秋桜色のチーク
十月の花公園には、
すっかり秋桜の季節が訪れていました。
そこかしこに花が咲き、
辺り一面ピンク色に染まった風景は、もう
言いようのない美しさです。
園内には、
黄色い帽子の幼稚園児たちが
手を繋いでテトテト散歩をしています。
お友だち同士で出けにきているひと、
若い恋人たち、
ベビーカーを押すお母さんもいます。
めいめいが
この空間を楽しんでいる、
ゆったりした昼のことでした。
*
木陰にすわって休んでいると、
白いナチュラルなドレスの女性と
黒いタキシードを着た男性の姿を見かけました。
それから大きなカメラを肩にかけた方、
荷物を持った方も一緒です。
結婚式の前撮りでしょうか。
広い、広い空。淡い鱗雲。
秋桜の海。青とピンクの世界。
ひときわ鮮やかな秋を背景にした撮影に
私はつい、見とれてしまいました。
*
通りかかったご年配の夫婦が
撮影の合間の花嫁さんに声をかけました。
「あなたも秋桜がお好きなの?
あら、私とおんなじねえ。
今日はたくさんのお花に見守られて
素敵な一日になったでしょう。
ふたりとも末永く、お幸せにね」
「お似合いのふたりだ。お幸せに」
親しみのこもった、穏やかな声です。
「ありがとうございます」
若い花嫁さんは、丸い頬を
ほんのり秋桜色に染めて、
ほんとうに嬉しそうな笑顔。
花婿さんは、照れまじりのハニカミ顔です。
見渡す限りの秋桜の群れも、
若いふたりの門出を祝うように
やわらかく波打って
みんなで手を振っています。
「お幸せに」
なんてやさしい響きでしょう。
相手の幸せを願う気持ちが
あたたかい人付き合いの下地になる、と
思った秋の日のことでした。
これからもあたたかい記事をお届けします🕊🤍🌿