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できない文系院生の悲惨な末路(93)

結局,学会の事務局として受付にいたため報告やシンポジウムには参加できずに初日が終わってしまったMくん.受付の片づけをして,事務局の荷物をまとめて車に掘り込み,遅れて懇親会場に向かった.懇親会は既に始まって30分が立っていたので会長や大会実行委員長の挨拶も終わり,それぞれが歓談していた.Mくんも近くのテーブルにあったビールの残りをグラスについでキョロキョロ.奥の方で同期のKくんや後輩のHくんの姿を見たので寄ってみた.

Mくん:「いや,Kくん,Hくん,久しぶりやね」

と友達のように声を掛けてみた.KくんとHくんは,二人で顔を見合わせ,「何だ?こいつ」的な表情をした.昨年までは研究生の身分で先方は大学教員という立場で遠慮があったのだが,今年は違う.俺も大学教員だという自負を持って話しかけたのにそのような顔をされたのである.普通であれば,その表情を見て,すぐに退散するのであろうが,自分も彼らの仲間に入りたいと思う一心で,食い下がって話かける.

Mくん:「いやぁ,大学の教員もなってみると大変ですよね」

と,自分が大学に就職したことをアピールしながら話かける.既に書いたが,KくんもHくんもMくんが大学に就職したことは知っている.なぜならば,彼らのもとにもMくんの歓送会のメールが来ていたからである.東京にいるHくんはともかく,Kくんはすぐに来れる場所の大学に就職しているにも関わらず出席しなかった.そして,あの寂しい4人だけの歓送会となったのは読者の皆さんも覚えているであろう.

Kくん:「Mさん,大学で何しているんすか?」

と聞いてきたので,

Mくん:「いやぁ,初年度の入試が大失敗で新入生が25人しかおらず,高校訪問ばっかりだよ」

と自虐的におどけて見せた.そこでKくんとHくんはきょとんとした顔をして,

Hくん:「何?高校訪問って?」

と聞いてきた.どうやらH君の大学では高校訪問をやっていないようで,Hくんもその業務の内容にピンとこないのである.

Mくん:「いやぁ,高校の進路指導の先生を回って,受験してくれるしごとだよ」

と説明した.そこでKくんが,

Kくん「Mさん,何言っているんすか?Hさんの大学はMARCHの1つですよ.そんな仕事ある訳ないでしょうに」

と半ば嘲笑気味にしゃべってきた.Mくんの知っているのはいま自分が勤務しているZ大学だけなので,それがデフォと思っていたのだが,どうやらすべての大学が高校訪問をしていなことをこの場で知ったのである.


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