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秋桜色のチーク


十月の花公園には、
すっかり秋桜の季節が訪れていました。

そこかしこに花が咲き、
辺り一面ピンク色に染まった風景は、もう
言いようのない美しさです。

園内には、
黄色い帽子の幼稚園児たちが
手を繋いでテトテト散歩をしています。
お友だち同士で出けにきているひと、
若い恋人たち、
ベビーカーを押すお母さんもいます。
めいめいが
この空間を楽しんでいる、
ゆったりした昼のことでした。

木陰にすわって休んでいると、
白いナチュラルなドレスの女性と
黒いタキシードを着た男性の姿を見かけました。
それから大きなカメラを肩にかけた方、
荷物を持った方も一緒です。

結婚式の前撮りでしょうか。

広い、広い空。淡い鱗雲。
秋桜の海。青とピンクの世界。
ひときわ鮮やかな秋を背景にした撮影に
私はつい、見とれてしまいました。





通りかかったご年配の夫婦が
撮影の合間の花嫁さんに声をかけました。

「あなたも秋桜がお好きなの?
あら、私とおんなじねえ。
今日はたくさんのお花に見守られて
素敵な一日になったでしょう。
ふたりとも末永く、お幸せにね」

「お似合いのふたりだ。お幸せに」


親しみのこもった、穏やかな声です。


「ありがとうございます」
若い花嫁さんは、丸い頬を
ほんのり秋桜色に染めて、
ほんとうに嬉しそうな笑顔。
花婿さんは、照れまじりのハニカミ顔です。

見渡す限りの秋桜の群れも、
若いふたりの門出を祝うように
やわらかく波打って
みんなで手を振っています。



「お幸せに」

なんてやさしい響きでしょう。

相手の幸せを願う気持ちが
あたたかい人付き合いの下地になる、と
思った秋の日のことでした。



これからもあたたかい記事をお届けします🕊🤍🌿