東郷えり

本や映画の世界観をちょっと深堀り。歴史的な知識を交えて紹介します。

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最近の記事

LanLanRu歌紀行|小牧小学校 校歌

舞台:1584年 / 日本 懐かしい歌がある。 6年間通っていた、小学校の校歌だ。 おわりーへいやをかんかして たいぜんとーたつこまきやま むーかしとよとみとくがわが りゅうこのせいをはりしちぞ。 あるときは晴れ渡った運動場で、またある時はひやりとした体育館で、集会などのあるたびに、私たちはこの校歌を大声で歌っていた。 結構楽しく声を張り上げていたのだが、白状してしまうと、歌詞の意味などはまるでわかっていなかった。 すぐそこにある「こまきやま」はわかる。けれども「たい

    • LanLanRu映画紀行|The Sound of Music

      舞台:1930年代 / オーストリア 「オクラホマ!」「回転木馬」「王様と私」など、数々の名作ミュージカルを生み出してきたロジャース&ハマースタイン。彼らによって書かれた最後の作品が「サウンド・オブ・ミュージック」だ。 第二次世界大戦直前、ナチス占領下のオーストリアからアメリカへ亡命したトラップー家の物語。1965年にジュリー・アンドリュースとクリストファー・プラマーでミュージカル映画化されると、アカデミー賞の5部門を受賞して、世界的な大ヒットになった。 この映画、本当

      • LanLanRu文学紀行|終戦日記一九四五

        エーリヒ・ケストナー著 舞台:1945年 / ドイツ 『飛ぶ教室』や『エーミールと探偵たち』で知られるケストナーの終戦日記。1945年の2月-7月にかけて、ケストナー本人が見聞きしたことのメモをまとめたもの。 たった半年の記録だが、ドイツ国民にとっては激動の数か月だった。この間にナチスの第三帝国は崩壊。無条件降伏をしたので、ドイツは四つの地域に分割されて、連合軍の管理下に置かれるようになった。 ケストナーの終戦日記は、第三帝国末期から終戦直後にかけての時代の狂気を皮肉たっ

        • LanLanRu文学紀行|黒い兄弟

          リザ・テツナー著 舞台:1830年頃 / スイス・イタリア 『アルプスの少女ハイジ』を読んだら、同じくスイスを舞台にした、こちらのお話も読みたくなってしまった。『黒い兄弟』。日本では、世界名作劇場のアニメ『ロミオの青い空』の方が通りがいいかもしれない。 煙突掃除夫としてミラノへ売られたジョルジョが、同じ煙突掃除夫の仲間たちと秘密結社「黒い兄弟」を結成して、助け合いながら困難な中を生き抜いていく。実際に行われていた、児童売買と児童労働をテーマにしたお話。 煙突掃除夫という

        LanLanRu歌紀行|小牧小学校 校歌

          LanLanRu文学紀行|アルプスの少女ハイジ

          ヨハンナ・シュピーリ著 舞台:19世紀後半/スイス・ドイツ 子供心にずいぶんと憧れた。アルプスの山をのびのびと駆け回るハイジの生活。新鮮なヤギのミルクや、暖炉の火にとろりと溶けるチーズフォンデュ。ふかふかの干し草のベットや、山の上のお花畑。 スイスといえばハイジの国で、そこに描かれる暮らしは、素朴ながらも心満ち足りたものに思えて魅力的だった。それは今でも変わらない。けれども大きくなると、スイスの山村の貧しさも、この物語の中に見えてきてしまった。 ハイジはどうしてアルプス

          LanLanRu文学紀行|アルプスの少女ハイジ

          LanLanRu歌紀行|ラ・マルセイエーズ

          舞台:1792年 / フランス パリ2024オリンピックが近づいてきたので、フランスの国歌を聴く機会が増えてきた。高揚感のある曲なので、気分がいい時など、つい鼻歌で歌ってしまったりする。しかしこの「ラ・マルセイエーズ」、よくよく歌詞を見てみると、「喉を切る」や、「血染めの旗」などと、ずいぶん血なまぐさい曲だった。それもそのはず。元はフランス革命の時に生まれた革命歌である。 ラ・マルセイエーズー歌の誕生 ブルボン朝の絶対王政を打倒したフランス革命だったが、これは周囲の君

          LanLanRu歌紀行|ラ・マルセイエーズ

          LanLanRu映画紀行|時の面影

          舞台:1939年 / イギリス 「発掘」にはロマンがある。 それは過去を掘り起こして、ルーツを探る行為だ。地中に埋もれている人の痕跡は、驚くほど多くの情報を今に伝えてくれる。たとえば「モノ」の素材からは交易の範囲の広さを。制作方法からは、それが作られた時代や技術力のレベルを。見つかった場所から、どのような目的で使われていたか推測することもできる。 そうした「モノ」を一つ一つ掘り出して記録していくのは、実のところ根気のいる、地味な仕事だ。だが、そうした作業が、時には歴史的な

          LanLanRu映画紀行|時の面影

          LanLanRu文学紀行|黒いダイヤモンド

          ジュール・ヴェルヌ著 舞台:19世紀 / イギリス(スコットランド) 「黒いダイヤモンド」とは石炭のことを言うらしい。『‎八十日間世界一周』や『海底二万里』のジュール・ヴェルヌが描いた地下世界での冒険小説。イギリス、スコットランドの炭坑地帯が舞台である。 10年前に閉鎖されたスコットランドのアバーフォイル炭坑で、かつて監督をしていた技師ジェイムズ・スターのもとに、かつて坑夫頭を務めていたサイモン・フォードから炭坑まで来て欲しいという謎めいた1通の手紙が届く。ところがその後

          LanLanRu文学紀行|黒いダイヤモンド

          LanLanRu映画紀行|美女ありき

          舞台:1786-1815年/イギリス 大学の受験日前日、今更じたばたしたって仕方ないやと、ホテルのテレビをつけたらやっていたのが「美女ありき」だった。トラファルガーの海戦で活躍したイギリス海軍提督、ホレーショ・ネルソンとハミルトン夫人の不倫の恋を描いたモノクロ映画。見るともなく見ていたら、次の日の試験でトラファルガーの海戦についての問題が出た。無事大学にも合格できたので、幸運の思い出の映画だ。 ハミルトン夫人の不倫の恋を描いた「美女ありき」 1941年公開/アレクサンダ

          LanLanRu映画紀行|美女ありき

          LanLanRu文学紀行|モンテ・クリスト伯(後編)

          アレクサンドル・デュマ著 舞台:1815-1838年/フランス アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』を読み終わった。この本、なかなかの長編である上に、終盤にむけて話が一気に盛り上るので、ページをめくる手が止まらなくなるのが困ったところ。 読み終わっても興奮冷めやらず、作者のデュマのことやら、周辺情報など気の向くまま調べていたら、まだまだ裾野に広い世界が広がっていることに気が付いた。『モンテ・クリスト伯』については以前に一度まとめているが、書きたいことがいくつも出

          LanLanRu文学紀行|モンテ・クリスト伯(後編)

          LanLanRu文学紀行|モンテ・クリスト伯(前編)

          アレクサンドル・デュマ著 舞台:1815-1838年/フランス 決して試験前に手に取ってはいけない。読み始めたが最後、夢中になってのめりこんでしまうこと請け合いだ。わくわく、どきどき、はらはら。ぞくり。華麗な復讐劇のスリルとサスペンスにページをめくる手が止まらない。続きが気になって気になって、勉強なんか上の空。おまけに寝不足。 この本を手に取ると、子供の頃に夢中で読んだ興奮をそのままに思い出す。 『モンテ・クリスト伯』。アレクサンドル・デュマの代表作である。 無実の罪で

          LanLanRu文学紀行|モンテ・クリスト伯(前編)

          LanLanRu映画紀行|ピンクの豹

          一寸こんな映画は他にない。他愛ないどたばたコメディーだが、粋でテンポよく、上品だけどユーモアたっぷり。オープニングのアニメーションだけでも10回は見る価値がある。そして、あまり知られていないが、あのアニメキャラクターの「ピンクパンサー」を生んだ映画でもある。 粋でお洒落なコメディー映画「ピンクの豹」 1964年公開/ブレイク・エドワーズ監督作品 世界一大きいダイアモンド「ピンクの豹」をめぐって、怪盗ファントムとそれを追うパリ警察のクルーゾー警部が引き起こすどたばた喜劇。何

          LanLanRu映画紀行|ピンクの豹

          LanLanRuミュージカル紀行|王様と私

          舞台:1862-1868年代初頭、/シャム(タイ) ブロードウェイの大ヒットミュージカル「王様と私」。 きっと誰でも一度は聞いたことがあるにちがいない「Shall we dance?」 などのヒットナンバー、また1951年の初演以来歴代の個性豊かな俳優の演技が印象的な、ロジャース&ハマースタインの作品である。 最近ではケリー・オハラと渡辺謙の共演が記憶に新しい。ミュージカル黄金期につくられた名作にふさわしく、舞台美術も衣装も華やかに工夫が凝らされている。叶うならば、いつかは

          LanLanRuミュージカル紀行|王様と私

          LanLanRu映画紀行|ジャイアンツ

          舞台:1920-50年代/アメリカ 「ジャイアンツ」を再見して 初見の時にはエリザベス・テイラーの美しさを堪能した。だが、考えてみるとそれだけではどうも終われない映画のような気がしてきた。改めて見るとこの映画、ベネディクト家の姿を通して時代の流れの中に移り行くテキサスの姿を描いている。西部劇で有名なテキサスであるが、実はこの土地についてあまりよく知らないことに気が付いたのだった。 テキサスの大牧場の家族史を描いた ハリウッドの超大作映画 1956年公開/ジョージ・ステ

          LanLanRu映画紀行|ジャイアンツ

          LanLanRu映画紀行|デリシュ!

          舞台:1789年、/フランス デリシュ!美食の国フランスにてレストランの誕生を描いた映画 2022年公開/フランス・ベルギー合作 きれいな、まるで絵画を見ているような、光と影の美しい映画だった。それだけでも十分見る価値があると私などは思うのだが、この映画、主題はフランスの「食」の革命についてである。面白そうなテーマだと思い、今回記事に取り上げることにした。 1789年、革命前夜のフランス。マンスロンは、公爵主催の食事会で腕を振るう宮廷料理人である。しかし一皿の創作料理が

          LanLanRu映画紀行|デリシュ!

          LanLanRu漫画紀行|ベルサイユのばら

          舞台:1755-1789年 / フランス 不朽の名作、少女漫画の金字塔。誰もが知っていると思ったら、担当していたクラスの高校生が誰も知らなくてがっくりきた。そうか。今の高校生は『ベルサイユのばら』を知らないのか。だが、連載当時はベルばらブームが巻き起こったほどの人気漫画。アニメ、宝塚の人気演目にもなり、フランス革命に詳しい日本人がやたらに増えた。作者の池田理代子は日仏交流に果たした役割を評価され、レジオン・ドヌール勲章を受章しているし、フランスのジャック・ドゥミ監督まで映画

          LanLanRu漫画紀行|ベルサイユのばら