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 源泉掛け流しの温泉にどっぷり浸かり、御宿の自慢のコース料理を堪能した私は部屋に戻った(【日本酒記 その一】豊盃 緑風荘にて )。時刻は八時過ぎ。さて、ここからはひたすら部屋と槐の間での検証を始めた。不定期のタイミングで部屋の写真と動画をスマートフォンとデジタルカメラで撮影する。風船を投げてみたり、玩具を転がしてみたり、椅子に座ってパンフレットを眺めたりして時を過ごす。特に何かが起こらなくても、このゆったりした時間を憧れの場所で過ごすだけで心地良いのだ。

落ち着いた室内
風船に変化はなし

「ドン、ドン、ドン、ドン」

 足音のように聞こえた。不可解な音が何処かから発せられた。反射的に私は天井を見上げていた。上から聞こえたと判断したのである。二階を誰かが歩いていただけか。そう思ったが、よく考えるとこの旅館には二階がない。平屋で客室も同じフロアにあるだけだ。しかし、私には上から聞こえたように感じられた。この音が亀麿様によるものなのか、それはわからない。

 ここで、騒音や音の出処について私なりの考えを述べてみたい。賃貸物件での生活経験が長い私にとってみれば、騒音はとても厄介だ。何故かと言うと、経験のある方は理解できると思うが、上階から音がしたかと思えば、実は隣室の住人が発生源だったりもする。また、隣が騒がしいと思って壁に耳を当てると、やや上の方から聴こえてきて、つまり隣室の一つ上の階の住人が音の出処かもしれないなんてこともある。ベランダに出て柵から隣室に人の気配があるか、明かりが点いているか確認すると、どうやら人が居ない様子だったこともある。
 実際に音を出している部屋の中を覗くことは出来ないので、確実に音の出処を確かめてからクレームを入れることは不可能だ。しかし、ある程度の確信や確認を得た上で対応をしないと、ご近所トラブルになることもある。それほど音は厄介だ。

 だからこそ、天井から足音のような音が聞こえたからといって、座敷わらしがいる、とも言い難い。しかし、その時、この部屋で、私が感じた最初のインパクトは大きく、「足音のようだった」と表現したまでだ。廊下を人が歩いただけ、隣室の宿泊客が動いただけ、といった単純な生活音かもしれない。ただ、不思議な雰囲気に包まれた。
 壁を背にして障子を挟んだ向かいのベッドを向いて写真を撮ってみる。

写真上部にはっきりと青いオーブが写る

 おや?デジカメを確認すると、画面の障子の上に、はっきりとオーブが写っている。しかも、初めて色付きのオーブが出現した。青色である。拡大したのものをご覧頂こう。

青いオーブの拡大版

 前々回の投稿(怪異を訪ねる【緑風荘】その二)でも述べたが、私はオーブは基本的に埃だと思っている。ほとんどのオーブは目に見えない微小な埃が光の反射や加減で写っただけだという見解だ。しかしながら、時に異様な大きさのものや、まるで意思を持ったかのように不規則な動きをするもの、顔のように見えるもの、色がはっきりと付いたものがある。私はこれらを即座に埃と断言しない。ただし、霊魂とも言えない。ただただ、答えを導き出せない異様なものである。続けて同じ状況で写真を撮った。確認頂きたい。

直後に撮った写真。オーブは写らない

 見てわかるように、二枚目の写真にオーブは写らなかった。埃が移動したのであれば、広い画面のどこかに写り込んでもおかしくはない。また、部屋が埃っぽいのであれば、他にも僅かな大きさと数の埃が写っている可能性も考えられる。しかし、そんな様子ではない。他に説明可能な要因があるのかもしれないが、形が大きめであることと青色を帯びていることから、不思議な写真が撮れたなあとは思う。
 ところで、このオーブの写真に見覚えのある方もいらっしゃるのではないだろうか。実は、自己紹介として初回に投稿した記事(note始めます!)で、このページの方向性である怪異探訪、不思議追究を強調する為にワクワクして頂きたく、トップ画像に採用していた次第である。遅れた答え合わせのようになったが、それがまさにオーブであった。

 時計を見ると九時を回っていた。部屋での検証を一旦止めて、少し時間を経て槐の間がどうなっているのか、見に行くことにした。(続く)

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