トギリ

本を読んだり字を書いたり文章を書いたりします。

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  • お題 仮想惑星

    as far as I know(http://m45.o.oo7.jp/index.html)様のセットお題『仮想惑星』を使った作品群

最近の記事

【読書感想文】読んでいない本について堂々と語る方法/ピエール・バイヤール

本を読むということは、本を読むということではない。そして、本について語るということもまた、本について語るということではない。 そんな謎かけのような話が扱われているのが、この本である。 ちなみに、私はこの本を最初の一文字目から最後の一文字まで通読したが、ある意味ではこの文章も、読んでいない本について語っている。 それでもここは作者の言葉に従い、堂々と語ることとしよう。 「本を読む」とは何か?読んだ本とは何か? 私が「その本は読んだ」と言う場合、それは、過去に一度以上手に取

    • 【読書感想文】〆切本

      締め切りとは作家のみを苦しめるものにあらず。学生ならば宿題や試験が、社会人ならば納期や発表日が存在する。締め切りに苦しむ作家の姿は他人事ではなく、読者の人生すら重なって見えるものである。 新刊というわけでもなく図書館でふと目に入って借りたのだが、いつかどこかで書名を聞いたことがあったのかもしれない。ちょうど明治~昭和の文豪の随筆や手紙の類いに興味を持っている時期なので、目次をめくって知った名前がいくつもあるのを見て読み始めた。 本書の中では、締め切りに追われ、精神的に追い

      • 【読書感想文】不連続殺人事件/坂口安吾

        はじめにこれはミステリ小説の感想文であり、推し本の紹介である。この記事には"致命的な"ネタバレは含まないように注意している。ただ、人によってネタバレと感じる程度は違うので、「純文学作家坂口安吾が書いた日本ミステリの傑作!」という文句一つで興味を覚えるのであればもうこの先は読まずに『不連続殺人事件』の本文を読んだ方がいい。青空文庫にあるので無料です。 ちなみに私は青空文庫ではなく新潮文庫版を買って読んだ。ミステリ小説というのもあって登場人物が多く、また前のページを頻繁に読み返

        • 【読書感想文】黒髪/近松秋江

          前置き前日の記事の繰り返しになってしまうので簡単に済ますが、これもまた、『饒舌録』の中で谷崎潤一郎が言及していた一編である。雨瀟瀟と黒髪、と並び立てられているのだから、やはりこちらも読んでおかねば片手落ちだろう。青空文庫で読める短編小説なので、気負わず読むことができる作品である。 『黒髪』相変わらず作者や背景についての前知識は無い。特に、この近松秋江という人物名については、さっぱり聞き覚えがなく読み方さえも分からなかった。(ちかまつしゅうこう、と読む。「あきえ」ではない。)

        【読書感想文】読んでいない本について堂々と語る方法/ピエール・バイヤール

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          1本

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          【読書感想文】雨瀟瀟/永井荷風

          前置き谷崎潤一郎が『饒舌録』の中で言及していた作品のうちの一編であり、言葉を綴るのが生業の人間が書いたのだから当然というべきか、その紹介の仕方が見事だったため興味を引かれた。曰く(以下要約) 写実的な小説は読む気が起きない、そういった身の回りのことや作家の経験を元にしたもので、嫌気がささず読めるような作品はめったにない。印象に残っているものといえば、永井荷風の『雨瀟瀟』と近松秋江の『黒髪』くらいのものだ。(出典:後述*1) 私が普段読んでいる小説はSFやミステリといったい

          【読書感想文】雨瀟瀟/永井荷風

          【日記】芥川と谷崎の小説論争が面白い

          『文芸的な、余りに文芸的な/饒舌録 ほか』を読んでいる。 ちなみにこの記事を書き始めた時点ではまだ読了していない。そのため、【読書感想文】ではなく【日記】とした。 昨年11月、『文豪とアルケミスト』のアニメ一挙放送があった。原作であるゲームの方は開始当初こそやっていたが、以降はすっかり放置していた。それでも、昔から本が好きで、自分も文章を書く者として、なかなか面白く見ることができた。そして、学生時代にはその面白さがよく分からなかった近代日本文学を今もう一度読み直したいと思っ

          【日記】芥川と谷崎の小説論争が面白い

          【お題 掌編小説】001/366

          as far as I know様のセットお題『仮想惑星』よりお題をお借りし、1時間程度で書いた掌編です。 001 沈黙を語り聞かせるごとく カシャン、カシャン、と金属の板がこすれ合う音を立てながら、プレートメイルをまとった一人の兵士が森へ続く道を歩いていた。戦争が終わり、村に戻ってきたその兵士を迎えたのは、どこかよそよそしい村人達の眼差しだった。兵士は自分がどの家に帰るべきか分からなかったし、みなもまたそれをどう伝えるべきか分からない様子だった。  兵士には生まれたときの

          【お題 掌編小説】001/366

          noteに登録してから随分経ちますが、これがはじめての投稿です。他のSNSは使っていますがまた異なる使用感ですね。140字では収まらない長めの文章を投稿できる場所として利用したいと思っています。2021年から、よろしくお願いします。

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