"本を読む"ということ

僕は本と、本屋さんが好きだ。
昔から紙の本にこだわって読んでいることもあって、電子を利用したことなんて片手で数えるくらいしかない。
アナログ人間というよりも、こだわりが強いだけだろうなあ、なんて考えてはいるけれど、紙の本を読み終わった後につく読み跡、紙とインクの匂い、目だけでなく、手で触れて感じる紙の本の質感に魅せられているのは確かだ。

とはいえ、最近は電子書籍のシェア率があがり、紙の本を買う人が減った、という側面もあって、「若い人は電子を選び、一定以上の年齢の方は紙を選ぶ」という認識がどこかあった。
ただ、実はデータを見ると必ずしもそうではなく、意外と若者の層よりも40代や50代の人がメインターゲットだったりする。
しかも売れているのはコミックだと少年マンガ、書籍だとライトノベルだった。
まずここで自分がバイアスに支配されていたことを思い知り、反省した。

ではなぜ、そのあたりがメインになっているのか、を深掘りしていくと、自分なりに一つの共通点にたどり着いた。

それは『対面で買いにくい本』というところだ。

もともと少年マンガやライトノベルのターゲットは小~中学生あたりだ(少なくとも自分の周りはそうだった)
そこでそのジャンルの面白さに気づいた人がそのまま歳を重ねているだけな気がするのだが、世間は「若者向け」という認識だけが残る。世間の認識のターゲットは歳を重ねてはくれないのだ。

平たく言ってしまうと「若者向けの本を読んでいる大人」という図式ができあがってしまう。

本屋さんで購入をすると、どうしても周りの目(書店員の目)を気にしてしまって、「大人なのに」と思われているかもしれないから買いにくい、みたいな思考になってしまうような気がする。

実際に、病気や健康に関する本も、対面で会計をすると、それについて悩んでいると思われることが嫌だ、とネット書店等を利用する方もいるという。
この話を聞いた際、たしかに繊細な人が多い社会の中では、不思議ではない考え方だと思った。

俯瞰で見ると「気にしなくていいのに」なんて笑い飛ばしてしまいそうにはなるが、当事者だとそうはいかない。

もしかすると、そんな背景もあって、対面で買うものを提示する必要がなく、どんな本を持っているかを家族含めた周りに知られることなく読める電子書籍を利用する人もいるのかなあ、なんて考えていた。

それと共通して、年齢によって読むのがふさわしくない本が世間の目から決めつけられてしまっている危うさも感じている。

自分自身も、高校生の頃に参加をしたビブリオバトルで、いわゆるライト文芸と呼ばれるものをテーマに発表をした時に、審査員の1人から「そのような若者向けの本は私は絶対に手に取らない」と言われたことがある。

そもそも、”若者向けの本”なんてものはないのに。自分の知らなかったジャンルをそう勝手に定義して避けているだけなのに、まるで「そんな幼稚なものを読むな」と言われたようで、悔しくてたまらなかったのが今でも脳裏に焼き付いている。
ただ、これが”世間の認識”なのだろう。

人の好みも、読書歴、傾向、熟練度もそれぞれなのに、なんで「子ども向け」、「大人向け」とか括ってしまうんだろう。
本を読むのが苦手だという大人に対して、社会人だからと年齢だけで判断をして、分厚いビジネス本を読ませるのか。
読書が好きでたくさん本を読んでいて、好奇心旺盛な子どもが、背伸びをして少し難しい内容の本を読んでいることに対して、この本はダメだ、と取り上げるのか。
本来、読書は自分が読みたい本を読む行為を指すはずで。
誰がどの本を読んで面白いと思っても、つまらないと思っても、別にいいじゃないか。
人が純粋に抱いた感想に対して、周りが文句を言ったり、否定する権利なんてないのに。

自分にとっての良書なんて、自分が決めるもの。

自分の好きな本を、好きなように読めばいい。

読書の醍醐味なんて、そういうことじゃないのかなあ、なんて偉そうに講釈をたれながら、電子書籍に対してバイアスがかかってしまっていた自分を猛省している。


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