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君の死

ぬかるんだ蛙の皮膚にある土色のような
気持ちで、君は淡々と呼吸をする
のを僕は傍から見ているが、どうにも
それが いのちの終わりに見えてしまって
引き結んだ唇は 人を痛めつけるような
言葉を一筋も 放つことはしなかった
と同時に、華奢な君のからだを、
守る言葉すらも 生み出さなかった
声の振動はやがてか細くなるが
君の世界はやがて暗くなるが
僕の世界はやがて寂しくなるが
その、確信 とでも言うものが
実感と言ってもいい、それが
どうにも湧かなくて
いつまでも君はそこに居続けていたし
僕は隣で本を読んでいた。
それが心地の良い空間であったし
太陽よりも僕を照らし出す記憶であって
例え君が居なくなったとして、
依然光をくれるのは変わらない、ので
まだ、そこのベットで寝ているものだと
思い込んでいる、だけなのだろうか

君の墓は存在しないし、
君の生前のアルバムも存在しないし、
君の好きな花も存在しないし、
君の愛した言葉も存在しない。
でも君がいなくなる前だってそれは、
何も変わらなかった。

今までいた君が居ないだけで、
この世界は昨日と同じで、
顔のない彼らにとってその変化は
微々たるものだから

僕がそれほど哀しみに暮れていないのは
君への思いが、彼らと、同じ程であった
のでは無いか、と思うと、
胸が苦しくなる、呼吸が浅くなる、
所詮僕は人一人、幸せに出来ないし、
愛することすら、出来ない存在、
だったのだろうか?

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