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できない文系院生の悲惨な末路(98)

1年生の前期で退学者が出てしまい,学年の在籍者数が20名を切ったZ大学.さすがに学長,学部長の役職者だけではなく,全教員がZ大学はやばい,5年もたないかもしれないと思い始めた.
 前期最後の教授会が終わった後,Z大学の教員の暑気払いがささやかに行われた.しかし,学生数が教員数を下回るという異常な事態が報告されたあとに行われた懇親会など盛り上がる訳がなかった.会費3000円を払ったものの出てきた料理は唐揚げやフライドポテトなどの揚げ物ばかり,飲み物もビールか焼酎だけであった.目の前にはあの態度の悪いYも座っている.こんな大学でも年功序列的なものがあり,Mくんら若手教員が年配の先生にお酌をして回らなければならない.ビールを注いで「ハイ,さよなら」ならいいのだが酒の入った年配の教員はZ君たちに説教を垂れる.

年配の教員:「君たちは若いんだからこんなとこにいちゃいかん」

などとぬかすのである.Mくんだって,こんなところ1秒たりとも委託はないのであるが,ここしか就職できなかったのである.それにZ大学を抜け出したいのはやまやまであるが,夏休みも100校近い高校を訪問し,募集活動を行わなければならないのである.あんたに言われなくても分かっているよと言いたいところであるが,そこはぐっと我慢をせざるを得なかった.
 一通りお酌が終わり自分の席に戻ると,唯一と言っていいめぼしい食べ物である刺身がカピカピに乾燥してしまっている.年配のおっさん教員は別の大学や役所を定年後にZ大学にやってきているので学生数が少なくても5年ぐらい大学が存続すれば,自分たちは年金生活者になるので十分なのである.しかし,子どもが生まれる予定のMくんにとって勤務校が5年で閉校になってしまっては困るのである.
 最後は学長が,締めのあいさつで,

学長:「みなさん,このZ大学を○○県のスタンフォードにしましょう」

とか,訳の分からないことと言っている.そして,

学長:「皆さんご唱和を,Z大学の発展を祈ってばんざーい」

と言い出した.こんな状況で大学が発展する訳ねーだろうと思いながらもMくんは万歳を三唱した.こうしてまったく何のメリットもない飲み会が終了した.ふざけたお気楽ジジィ教員は「2軒目に行くぞ」とかほざいている.Mくんは予め持ってきたドギーバッグに残った料理を詰めて,JRの駅まで相手,2時間かけて帰宅した.帰宅した時,時計の針は12時を回っていた.


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