例の応募作の原文(第2部のつもり⑦)
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卒業式の数日後、私を含む38期卒業生の上位入賞者各科3人は奨学金授与の諸手続きのために芸校に出向いた。昼前に霧雨が降ったが寒くはなく、校舎がある丘は靄に包まれていた。ふわふわするような穏やかな空気の中を、私と青海君、そして三席の平尾君はゆっくり歩いて学校に向かった。
「ついこの間卒業式を終えたばかりなのに、なんだか随分昔のことみたいだな」
平尾君が感慨深げに言った。彼も展覧会入選を目指して制作を続けるが、しばらくは挿絵画家としても活動したいという。卒業式を終え