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事前情報なしで読む小説の面白さ

noteに定期的に文章を投稿するようになり、1年が経った。心身不調のリハビリとして始めたこともあり、この1年はあまり積極的にフォローできないでいた。私のフォロー数は、心身の健やかさの度合いを示している。

それが最近、ようやく余裕が出てきたか、人様の記事も読むことができるようになってきた。

もとより、いいねを下さった方のnoteは見に行っていたが、自分から開拓をしに行くことは少なかった。今までnoteは筋トレ的な使い方をしてきたのだが、自分の記事を上げる一方でバランスが悪かった。人様の記事を能動的に見に行けるようになって、また別の筋肉が発達しそうな予感がしている。

ひたすらに個人的なもの、読者の存在を少しばかり意識したもの、誰かが読んでいる前提の作り込まれたもの、幅広い趣旨の文章がこのnoteという場に集っている。

その人と実際にお話しでもしているようにリラックスして読めるものもあれば、古の頸椎ヘルニアに障る姿勢になってしまうくらいの、重量感あるものもあった。

すごく恥ずかしい話をすると、最近まで、著名ではない方の文章を読むことに少し抵抗があった。日記やエッセイはそうでもないのだが、特に小説に対してはその抵抗感が強かった。

一度読み始めると途中で辞めることができない性分のため、読むのに時間がかかる小説は少しハードルが高かったのだと思う。

しかし、先週の日曜日。何やらふと思い立って、前々から面白そうだなと感じていた方の小説を購入してみた。

それがこのあくたんさんの、蒸留。
短編小説ということと、漂う理系臭になんだか惹かれたのだった。

あくたんさんは、芥川心之介さんという名前で純文学小説をかかれている。
小説を、特に純文学を好きな方であれば、あの芥川龍之介と一文字違い、ということに引っかからない人はいないだろう。

まあ、結論から言うと、そんな苗字が一緒だのなんだのと言う話は大変にどうでもよくなるくらい、この蒸留という小説はめちゃくちゃ面白かった。
300ポイントなので420円だった、安すぎる。420円?安い。破格だと思う。

全体的にひんやりした不気味さがあった。でもそれは別に重たくなくて、あくまでも軽やかな不気味さだから不快じゃない。でも最後まで残るような消費できない感じもある。個人的にかなりはまってしまった。

そもそも、蒸留っていう言葉の理解が曖昧だったので、Wikipedia。

蒸留(じょうりゅう、蒸餾、蒸溜、英: Distillation)とは、液体を加熱して、出てくる気体を冷やして再び液体にして集める方法をいう。

Wikipedia

(多分)文系の私にはちょっとわかりづらい。もう一つサイトを見たらこれでなんとなく腑に落ちた。

蒸留は、混合物を加熱した際の成分の沸点差を利用し、液体の分離・純化を行う方法です。
混合物を加熱し、得られた蒸気を冷却して再凝縮させることで、成分ごとに異なる沸点を持つ液体を分離します。

イハラニッケイ化学工業株式会社

蒸留は混合物を分離させて、純化(何も混じってないもの)する目的で行うらしい。それで言うと、人間も相当な混合物だから、もし人間も蒸留できたら、複雑に見えてることもフラットになるのだろうか。

この小説では、出てくる人物たちの純な部分みたいなものが、浮かんでくるような作用を感じた。でもやっぱり日常は不純なもので溢れていて、純なものはほんの僅かであることのやっぱり感と、滑稽な感じがちょっと可愛く思えたりもした。

読み始めた時、若干の尿意を感じていたのだが、気付かぬふりをしてついに最後の最後まで尿意を持ち越し、読み切った。勿論、読んだ後に便所に行くわけだが、便座でめちゃくちゃ浸った。面白かった。

なんの前情報もなく小説を読む面白さたるや。ネットに情報が溢れている時代だからこそ、無駄な情報を自分なりにザルにかけて、「面白そう」と思える自分のアンテナにひっかかるものだけにフォーカス当てて、もっと貪欲に突っ込んでいこうと思った。これも一種の蒸留かもしれない。

つい、何かの受賞作とかノミネート作とかを手に取りがちな自分の未熟さが浮き彫りになった。でも気になるものは気になるで良い気もする。
それはそうとして、もっと自分の興味に素直に向き合おうと思った。

蒸留、読めてよかった。

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