例の応募作の原文(第2部のつもり⑧)
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12月。私は、陽子とともに新潟へ向かう鈍行列車の車中にいた。青海君の陸軍入隊が決まり、実家を出る前に婚約者の陽子および馴染みの仲間たる私に会いたい、今手掛けている作品を見てほしいから新潟に来ないか、と彼が手紙をくれたのだ。
今回の旅に、平澤君は同行しなかった。早くも富枝がおめでたとなり、もちろん青海君に会いたいが女房をおいて旅行できる状況ではない、と返事を出したそうだ。私は出発前に平澤君と直接会い、青海君への餞別を託されていた。我々は相談し、若い者が包んであげ