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できない文系院生の悲惨な末路(97)

25人しかいなかった新入生,しかも試験では女性器のイラストをでかでかと描くような子ばかりでなるZ大学の新入生.しかし,Z大学にとってはそんな新入生たちも年間120万円を納入してくれる貴重な金づるなのである.
 しかし,よく考えて欲しい,都心から在来線で2時間半かかる田んぼの真ん中にある大学で楽しい大学生活など送れるはずもない.テニスサークルだってダブルスには4人いるし,野球だって紅白戦をするのに18人はいるだろう.ラグビーに至っては女性をメンバーに入れなければ試合にでれない.
 学生時代は勉強もそうだが,こうしたクラブ活動や授業後のアルバイトも立派な社会経験となるのである.もっともZ大学に入ってくる子たちは勉強が大嫌いで,高卒で無職になるよりはと,高校の進路指導の教員に押し込まれてきた子たちばかりである.アルバイトだって大学生定番の家庭教師のようなものができる訳でもなく,コンビニすら近くにないZ大学ではアルバイトもなかなかできない.
 結局,夏休み前の定期試験終了時点で,25人のうち6人が退学することになった.そのうち2人は入学式には来たものの,その後,一度も出校しなかった子だ.そして,Mくんの試験で,女性器のイラストをでかでかと描いた学生も退学者のリストに掲載されていた.新入生が25人,そのうち6人が退学してしまったことにより,Z大学の学生数は3ヶ月で19人と20人を割ってしまったのである.結果,Mくんたち教員の数の方が学生の数よりも多いという事態に陥ってしまった.
 どんなに鈍感な,というか目の前の事態から目を背けて都合よく解釈をして自分のメンタルを保ってきたMくんであっても,状況が非常にまずいことは認識できた.このままでは,いずれ廃校どころか,完成年度の4年を待たずに廃校になることさえあり得ると思った.そして,Mくんには緊急に大学から逃げ出さないといけない理由もあった.それは,Mくんの配偶者は懐妊したのである.こんな大学がどうなるか分からないような状況下で,避妊もせず子作りをするというところも全く計画性がないところはMくんの人生そのものであるのだが,こればかりはどうしようもない.生まれてくる子どもがものごごろつく頃に,お父さんは無職ともなりかねないのである.高校訪問などせずに異動するための業績を積まないといけないのであるが,大学側はそれを許さないのである.そんな八方ふさがりの状況がMくんを襲った.

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