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誰が言い始めたんだろう

あけましておめでとうございます。
新シーズンの始まりにほかのスポーツでも言っているのか知らないし、Jリーグでもいつから誰が言い始めたのかは知らない。
けれど、まさにそんな雰囲気だった。
J1、J2から遅れること3週間。
ようやくJ3が開幕した。

明治安田生命J3リーグ 第1節
2022年3月13日 13時5分キックオフ @白波スタジアム
鹿児島ユナイテッドFC VS いわきFC
1-1(1-1、0-0)
天気:曇り 気温:24.4℃
入場者数:4,832人

新年の目標なんてほんとは聞かれたくない

白波スタジアムに到着したのはキックオフの約2時間前の午前11時すぎ。
通い慣れたホーム自由席南側(バックスタンド)にいったん入場して、座席を確保してからスタグルを確保するためメインスタンド側にまわる。


そこで感じるのはやっぱり新年の雰囲気。
鹿児島ユナイテッドのサポーターたちは、去年より紺色が濃くなった真新しいオーセンティックユニフォームに身を包んでいる。
今シーズンからJに参入するいわきFCのサポーターたちは、どこか戸惑いつつもJリーグのスタジアムを楽しんでいるように見えた。

ただ単に新しいシーズンが始まったというわけではない。
鹿児島ユナイテッドのサポーターにとっては(少なくとも僕にとっては)今年の開幕戦はただの新シーズンの始まりとは少し違う。
話は1年前にさかのぼる。

オーストラリア出身のアーサー・パパスを監督に迎えて始まった昨シーズン。
開幕戦に敗れはしたものの、ポジショナルサッカーの片りんをうかがわせるチームの成長は楽しみだった。
ところが、チームの調子が上がりきる前にパパス氏は退任。
その後、チームは低迷を続け最終的にはJ3参入後、最低の7位に終わった。
目標としていたJ3優勝、J2昇格はかなわなかった。

「監督が途中で代わったからね」
なぐさめにもならないなぐさめを言い合うしかなかった。

だから、「今年こそは」なんて思いを抱いてこの日を迎えたのは僕だけではなかったと思う。
補強も順調に思えたし、現役時代に鹿児島でプレーしたこともある新監督の大嶽直人氏はなでしこリーグでチームを昇格させた実績がある。
スタジアムで横浜フリューゲルスのジャンパーを着た人を見かけたけど、きっと大嶽監督へのリスペクトなんだろう。

期待と不安と緊張の交じり合ったサポーターたちの顔を眺めながら、スタグルの列に並ぶ。
新シーズンだからってわけではないけれど、この日の昼食は新メニューの豚すき丼。初めて食べたけど、間違いじゃなかった。

キックオフまで1時間を切って、スタジアムの外周を逆回りに戻る。
その途中でふと違和感を覚えた。
なんだろうと考えながらバックスタンドの階段を上った。

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いつも通りに違和感を感じる

座席についてようやく違和感の正体が分かった。

座席と座席の間に空席がないことだった。
感染防止のため昨シーズンは必ず席と席の間には空席があった。
DAZNで見るJ1やJ2の試合と同じように、白波スタジアムでも今シーズンは空席がなくなっていた。
はじめに席を取ったときは、まだほかの観客が少なかったから気づかなかったけれど、周りに人が増え始めると不思議な感じだった。

コロナ前は当たり前の光景だった。
「座席に荷物を置かないでください」なんてアナウンスが流れていたも忘れていた。
当たり前のはずだったことに違和感を覚えてしまうことに、コロナ禍の長さをどうしても感じてしまう。

目の前の席に人がいて、後ろの席では誰かが友達と話をしている。
ちょっといやだな。
そう思ってしまうのがいやだった。

密と圧

人間なんて言うのは、けれど単純なものなんだと思う。
試合が始まってしまえば、小難しいことを考えていたことなんてすっかり忘れていた。

それどころか、手拍子の圧が去年より強いことに軽く感動を覚えてすらいた。
やっぱりバラバラに座っているより、密になっているほうが音が集まって強くなるんだろう。
チャンスに手をたたき、ピンチに息をのむ。
声はまだ出せないけれど、スタジアムが一体になる。

この日のハイライトは前半42分。
木村選手のFKに有田選手が頭で合わせてゴールを奪った。
期待の新戦力の2人の力で奪ったというのもあるのだけれど、やっぱりシーズン最初のゴールは格別だった。

歓声がスタジアムを包んだ。
声を出すなと言われても、出るものは仕方ない。
「誰のゴール?」だとか「高かった」とかそんな声でざわつく中、いわきボールで試合は再開する。
大型ビジョンに映るリプレイに再び歓声が上がった。

休み明けは憂鬱だけど休みも面倒だったりする

冒頭に記したように、試合は結局引き分けに終わった。
当然のことだけれど、シーズンが進んでから勝ちきれなかったときの諦めのようなものは、サポーターの顔にはなかった。
勝てなかったけれど、どこかほっとしたような表情が浮かんでいた。

実際の生活でもバタバタした正月を終えて、三が日のあとの出勤や登校は面倒だけど、やっと日常に戻れるという安堵感みたいなものがある。
七草がゆを食べたり、鏡開きをしたりしていつもの生活に戻っていく。

来週も鹿児島ユナイテッドFCはホーム、白波スタジアムで試合に臨む。
とりあえず、来週も天気が良ければいいな。

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