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【日本酒記 その一一】田中六五

 シンプルな文字とその美しさが目を引くラベル。そして、酒米の王様「山田錦」を使用することでも有名な「田中六五」が、今回、ご紹介する酒だ。
 気になっていながら、購入を先送りしていた日本酒を、ようやく手に入れることができたので、レビューをまとめてみたい。

 蔵元は、福岡県糸島市に位置する「白糸酒造」。全国で唯一「ハネ木搾り」を貫いていることで有名だ。ハネ木搾りとは、醪を酒と酒粕に分ける「搾り」の工程で、カシの巨木に石を吊るし、てこの原理で酒袋に圧力をかけるもの。
 使用する山田錦は糸島市産で、蔵と同地区の米を使用しており、地元の特徴を大切にしているようだ。精米歩合はその名の通り、65%で統一されている。山田錦の田んぼの中から生まれた酒だから「田中」の名がついた。さて、早速、開栓してみる。

ラベル表面
ラベル裏面

田中六五 純米

原材料名 米(国産) 米麹(国産米)

原料米 糸島産山田錦

精米歩合 65%

アルコール度数 14度

日本酒度 不明

酸度 不明

火入れ あり

 いつものように、まずは冷えた状態で様子を探ってみる。グラスに注ぐと、見た目の印象としては、サラッとしているより、やや滑り気があるような流れに見えた。味はどうか。

グラスに注いでみた

 透明感が強く、グラスを上から見下ろす景色は光の反射もあって眩い。鼻を近付けてみると、香りははほぼない。酒らしい匂いが微かに香る程度だ。
 一口、戴いてみる。うむむ・・・。精米歩合65%にしては、純米吟醸ぐらいに感じる甘さがある。それでいて締まっている感覚もある。果実のような味もするが、喉越しは切れ味あり、といったところか。次に、常温で確かめてみよう。

 なるほど。温度が落ち着くと辛さが際立ってくる。しかし、冷酒で感じた甘さは常温でもしっかり残る。歯茎に締め付けるような辛さと、喉越しが心地良く感じる。安定感があり、食中酒にもってこいだ。

お猪口に注がれた田中六五

 さて、温度計を徳利に挿して、熱燗の準備だ。しばらく温度計と睨めっこした後、少し湯気が立ち、ちょうど良い温度になったので、呑んでみよう。
 燗酒特有の米の香りが引き立っているが、山田錦の筋が通ったような渋さ、わずかな無骨さが鼻を突く。湯気を戴きながら、口で迎える。ふむ・・・。口の中では、最初は甘さが残っているが、すぐに辛さと苦みがくる。口から身体全体が温まるような、ホッとした感覚になる。二、三口呑むと、慣れてきたのか落ち着きを取り戻したように酸味のバランスが口で整ったように感じられた。

 どの温度帯でも、食の邪魔をしないどころか、「長い時間をかけて日本酒を楽しみたい感覚」が強く残る酒だ。単なる食中酒ではない、山田錦を使った貫録が沁みる。

 白糸酒造様は一八五五年(安政二年)に創業。前述のように、山田錦の一大産地として有名な糸島市で、酒造りをされている。今回、ご紹介した以外にも、「白糸」や限定酒などもあり、オンラインショップでも購入が可能だ。下記にホームページを掲載するので、より詳しく知りたい方は、是非、アクセスしてみていただきたい。

白糸酒造 白糸酒造 (shiraito.com)

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