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購入から10年経過した自転車のオーバーホール◎2024年05月29日更新

広島県広島市にある『動く自転車屋』『自転車の便利屋』サイクルサービストグトのnoteをご覧いただきありがとうございます。

こんにちは、アシスタントJです。
丁寧な仕事で定評のある当店の変態メカニック、ノーリー店長のオーバーホール作業の様子をお届けします。
バラ完組のようなものですが、工数はバラ完組より圧倒的に多いです。


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当店は出張修理等が多いため、決まった店休日や営業時間という概念がありません。
他店様が営業していない時間帯でも予約制にてご依頼等を承ります。
また、当店にて自転車の販売(防犯登録含む)も行っておりますが、他店様にてお買い上げの自転車の組立や点検及び調整、修理やカスタマイズ、オーバーホール等のアフターケアも大歓迎です。

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■今回の車体はコチラ

【RITEWAY】SHEPHERD IRON(年式は2013年前後と思われる)

ブラケットブレーキだけでなく、サブブレーキレバーも付いていました。
あらゆるポジションでブレーキを使えるというメリットがありますが、ハンドル周りのアクセサリー(ライトとかベルとかサイコンとか)を取り付けるスペースが制限されるというデメリットがあります。


もともとベルが付いていたコラムスペーサーです。

フロントブレーキシューは残量が無いため交換します。

リアブレーキシューは残量がありますが経年劣化(ひび割れ)があるので要交換です。

リムブレーキ採用モデルはどうしてもリムが汚れます。

スプロケットもチェーンも錆びていました。

チェーンリングも錆びていましたが、意外と摩耗はしていませんでした。
そのうちチェーン・スプロケット・チェーンリングはまとめての交換となりますが、今回は予算の都合で駆動系は再利用予定です。

さすがにワイヤー類は全て交換となります。

サドルはとても良い状態です。
シートポストは固着していませんでした。

写真ではわかりにくいですが、トップチューブに打痕があります。
しかしスチールフレームなので問題無いと判断されました。

スチールの魅力はとにかく頑丈であることです。
一方、錆びやすいというデメリットもあります。

ペイントにサビが混ざってきています。

これまでユーザーさんとともに過ごしてきた大切な愛車。
必要箇所全てを一度に全部やるのは予算の都合上、無理な場合もあるかもしれません。
そこで当店ではプロとしての見解をお伝えし、優先順位を付けて計画的に愛車を直していくことも提案もしています。
できるだけ予算の範囲でできることを目標としていますが、安全上の理由で予算を上げる提案もするので、事前のヒアリング(打ち合わせ)は本当に大切です。
その辺りは店長にお任せ下さい。

■洗浄・分解

打ち合わせで決めておいた、再利用しない部品はできるだけ早めに取り外します。

それから洗車(車体全体の下洗い)です。
下洗いが済んだら普段は外からでは判断できない部分のチェックのため、分解作業をしていきます。

BBシェルの状態はこんな感じでした。

サビも汚れもそれなりにあります。

BB本体にも汚れが蓄積していますが、回転は悪くないです。

リアホイールのブリーボディーは錆びていて、ハブ全体も汚れています。

スプロケットもサビと汚れが混在していますが、歯はそんなに劣化していません。

ヘッドベアリングも開けてみてから交換か再利用かを判断します。

グリスが切れかかっていますが、交換ではなくオーバーホール作業で再利用できそうです。

■洗浄・下処理等

全てを徹底的に洗浄・下処理できればベストですが、近日中に交換が必要な部品にコストをかけてもユーザーさんにはあまりメリットがありません。
ユーザーさんのご要望をヒアリングし、サイクルライフ全体を考慮した提案をするのが店長のやり方です。

シートチューブの上端をわずかにテーパー状にすることで、シートポストの脱着によるキズ発生をできるだけ防ぎます。

フレームをしっかり洗浄する前に、雌ネジをリタッピングしてねじ山の精度を上げます。

キャリアダボ、フェンダーダボも抜かりはありません。

ダブルレバー台座もリタッピング。

とにかく工具が届く範囲はもれなくリタッピングしていきます。
地味な作業です。

せっかくのJIS規格BBシェルなので、こちらもリタッピングします。

サビ等によって精度が落ちたねじ山を良好な状態にします。
しばらくはBBをアップグレードする予定は無いとのことで、ペイントもいい感じで残っているのであえてフェイシングは無しです。
このあたりも打ち合わせ決めてあります。

フロントフォークのダボもリタッピングを忘れません。

各種下処理が済んだら、改めて徹底洗浄していきます。

全ての汚れを落とせるわけではありませんが、汚れの種類によって洗浄剤を使い分けるのも店長のこだわりポイントです。

エアーコンプレッサーも駆使し、フレームをしっかり乾燥させます。
その後、各パイプ内部にグリススプレーを噴射して油膜を張り、そう簡単にはサビを進行させません。

フロントフォークコラムのサビは磨いてなるべく落とします。

サビの程度によっては完全に落とすことができない場合もありますが、今回はちゃんと落とせたようです。

細かいパーツもしっかり洗浄していきます。

ブレーキ本体を洗浄。

デュアルコントロールレバーも洗浄。
洗浄したら直ちにエアーコンプレッサーで水滴を飛ばし、注油等の適切な下処理をしていきます。

スプロケットはの洗浄は特に時間がかかる作業です。

シートポストはもちろん、シートクランプやその構成部品も分解洗浄します。

シートポストのさび落としです。

サドルクランプボルトも磨きます。

ヘッドパーツ等も可能な限り分解してから洗浄です。

ヘッドベアリングは乾燥させたらすぐにグリスアップします。
写真の状態から、さらにグリスを盛りに盛るのがトグト流です。
そう簡単にはグリス切れを起こさせません。

前後の変速機とBBも時間をかけてできるだけ洗浄していきます。

一度に汚れが落ちるわけではないので、洗浄とすすぎを何度も繰り返さなければなりません。

洗車だけでは落とせない汚れも多いです。

パーツをさらに分解することで、普段は手の届かない箇所も洗浄できます。
定期的にオーバーホールが必要なのも頷けますね。

それぞれが見違えるほどきれいになりました。
リンク部分への注油もしてあるので、動きも良くなっていると思います。

クランクセットやチェーンリングの汚れもなかなか頑固です。

おおまかに分解して下洗いをします。

さらに分解して洗浄、すすいで洗浄の繰り返しです。

可能な範囲でサビを落としてチェーンリングとクランクを戻します。

ハンドルバーには古いバーテープの跡がびっしり付いていました。
パーツクリーナーも使って除去し、洗浄剤でも洗います。

チェーンは特殊なケミカル類を駆使して洗浄し、乾燥させてからオイル漬けにします。
ユーザーさんによると、車体の保管場所が雨ざらしになるとのことです。
できるだけ環境に合わせて適切なケミカル類を使います。
こういう細かい配慮も店長なりのこだわりだそうです。
さすが変態。
ですが、ユーザーさんからは本当に好評です。

今回はホイールのハブもオーバーホールします。

リアホイールのハブを分解したところです。

フリーボディーにもサビの発生や汚れの蓄積が見受けられます。

フリーボディーを外したところです。

ハブはここまで分解し、洗浄をしています。

フリーボディーへのグリス塗布についてはいろいろな意見がありますが、このフリーボディーの場合は塗布しておくのがオススメだそうです。

玉受けもキレイになりました。

プレミアムグリスを徹底的に注入します。
グリスの消費量がエグいです。

ハブ軸側にある玉押しにもプレミアムグリスをたっぷり使います。

ガタが無く回転が見違えるほど良くなりました。

振れ取り作業です。

ホイール全体が右に寄ったり左に寄ったりしていないかチェックし、さらに調整を詰めていきます。

フロントもやることは同じです。

古いグリスに汚れが蓄積しています。

フリーボディーが有るか無いかの違いで、やることはリアとほとんど変わりません。

意外とベアリングも汚れるものです。

フロントハブの各パーツの洗浄が済みました。

ベアリングの状態からも予想していましたが、玉受けは部分的に錆びています。

玉押しへのグリスアップをしつつ、余分なグリスはハブ軸全体に馴染ませます。
これで錆びにくくしているそうです。

ハブベアリングに使うグリスはユーザーさん1人ひとり、というより車体ごとに使用状況や保管環境等に合わせて選んでいます。

出番が多いケミカル類とそうでないケミカル類があるのは確かですが、
「うちではこの作業にはコレ!」
とは決めていません。
店長がユーザーさんからしっかりヒアリングを行い、それに合わせて現状でのベストだと思うものを使い分けています。

通常、リムフラップは購入時点の状態で特に何もせず装着しても問題はありません。
それでも店長はリムフラップにも手作業でエッジを取り除いています。
「リムフラップが硬化した時にエッジ部分がトゲみたいになるから。」
だそうです。
思いやり整備ですね。

■組立開始

まずはフォークから。
ユーザーさんからヒアリングした保管環境に合わせ、適切なグリスを選びます。

クラウン装着完了です。
余ったグリスはコラムに塗って油膜を張り、なるべく錆びにくいようにしています。

部分的にサビは残りましたが、素手で触っても手が汚れないほどに汚れは落ちました。

ヘッドカップが入る部分には海水にも耐えられるようなグリスを使っています。

ヘッドカップが付きました。

快適長持ちさせるため、ここのグリスも溢れるくらいに詰め込んでいきます。
『塗る』というより『詰め込む』というほうが納得できるほどです。

この車体に使われているヘッドパーツの都合上、少し特殊な注意事項があります。
当店公式YouTubeにて解説予定です。

ユーザーさんからヒアリングした結果、BBシェルに使うグリスも海水に耐えられるものを採用しています。
完全に錆びないわけではありませんが、とにかく水に強くてグリスとしての寿命も圧倒的に長いです。

BB装着のために前後輪を仮付けします。

BBが付きました。

今回のフレーム仕上げ材は洗浄成分も入っている【SURLUSTER】ゼロフィニッシュを採用しました。

お手頃価格のコーティングですが、2ヵ月くらい雨等の水を弾いてくれます。

リアディレイラーハンガーのアライメント調整です。
この作業をやっておくことで、変速機の性能を最大限引き出します。

シフトアウターケーブル受けを装着する前に、サビ防止のグリスを塗っておきます。

シートチューブ内にもグリスをしっかり塗り込んでいるのは、サビ防止や固着防止のためです。

サドルを固定するヤグラにも下処理をしてあります。

リアディレイラーが付きました。

フロントディレイラーもずいぶんキレイになりました。

ブレーキ本体は再利用ですが、ブレーキシューは新品になりました。

ブレーキインナーワイヤーにも長持ちさせる下処理をしています。

ワイヤーを繋いだら動作確認と調整です。

リアディレイラーの調整が大きく狂っていたので、こちらでしっかり調整します。

チェーンもキレイになりました。
サビは落とせませんと言いつつ、サビも少し落ちているように見えます。

シフトインナーワイヤーに使うのは【SHIMANO】のケーブルグリスです。

全てのケーブルが繋がりました。

あとはバーテープを巻いてペダルを付けるだけで完成です。

■完成

カスタマイズではなくオーバーホールなので、見た目の劇的な変化はありませんが、よく見るとすごくキレイになっています。

当店ならバーテープの巻き終わりの位置もお選びいただけます。

青い車体にブラックとシルバーがいい感じのバランスです。
そしてユーザーさんがお選びいただいた各アウターケーブルのホワイトがいいアクセントになっていますね。

ブレーキの動きは別物のように良くなりました。

リーズナブルな価格の【PANARACER】(パナレーサー)PASELAは、補修用として人気があります。
日常のアシとして使う車体にオススメです。

ドライブトレインはキレイになりましたが近々交換予定です。
次のパーツを選ぶ時間も楽しみのひとつだと思います。

光の当たり方のせいでリアディレイラーが汚れているように見えますが、実際にはすごくキレイになっています。

フロントディレイラーもキレイになり、大部分のサビは消えました。

シートクランプのサビもかなり落ちています。

オーバーホールは済みましたが、近日中に要交換のパーツはまだまだ残っているため、パーツを選ぶ楽しみも残っています。

これまでに長く乗ってこられた愛車ですが、これからも長くお乗りいただきたいです。

■サイクルサービス・トグトを利用する価値

例えば車体のオーバーホールとなると、問答無用で消耗品を全て交換して後からユーザーさんに請求する店もあります。
結果としてはそれが最もお得な方法であり、長い目で見ればユーザーさんにはメリットが多いです。
しかし一度の支出額は大きくなり、覚悟していない支出が生じるかもしれません。
実際、他店様でトラブルになったユーザーさんも当店へいらっしゃいます。

当店でも他店様と同じように、まずは車体(実車)を見せていただかなければなりません。
そこで作業担当者(現時点では店長)が直接ユーザーさん愛車の使用用途や保管環境、ご希望をヒアリングし、作業内容を提案する方針です。
予算が大きく足りない場合は、優先順位をつけて消耗部品の交換や作業を提案し、ユーザーさんとしっかり話し合います。
店によっては受付担当者と作業担当者が異なる場合もありますが、作業担当者と話し合いがしっかりできるのも当店の強みです。

また、むやみやたらに新車への買い替えや高額商品を売りつけるようなことは店長の方針でしていません。
時間やコストを考えれば新車に買い替えるのもアリですが、修理して乗り続けた方がいい場合もあります。
結局はユーザーさんが愛車に対してどんな想いを持っているか?
それ次第です。
その想いもしっかりとヒアリングし、できるだけ汲み取るようにしています。

自店で購入した車体しかアフターケアを受け付けない店もありますが、当店では自店購入車体かどうかは重要視していません。
他店様で購入された自転車でも、個人売買で手に入れた自転車でも、合法的に入手&運用されている車体なら可能な限り受け入れています。
防犯登録のことも含め合法的に運用するためのお手伝いもしているので、自転車で困ったことがあればお気軽にご相談下さい。

★こちらも要チェック★

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