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再び青。

あの日、確かに見失った青。
が、目の前の分厚い現実の向こうに、
ある気がしたから。

立ち止まって見上げた空が、必ずしも光らないというのは知っていた。そこに星々が無いということも。
でも足元を見ればスイセンは笑っているし、風は四重奏を奏でている。
落ち葉のカデンツァの真ッ最中、大気の先端の兆しを見た僕は、確かに、真黒な夜空に、鉛のような鈍い輝きを見た。

太陽が過去の僕を焼き尽くすと、青があると僕の期待を裏切って、まずは白が僕の網膜を鋭く刺した。
雨が一瞬降ったのは、そこがたまたま涙腺だったからだ。

雲の生まれる中天の、
つまり地球の胎内の、
そこで育まれるあまりにも多くの、
多くの——。


それらは青を隠しうる。
僕の線路を崩そうとする。
でも星々と繋がる、無限の空路があった。

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