で8,950円(消費税等込)。連泊になると1,000円ほど安くなる。ボロ宿を拠点とする私が泊まる宿の中ではハイグレードだが、一般的な温泉旅行の平均宿泊価格が15,000円と勘案するとかなり安いと言えるだろう。
Wi-Fiの強度も強く仕事をするにも全く困らない上に、痛みが治まるという湯治効果は代えがたいものだ。コスパの良い宿として、これからも通い続けることだろう。
板室で昼食を摂るならば、「手打ちうどん 翔」が良い。
温泉街からは少し離れるが、車であれば5分程で到着する。板室街道沿いにある民家で、事前に調べなければ絶対に辿り着かない。
ナビでセットしても尚、看板ものぼり旗も出ていないため通り過ぎてしまう。目的地近くなるとスピード落とし、三角の瓦屋根を目印に。若干狭い駐車場に車を停め。玄関に行くとやっと「営業中」の立板が出ている。店の中も畳の部屋にテーブルが4席のみ。本当にただの家のようだ。
どうしても観光地となるとそれだけで値段に色が付く。土地代が違うのでそれは致し方なし。だがこの店はそのアンチテーゼとも言える存在。
私は蕎麦屋やうどん屋で「天ぷら」を食べない。折角水と空気の美しい辺境地に行くならば、やはり地粉を使った麺に職人の辣腕を見せて欲しいもの。
余計なものを乗せず、「もりそば」、「ざるうどん」などで腹一杯満たしたいのだ。天ざるにしただけで価格が1.5~2倍近くなるのも、どうも腹に据えかねる。
だが「翔」だけは例外。
なんとこの店、もりうどん500円。天ぷらを付けても600円という破格の値段だ。それだけに留まらず、炊き込みご飯がデフォルトで付いてくる。
麺は極太でツルツル系、歯応えがハンパない。翌日顎が筋肉痛になるほどだ(ちょっと疲れる)。いりこかカツオの出汁を選ぶことができ、私はいつもカツオでいただく。薬味はわさびとネギ。
私はうどんも好きで香川まで旅をしたことがあったが、贔屓目なしにここのうどんは最高クラスに旨いと思う。この店はどこで儲けているんだ?と無用な心配をしてしまう。
何故か食べログの評価は低く、いつも空いている。那須湯本、塩原からも30分以内で着くこの店。是非近くにお寄りの際は真贋を確かめてほしい。
次はいつになるだろうか、那須板室の旅。
いつも同じ行程だが、何度行っても飽きが来ないゴールデンルート。
勝風館、炊き込みご飯が出るか否かは花占い。
『追想 那須板室の旅』おしまい
令和4年2月 記
<こちらの記事でも紹介>
宜しければサポートお願いいたします!!