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オーバーホール兼カスタマイズにプロの技あり!■2023年12月01日更新

広島県広島市にある『動く』自転車屋【サイクルサービストグト】のnoteをご覧いただきありがとうございます。

身体は頑丈なのに、皮膚は貧弱貧弱ゥ!な『快適長持ち系自転車安全整備士』ノーリー(店長)です。
オーバーホール作業で手の皮膚はボロボロになりつつあります。
できるものなら自分の手をオーバーホールしたいものです。
無理ですが。


■今回のご依頼内容

購入してから数年の間、ほぼノーメンテナンスで運用していたというクロスバイク。
この度、フルオーバーホールをした上で、通勤快速仕様に仕上げたいというご依頼をいただきました。
通勤快速仕様と言っても、簡単な話ではありません。
お住まい地形と職場の地形、雨天時の運用方法、その他諸々の条件はユーザーさんによって異なるからです。
いつも通り、しっかりとヒアリングした上で作業方針を固め、ユーザーさんにご提案してみました。
当店ではユーザーさんとの話し合いにもしっかりと時間を使います。
そしてケイデンスとスピードがわかるようにしたいとのことで、【CATEYE】(キャットアイ)のストラーダスマートを採用されましたが、少々アクシデントが発生してしまいました。

設定自体は↑の通りにやれば問題はありません。
問題は車体の仕様との相性です。
そこでもプロの技を発揮しています。

■お預かり時点

★ブランド
【TREK】(トレック)
★車種
FX3(エフエックススリー)
★年式
不明

ヒアリングの時点で、ポジションの話し合いもしておきました。

シフトインナーケーブルはかなり錆び付いていました。

明るい所で見るとよくわかりますね。

サビは他にも…。

駆動系は比較的キレイな状態です。

ホイールにも使用感はあります。

ハンドルバーは交換することになりました。

理由は特殊な設計です。

車輪の固定は、リアはクイックリリース方式、

フロントはクイックリリースと見せかけて…

スルーアクスル方式です。

カギもこうしておけば便利ですね。

クランクの塗装剥がれは仕方がありません。

リアライトのブラケットのトゲは気になりますね。
ケガの原因になりかねません。

フロントライトのブラケットもケガの原因になりかねないので、できるだけいい感じにしましょう。

分解しようとして気付いたことがあります。
BBが手で緩む程度に緩んでいました。
点検や増し締めは非常に重要ですが、自転車にはそれだけでは手が届かない部分もあります。
だからこそ、オーバーホールも必要なんです。

■作業の様子(胸焼け注意)

◆フレームの下処理

これから先も長く乗り続けられるよう、しっかりと作業しておきましょう!

JISタイプのBBなので、まずはBBシェルからやっちゃいます。

念のためBBシェルを再タッピング!

ネジの精度を上げます。

さらに今後のカスタマイズも見据えてフェイシングやっておきます。

削りカスがたくさん出てきました。

ついでにボトルケージ台座のネジ精度も上げます。

他のボルト用ダボもやっておきましょう。

工具が届く場所ならこんなところも、

こんなところも…

こんなところもやっておきます。

今すぐには必要なくても、今後のカスタマイズを考えれば今やっておく方が得策です。

アクスルシャフトのかかりに違和感があったので、ついでにタップがけをしてみると、この問題も改善されました。
自転車の場合、最初の組立は同じ車種でも差が出ます。
どこで買うか、誰に組立を依頼するか。
これは多くの人に知られていませんが、とてつもなく重要なことです。

分解が済んだら洗洗浄していきます。

ここまで分解すれば、洗浄もやりやすくなります。

ホイールやタイヤもしっかり洗います。

フレームを洗浄して乾燥させたら、防錆工程です。

アルミとは言え、金属製なのでフレーム内部にも油膜を張り、できるだけ錆にくくしています。
アルミだから錆びないというわけではありません。
フレームも消耗品ですが、こうすることで長持ちしやすくなります。

◆車輪まわり

カップ&コーンタイプなのでホイールもしっかりオーバーホールしちゃいます。

まずはリアホイールから。

アクスルシャフトを抜いて、

ボールベアリングを取り出します。

積年の汚れに、Say グッバイ!

もちろん、カップ(ワン)も洗浄します。

両面とも抜かりはありません。

グリスは古く、変なニオイもありましたが、気になるような錆はありませんでした。

↑徹底洗浄した後です。

サビ防止にグリスを塗りたくっていきます。

全体にグリスを伸ばしながら適切に組み付けていきます。

ボールベアリングが当たる部分には【SHIMANO】のプレミアムグリスを使いました。

昔で言う『デュラグリス』ですね。

ちなみにフリーボディーは異常ありませんでした。

フロントホイールもハブの作業はほぼ同じですが、これは後ほど。

あとは振れ取り作業を行い、

センター出しもしています。

経年劣化により、リムフラップが硬化していました。

トゲになりそうな部分はハサミで整え、

念のためリムテープも貼ります。

外からでは決して見えない部分ですが、少しでも剥がれにくく、かつチューブへの攻撃性が無いように、

フチをハサミで整えています。
チューブド・クリンチャー仕様なら、当店でリムテープを貼る場合はこれが当たり前です。

硬化しているとは言っても再利用できるレベルだったので、リムフラップを戻します。
これで内側からの突き刺しパンクは生じないでしょう。

タイヤを組み付けたら長すぎるヒゲ抜きもしておきました。
このヒゲがフレームやフォークに当たることで異音の原因になるからです。

ちなみに、トレッドパターンをパッと見ただけでは指定が無いっぽいですが、実は回転方向の指定がありました。

バルブコアが緩んでいないことをチェックしたら、

バルブキャップを付けます。
バルブキャップは締めすぎ注意です。

比較的キレイに見えたスプロケットですが、汚れは溜っていました。

分解できるところまでは分解して、

できるだけキレイにしておきます。

サビが発生しにくいように、スプロケットを装着前に下処理をしてあります。

ロックリングのネジ部分には固着防止のためにグリスを少し付けておくのがオススメです。

いよいよフロントホイールです。

リアと同じように分解します。

フロントハブのグリスもけっこう劣化していました。

こういう部分も分解してみないとわかりませんね。

↑ボールベアリングに付着していた古いグリスをティッシュで拭っただけの応対です。

完全分解できる構造ですが、なかなか作業が進みませんでした。

原因はこのサビによる固着です。

なんとか完全分解できました。

専用のケミカル類でサビ除去を試みます。

ボールベアリングは大丈夫そうですね。

無くすと大変なので気をつけなければなりません。

ナット類のサビが落ちたので、洗浄してから『ヅケ』(オイル浸け)にします。

樹脂はヅケにはしません。

グリスを使いながら適切に組んでいきます。

このあたりもフロントと同じです。

滅多に分解しないので、今のうちにグリスをしっかりと注入していきます。

ユーザーさんのメンテナンス頻度や使用目的次第ではグリスを少なめにすることもありますが、そういうのはレアケースです。

通勤用に日常使いもするならとにかく長持ちが優先ですので、グリスははみ出るくらい使います。
はみ出たグリスは拭えばノープロォブレム!

ちゃんとキレイになりました。

後の作業のため、車輪を一旦装着します。

チェックのために仮付けしただけなので、ブレーキローターはこの時点ではまだ付けていません。

◆シートまわり

シートクランプにボルトのサビが移っていました。

シートポストも普段はわざわざ分解しないパーツのひとつです。

意外と汚れが溜っているものですね。

せっかくのオーバーホールなので、これもできるだけキレイにしていきます。

まずは最小単位まで分解!

洗浄して固着防止のグリスをうっすらと伸ばしていきます。

シートポストとシートチューブが金属製どうしなので、もちろん、シートチューブの中にもグリスを塗っておきます。

ピンもできるだけサビを落としてヅケにしてから組んでいます。

サドルを仮止めしてから、

フレームに装着し、サドルの角度を合わせます。
シートポストのテープは受付時点で決めたサドル高の目安位置です。

車輪をはめてから角度調整をします。

◆フレームの準備

掲載順が変わりましたが、当然ながらフレームやフォークの準備が先です。

スタンドのボルトやカギ用ブラケットのネジ類もまとめて外してサビを可能な範囲で除去し、

ヅケにしました。

キレイになって良かったです。

ここでも固着防止のグリスを使います。

ボトルケージ用ボルトにグリスを乗せたら、

精度上げしたボルト用ダボにグリスを届けます。

無事に残っていたダボ穴用プラグでフタをしておきます。

フロントフォークはもちろん、

フレームの全てのダボ穴にグリスを届けます。

ディレイラーハンガーは身長に組み付けないと後で大変なことになります。

スタンドもキレイになって装着できました。

◆ヘッドまわり

ヘッドベアリングも分解できるだけ分解してみました。

洗浄が済んでチェックしたところ、気になるサビや破損はありません。

ヘッドベアリングの回転部分にもプレミアムグリスを使います。

理屈はハブと同じです。

ここもグリスをケチりません。

これだけグリスを詰め込んだら、かなり長持ちしてくれるでしょう。

アッパーベアリングとロアーベアリングをキレイにしたら、

ヘッドチューブには粘度が高いグリスを使います。

そしてヘッドベアリングをしっかり圧入!

はみ出たグリスを拭い去ります。

◆ガラス系コーティング

ここまできたら、リクエストのあった【WAKO'S】(ワコーズ)バリアスコートの出番です。

吹き付けては専用クロスで刷り込んでいきます。

ちなみにマットカラー(ツヤ消しカラー)にバリアスコートを使うとどうなるか、お見せしましょう。

↑左側が未施工、右側が施工済みです。
ツヤッツヤになるわけではなく、濡れた感じの質感になります。

◆ハンドルまわり

ヘッドベアリングを組み込んだらフロントフォークの出番です。

ヘッドーパーツを適切に組んでいきます。

ハンドルバークランプやボルト類も洗浄済みです。

オーバーホール兼カスタマイズということで、フォークコラムは適切な高さでカットしています。

ハンドルバーは【TREK】の呪縛から解放されるため、そして軽量化のために交換することになりました。

通勤で歩道も通行できるように、ハンドルバーのカットをして断面も整えました。

◆駆動系

どうしてもサビが気になります。

全てを落としきれるわけではありませんが、

とりあえず洗浄から。

チェーンも洗浄して、

チェーンオイルをしっかりと浸透させるためにペットボトルに預けます。

チェーンのヅケができました。

余分なオイルは除去しておくことで、汚れが付きにくいチェーンになります。

ディレイラーも予め洗浄はしましたが、内部は分解しないと汚れたままです。

しっかりと汚れは落とせました。

気になっていたサビをできるだけ磨き落とします。

細々したパーツを正しく戻します。

しっかりとキレイになりましたね。

クランクセットももちろん洗浄します。

チェーンリングと右クランクが一体型なので大変ですが、とてもきれいになりました。

使用感はあるのに汚れは無い。
そういう駆動系パーツは見ていていい気分になれますよね。

フロントディレイラーを仮付け。

リアディレイラーハンガーの芯出しをしてからリアディレイラーも取り付けました。

カートリッジタイプのBBですが、できる範囲ではなんとかしたいものです。

古いグリスを除去した後、

プレミアムグリスをしっかりと注入しました。

BB自体も錆びにくいように、全体をグリスでうっすらとコーティングしてあります。

ヘッドチューブに使ったものと同じグリスです。

ネジの精度が上がっているので、スルスル入っていきます。

もちろん、締め付けはしっかりと。

クランクフィキシングボルトもキレイになりました。
固着防止のグリスを塗って、

クランクを組み付けます。

◆ブレーキ系

ブレーキローターに油分が付いていると厄介なので、1枚ずつ入念に洗浄します。

古いブレーキオイルも交換します。

けっこう黒ずんでいました。

ケーブル類フル外通(フル外装)タイプなので、先にブリーディング作業を済ませてから、レバーとブレーキ本体を洗うことにしました。

新品のオイルは薄いピンク色です。

◆もうすぐ仕上がり

隔離しておいたブレーキパッドを装着し、ブレーキローターもホイールに付けてから、ブレーキ本体の位置決めをします。

カギ用ブラケット内部に、シム兼滑り落ち防止にゴムシートを付けています。
これは廃チューブを再利用したものです。

安定感が良くなりました。

シフトインナーケーブルに専用グリスで下処理をして、

アウターケーブルに通します。

先端処理は当店独自技術の『MEF』で仕上げました。

チェーンを繋いでリアの変速調整、

フロントの変速調整も完了!

ペダルのサビは落とせませんでしたが、回転は良好です。

まだまだ使えるでしょう。

◆プロのテクニック

【CATEYE】(キャットアイ)のブラケットは便利ですが、長すぎるのがきになって切断してしまうユーザーさんは多いです。
しかし、切断の仕方によっては皮膚に刺さってケガの原因になります。

こうして切断した後に処理をしておけば安全です。

↑フロントライトのブラケット(ビフォー)。

↑フロントライトのブラケット(アフター)。
これでブラケットの突き刺しによるケガの心配はありません。

さて、残りはサイコンの取付だけですが、アクシデントが発生しました。

↑のようにクランクの裏側は平らでは無く凹んでいるので、このままだとマグネットを適切に取り付けられません。
使用しているクランクの形状と相性が良くなかったです。

またまた大活躍の廃チューブ。
これを丸めて枕にしてあげれば…

問題解決ッ!
ゴムなので滑りにくいというメリットもあります。
裏側なのでヴィジュアル的にもあまり気にならないでしょう。

■完成ッ!

アクシデントもありましたが、無事に完成しました。

と言っても、ヴィジュアル的な変化はあまりありません。

コックピットまわりは元の配置を活かして、サイコンのディスプレイやベルの配置を決めました。

それぞれの必要なものが邪魔しないような配置です。

ハンドルバーは【SIXTH COMPONENTS】のライザーバーで、快適性を残しつつ軽量化しています。

グリップはそのまま再利用なので、エンドプラグは別のものを付けました。

リアライトのブラケットはスッキリとさせつつ、先端に触れても刺さることはありません。

サビは残ったものの、キレイになったペダル。

フロントディレイラーやクランクセットも、

リアディレイラーも、

スプロケットもチェーンもキレイになりました。

ハブもキレイになっています。

ブレーキ本体もかなりキレイになりました。

タッチも非常に軽やかです。

シフトインナーワイヤーの先端処理を『MEF』にしたのは、通勤時に先端がパンツに当たってもダメージを与えに無いようにするためです。

ケイデンスセンサーとマグネットの位置関係も良好です。

スピードセンサーとマグネットの位置関係も問題無く、それでいてブレーキホースのルーティングにも影響を与えていません。

今回はあくまでもフルオーバーホールがメインだったため、見た目の変化はほぼありません。
しかし、納車の際にユーザーさんにその場で少し乗っていただいたところ、
「別の乗り物みたい」
と感動していただけることが多いです。
今回も非常に喜んでいただけました。
お金をかければ速さに直結する高性能パーツは手に入ります。
すぐに結果を出したい場合は間違い無くそれが手っ取り早いでしょう。
しかし、どんなパーツも本来の性能を引き出せなければ意味がありません。
まずは今使っているパーツをオーバーホールして、本来の性能を発揮できるようにしてみるという選択もアリですよ。

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