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【読書ノート】『自分の小さな「箱」から脱出する方法』
本は読者に知識を提供しますが、本から得た知識が読者の経験と重なった時、読者は本から新たな気づきを得ることができます。
今回、紹介する本は『自分の小さな「箱」から脱出する方法』です。この本を読んで社長が気づきを得られるよう、記事にまとめました。ぜひ本と合わせてご一読ください。
本の紹介と内容
今回おすすめする本は『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(大和書房、アービンジャー・インスティチュート:著、金森重樹:監修/冨永星/訳)です。
この本では「箱」という暗喩を使って、人が持つ『自己欺瞞』と、その状態から脱出する方法を説明しています。具体的な内容は以下の通りです。
【自分への裏切り】
他の人のためにすべきことを避ける行動は、自分への裏切りと呼ばれます。
自分の感情に背くと、周りの世界を自分を正当化する視点から見てしまいます。
その結果、現実を見る視点が歪められてしまいます。
自分の感情に背いたとき、人は「箱」に入ることになります。
この「箱」という概念は、人間関係のさまざまな問題を説明するのに役立ちます。今回はこの本をベースに、仕事上でよく見る「箱の中の社長」について考え、組織内で「箱」の概念をどのように活用できるかを説明します。
「箱」の中にいる社長
「箱」の中にいる社長、仕事上でよく見かけます。
「なぜうちの社員は使えないんだ」
「社員のミスが自分の時間を奪っていく」
「社長は社員を養うために働いているわけではない」
このような考えを持つ社長はいませんか。
社員の多くは、会社を通じて、社会を良くしようとする社長の言葉に魅了されて入社したはずです。
その思いの下、会社の成長のために、一生懸命に仕事をする社員を『愚か者』『怠け者』と捉えて、社長である自分は、社員のために働かされている哀れな被害者であると思いこんでいる社長、あなたはそんな社長になっていないですか。
本書の素晴らしさ
本書は、端的に言えば「他者を思いやって行動しましょう」という内容です。しかし、それを「箱」というメタファーで視覚的に表現し、「思い・解釈」を「自己と他者の関係性」として自己認識させる点が素晴らしいのです。
問題や不都合なことが生じたとき、私たちは他者に原因を求めがちです。
社員であれば「社長が悪い」「上司が悪い」「顧客が悪い」
社長であれば「幹部が悪い」「スタッフが悪い」「顧客が悪い」
そのようなときに、「自分が他の人のためにすべきことを無視していないか」と自問することで、視点を「他者に問題がある」から「他の人との関係性をどうしていきたいか」に切り替えることができます。
「箱」というメタファーを導入することで、視点を切り替えるスイッチを提供している点が本書の素晴らしさです。
組織での「箱」の活用法
「箱の外にいる」とは、「自分が他の人のためにすべきことを無視していないか」で決まります。個人の場合、自分の価値観に照らして行動すれば「箱の外にいる」ことができますが、組織では価値観のズレが問題を引き起こします。
ある人にとっては「お客様のため」となる行動でも、別の人にとっては「お客様のため」ではないと感じることがあります。
このようなとき、組織で「箱」の議論を行う際、少人数なら問題ありませんが、大人数になると価値観の調整に時間がかかります。
これを避けるため、会社はミッション・ビジョン・バリュー(企業理念)を明文化し、これに基づく「ルール」を設定して社員に伝える必要があります。
例えば、「お客様のために」という価値観を持つなら、「お客様が来店した際には元気な挨拶をする」というルールを設けます。
このルールを守ることで、社員は「箱の外にいる」状態かどうかを確認できます。
組織の中で「小さな『箱』から脱出する方法」は、企業理念に基づく「ルール」を設定し、それを守ることで「自分が他の人のためにすべきことを無視していないか」を明確に判断できる状況を作ることにあります。
【まとめ】
今回のおすすめ本は『自分の小さな「箱」から脱出する方法』でした。
個人で「小さな『箱』から脱出するには、「自分が他の人のためにすべきことを無視していないか」を自問し、価値観に沿った行動を取る必要があります。
しかし、組織には様々な価値観を持つ人が集まっています。そのため、この「箱」の概念を組織で活用するためには、企業理念を明確にし、それに基づくルールを設定して守ることが大切です。
ルールには2つの機能があります。
道路に信号があり、交通法規があるのは、事故を起こさないため、つまり、お互いの認識のズレ(進むか、止まるか)をなくすためです。
そしてもう1つ、本書から私が捉える「ルール」の機能ですが、「自分の小さな「箱」から脱出し、会社という大きな「箱」の一員となること」、そして会社は、「会社という小さな「箱」から脱出し、社会という大きな「箱」の一員となること」。
すなわち、「自分が他の人のためにすべきだと感じたこと」を会社として明確にして、守ることで、自分が個人という小さな箱の内か外か判断する、つまり、この会社の一員であるという意識を作り出していくことに繋げることが「ルール」の機能としてあります。
本書では「自分が他の人のためにすべきだと感じたこと」「正しい価値観」が、全ての人に等しく備わっている前提で話しが進んでいきます。
しかしながら、人は、育ってきた環境、得てきた知識や経験によって、「正しい価値観」はズレるものです。
組織においては、「箱」という概念を「ルール」に置き換えて、組織内の価値観を踏まえた「ルール」を設定することで、不都合なことや問題に直面した時、組織のルールに照らし合わせて、どのように行動すべきか考え、実行することが望まれます。
この組織のルールがない場合、「社長が悪い」「社員が悪い」という他責に留まり、現実を見る目がゆがめられる、すなわち、解決に向かった行動が取れなくなります。
「箱」という概念を組織の「ルール」との対比で捉えて、私は、本書をこのように会社の問題解決に繋げていきます。
冒頭の抜粋を一部書き換えると、
【会社への裏切り】
「ルール」に背く行動を、会社への裏切りと呼ぶ。
いったん「ルール」に背くと、周りの世界を「ルール」の裏切りを正当化する視点から見るようになる。
周りの世界を「ルール」の裏切りを正当化する視点から見るようになると、現実を見る目がゆがめられる。
したがって、人は「ルール」に背いた時、箱に入る。
そして本書において、これには続きがあります。
ときが経つにつれ、いくつかの箱を自分の性格とみなすようになり、それを持ち歩くようになる。
自分が箱の中にいることによって、他の人達をも箱の中に入れてしまう
箱の中にいると、互いに相手を手ひどく扱い、互いに自分を正当化する。共謀してお互いの箱の中にいる口実を与えあう。
社長の会社は、ルールがないことで、会社の指示に従わない社員や、本来の会社の目的とは関係ないところで、派閥や集団が出来て、社員同士、いがみ合っていませんか。
こんな視点から、本書を読んで、気づきを得て頂き、会社の理念を明確にした上で、会社のルールを作って頂ければ幸いです。
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