リエカ

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  • 文系大学院地獄絵図

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できない文系院生の悲惨な末路(106)

三流私大の学部生時代でもこのような着ぐるみを被るようなバイトしたことがなかった.まさ,正社員になって,それも名前だけは「大学」と付くようなところでまさか着ぐるみを着ると思わなかった.間違っても嫁にその姿を見られたくはない.  弁当を食べて午後も校門に立ち,来校者の案内を続ける.中には明らかに暇つぶしにくる地域の住民もいる.小さい子に風船を配る.大学ゆるきゃらのぬいぐるみの中がまさか大学の教員であることを小さい女の子は知る由もない.女の子は,Mくんが入っている着ぐるみを見て,

    • できない文系院生の悲惨な末路(105)

      さて,もっとも情けなく,そして地獄のオープンキャンパスが始まった.着ぐるみを装着したMくんは,正門の前でオープンキャンパスにくる高校生を出迎える. 新設されたばかりのZ大学はまずは,地元の住民にZ大学を知ってもらうという目的のため,対象の高校生だけではなく,地元の住民にもキャンパスを開放していた.オープンキャンパスとは高校生に大学が行っている教育,設備,入試情報を提供する場なのであるが,悲しいことに対象となる高校生よりも年寄りや子どもばかりである.おじいちゃんに手を引かれた

      • できない文系院生の悲惨な末路(104)

        職員:「M先生,サイズは問題ないですね」 と聞かれ,情けんなさもあり,小さな声で Mくん:「はい...」 と少々うなだれた.職員は続けて, 職員:「明日は7時半に集合して下さい」 と.前にも言ったがMくんの自宅からZ大学まで在来線と徒歩で1時間半以上かかる.乗り換えの時間を含めれば最寄り駅を5時台に出発しないといけない.妻の実家で頭を下げて,自宅に戻ってきた妻にオープンキャンパスで着ぐるみを被らないといけないので駅まで送ってとも言えず,当日は自転車で最寄り駅まで行く

        • できない文系院生の悲惨な末路(103)

          夏休みの重要な業務に高校訪問があることはすでに述べたが,夏休みに大学が行う行事にあと2つ重要なものがある.1つは,みなさんもご存じのオープンキャンパス,そしてもう一つは学生の親に対応する保護者会である.保護者会については,後日に譲るとして,今回はオープンキャンパスについて話そうと思う.  オープン・キャンパス,この文章を読んでいる人はどのようなイメージがあるだろうか?たくさんの高校生がメインキャンパスに訪れ,パンフレットを片手に思い思いの学部の説明会や模擬講義を聴講する.まぁ

        できない文系院生の悲惨な末路(106)

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          できない文系院生の悲惨な末路(102)

          もはや,自分より格下のやつらばかりだと思って参加した同窓会飲み会であったが,とんだ思い違いであることに気づいたMくん.実家に帰ってしまった嫁は,嫁の実家まで迎えに行き,針のむしろの中で義父・義母にいろいろ言われ, Mくん「頑張って,大学を移りますのでもう少しだけ長い目で見て下さいませんか」 と懇願し,義父からは Mくん義父「君は人生設計をどのように考えているのかね」 と聞かれたが何も答えられない.なぜならばMくんは,●●が研究したいとか,××を解明したいなど,本来の研

          できない文系院生の悲惨な末路(102)

          できない文系院生の悲惨な末路(101)

          嫁が実家に帰ってしまった.しかし,Mくんは常に自分に都合の良いように考えるので「自分は悪くない」と思っていた.そのうち,向こうから頭を下げて帰ってくるだろうと思いほっておいた. 気晴らしに大学時代の同期と飲みに行った.就職したあと,仕事の忙殺されプライベートな飲み会は久しく参加していなかった.そこで,たまたま声がかかったので参加してみた. 一応,就職しましたというハガキを出していたので,Mくんが大学の教員になったことは知っている.しかも,Mくんが出た三流私大では,大学教員

          できない文系院生の悲惨な末路(101)

          できない文系院生の悲惨な末路(73)

          推薦入試が志願者1名に終わったことを新婦のご両親に言い出せないまま,結婚式までの段取りがどんどん進んでいく.ちょっとgoogleで調べれば何でも分かってしまうご時世となっていたので,新婦のご両親もネットで大学の教員の給与などを調べ,中途半端な知識を身に付けてくる. 彼女父:「Mくん,大学の教授というのは偉く高給取りなんだね.」 とか会うたびに言ってくる. Mくん:「い,いぇ,大学によると思いますし,僕は教授ではないので」 と歯切れの悪い返答に終始するMくん. 彼女母

          できない文系院生の悲惨な末路(73)

          できない文系院生の悲惨な末路(100)

          結局,2ヶ月半ある夏休みで1本の論文も読めず終わったMくん.ただでも知識が著しく不足しているMくんにとって長期休暇中に論文,あるいはMくんのレベルではテキストから読み直すことなどいろいろとやることがあるのだが,Z大学がそれを許さなかった.交通が不便な隣県の担当を押し付けられたため,1日6校などという効率的な高校訪問はできず,場合によっては1日1校に訪問して帰ってくる日など複数あった.高校側も夏休みであるため,進路指導の先生が必ずしも在校しているとは限らず宿直当番で来ている先生

          できない文系院生の悲惨な末路(100)

          できない文系院生の悲惨な末路(99)

          在学者数が20名を切ったZ大学は夏休みに入った.学生は夏休みに入ったがMくんたち教員に夏休みはない.通常は講義や会議で忙殺される大学の教員は夏休みを利用して,論文を読んだり,調査に行ったりする.しかし,Mくんたちに研究する時間などない.なぜならば,学長からよりハードな高校訪問の指令が下ったからである.  Z大学では同一県内では,特急列車を使ってはいけないという学内規定がある.(具体的な県名を書いてしまうと,すぐにZ大学がどの大学か分かってしまうので書けない.z大学は兵庫県にな

          できない文系院生の悲惨な末路(99)

          できない文系院生の悲惨な末路(98)

          1年生の前期で退学者が出てしまい,学年の在籍者数が20名を切ったZ大学.さすがに学長,学部長の役職者だけではなく,全教員がZ大学はやばい,5年もたないかもしれないと思い始めた.  前期最後の教授会が終わった後,Z大学の教員の暑気払いがささやかに行われた.しかし,学生数が教員数を下回るという異常な事態が報告されたあとに行われた懇親会など盛り上がる訳がなかった.会費3000円を払ったものの出てきた料理は唐揚げやフライドポテトなどの揚げ物ばかり,飲み物もビールか焼酎だけであった.目

          できない文系院生の悲惨な末路(98)

          できない文系院生の悲惨な末路(97)

          25人しかいなかった新入生,しかも試験では女性器のイラストをでかでかと描くような子ばかりでなるZ大学の新入生.しかし,Z大学にとってはそんな新入生たちも年間120万円を納入してくれる貴重な金づるなのである.  しかし,よく考えて欲しい,都心から在来線で2時間半かかる田んぼの真ん中にある大学で楽しい大学生活など送れるはずもない.テニスサークルだってダブルスには4人いるし,野球だって紅白戦をするのに18人はいるだろう.ラグビーに至っては女性をメンバーに入れなければ試合にでれない.

          できない文系院生の悲惨な末路(97)

          できない文系院生の悲惨な末路(96)

          正式に大学教員になっての教壇に立ち,自分なりに講義準備もして臨んだZ大学の講義であったが,合格,それも可が1人という惨状に終わった.弛緩監督を終え,答案を事務で数えてもらい採点のために受け取るのであるが,枚数を数えてくれた女性の教務課職員が,Mくんが渡した答案で,でかでかと女性器のイラストが描いてある答案をみて絶句した.Mくんも情けないやら恥ずかしいやらで愛想笑いするしかなかった.そしてその他の答案もプロ野球選手のスターティングメンバーの羅列やそもそも何も書いていない白紙答案

          できない文系院生の悲惨な末路(96)

          できない文系院生の悲惨な末路(95)

          先月の学会の懇親会で,Z大学の常識が他の大学の常識と大きくかけ離れていることを知ったMくん.今度こそ,大学の教員になり,周りの門下生と同等になったと思っていたのに就職した大学のヒエラルキーも大学院時代の門下生のヒエラルキーと同一であったことに愕然とした.みんなを見返すためにはオレも早く大学を移らなければならないと思うMくんであったが,いかんせん実力が伴わない.ただでも論文を書く能力が劣っているのに,高校訪問をはじめとする学内の業務で人一倍時間を確保しないといけない研究時間が人

          できない文系院生の悲惨な末路(95)

          できない文系院生の悲惨な末路(94)

          どこの大学でもやっていると思っていた高校訪問.Mくん以外の門下生はやっていなかったのである.後輩Hくんが, Hくん:「何で大学の教員がそんなドサ回りしなきゃならないのですか?」 と言ってきた.周りにいた教員になった同じ研究室のメンバーも「プッ」と笑ったように見えた.しまった,Z大学の常識は他大学の常識ではなかったのである.同期のKくんも K君:「Mくんも大変だね.研究時間とかあるの?」 と聞いてきた.もちろん,そんなものはない.「ない」と答えると,K君 が Kくん「Z

          できない文系院生の悲惨な末路(94)

          できない文系院生の悲惨な末路(93)

          結局,学会の事務局として受付にいたため報告やシンポジウムには参加できずに初日が終わってしまったMくん.受付の片づけをして,事務局の荷物をまとめて車に掘り込み,遅れて懇親会場に向かった.懇親会は既に始まって30分が立っていたので会長や大会実行委員長の挨拶も終わり,それぞれが歓談していた.Mくんも近くのテーブルにあったビールの残りをグラスについでキョロキョロ.奥の方で同期のKくんや後輩のHくんの姿を見たので寄ってみた. Mくん:「いや,Kくん,Hくん,久しぶりやね」 と友達の

          できない文系院生の悲惨な末路(93)

          できない文系院生の悲惨な末路(92)

          端から見れば,教員になったにもかかわらず院生のような仕事をさせられているなんて,とても情けないことではあるのだが,同期や後輩たちとの比較を除けば必ずしもMくんにとって悪いことばかりではない.  それはお手伝いの学生に対してはよりパワーアップして上から目線で話せることである.既に書いたことであるが,Mくんがこの学会の雑用をこなしているのは,普段大学院で最下層にいるため,周りからバカにされているため,自分より下がいないのだが院生ということで学部生に偉そうに指示することで快感を得ら

          できない文系院生の悲惨な末路(92)