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被差別者と労働者

登川琢人です。
今日は2021年12月27日日曜日です。
(副島隆彦の真似なんだけど誰もツッコマないな。

共同謀議論(コンスピラシー)の人なんでみんな読まないか。
彼は陰謀論にとどまらない優れた本もあるんですけどね。

エッセイを書いてみました。
いや、寓話かな。

わたしは文芸批評が好きでずっと読んできた人間です。
柄谷行人を中心に幅広く読んできました。
中学生くらいからですね。
面白いから読んでいました。

日本の近代文芸批評を確立した人は小林秀雄ですが、なんでもありですね。
小説の批評に限りません。
絵画だってマルクスだって批評の対象にします。
そもそも共産党の宮本顕治だって文芸批評を書いてましたからね。
だから、「世界」に興味がある人が読む。子供だって読むし。

海外だとなんになるのかな。
フランスだとポール・ヴァレリー、UKだとジョージ・オーウェル、アメリカだとエドマンド・ウィルソンあたりをイメージしてもらうとわかりやすい。
トロツキーも書いてますね。

性自認至上主義問題でJKローリングが「1984」を引用しましたが、オーウェルは小説だけではない。
「象を撃つ」、「パリ・ロンドン放浪記」、「カタロニア讃歌」(しばき隊が好きな「奴らを通すな!(No Pasarán)」やろ?)などエッセイやルポを書いています。
全部読んでないけど「パリ・ロンドン放浪記」が好きです。
オーウェルがホームレスになってウロウロする話。
あんな風に書いてみたい。

もちろん、理論をハッキリさせたい。
学者でも学問でもないから高卒の労働者でも書けるんですね。
だから、民主主義的なジャンルだと思います。

大上段に振りかぶり過ぎました。
実はネット時代は実は大量の文字情報があふれます。
民衆がこんなに気軽に文章を書き、読む時代はなかったはずです。
活字はお金も時間もかかりますからね。

ただし、政治闘争に関しては、どうやら情報を流して拡散されれば政治的に勝つ訳ではないと、先日の衆議院選挙でわかった。

ツイッターではボロクソの維新の会が大躍進しました。
だから、意外と運動では効果が薄いかもですね。
リベラルのタコ壺で拡散されても意味がない。
部族社会化(トライバリズム)というものかな?

まあ、なんにせよ、読むに耐える文章を気軽に書きたいです。

では、よろしければどうぞ。



「登川くん、組合に入っていたの?!」

毎年、3月1日前後に関東大震災朝鮮人虐殺の追悼式が荒川河川敷で行われています。

当時、わたしは朝鮮民族音楽を趣味でやっていて、サークルの人が追悼碑を建てる運動をやっていた縁で、楽器隊として毎年参加していました。

自分の会社でパワハラ事件が勃発し、慌てて加入した組合の争議が一段落して、追悼式に組合の大先輩を誘ってみたときのことです。

同じ下町にあった。
二駅ぐらいしか離れていない。
東京大空襲の慰霊ツアーも参加していた大先輩だし、興味あるはずだから誘ってみた。
大変お世話になった尊敬する人です。

仲間と民族衣装に着替えて、楽器のウォーミングアップをしていたときだったか、サークルの先輩がビックリした顔でわたしに言ってきた。

「はい、最近ですが。○○さんはなんで知ってますか?」

「あそこにいるの、●●さんだろ?聞いたら登川くんに誘われたって言っていたから。いや、俺も昔いてさ。色々あって。」

なんか言いにくそうだったので、それ以上聞かなかった。
追悼式前でバタバタしていた。

サークルの先輩は気さくな人で大好きだった。
はじめて入って、様子もわからないわたしによく声をかけてくれた面倒見がよい先輩。
男性です。

自分のことで忙しくなりサークルにはほとんど顔を出さなくなっていたから、久しぶりに会えて嬉しかった。

後で組合の大先輩に聞いたのですが、非常に印象深い話なので書いてみます。
この人も男性です。

組合と言っても企業内組合ではなく地域合同労組(ユニオン)です。

大企業、中企業の人は知らないと思いますが、中小零細企業には労働組合は少ないんですね。

ワンマン社長が多いし、労働者も労働組合を知らない。
だから、好き放題に搾取されている。

わたしも知らなかったし、労働組合も社会的に存在感ないし、左翼で赤旗だから、なんか大変なんじゃないかと、あまり意識していませんでした。

バブル世代の中小企業労働者なんてそんなもんだと思います。

後で仲間を増やすためにオルグをしましたが、大変でした。
ビラの色が黄色だから革マルを思い出すから嫌だとか、訳がわからない断りかたをする奴がでてきて、もう赤旗にたいするアレルギーが強い。

わたしだって浅間山荘事件をうっすら知っている世代だし、内ゲバもなんとなくは知っていました。

大学行ってないからかな?
セクトを知らない。
本で知っているだけだからアレルギーが薄いんでしょう。

同世代より少し年上の大学出の「支部」の仲間は連合赤軍にこだわってはいましたが、さすがに労働組合と新左翼の違いはわかるし、黄色のビラの件は支部の仲間は呆れて大笑いしました。

ただし、いまは新左翼もユニオンやってますね。

でも、その人も組合の人と話して納得したから入ったんですけどね。
わたしが会議でわーわー言うと、登川さんは連合赤軍ぽいとか言われて、それなりに面倒くさかった。

いや、向こうが大変だったかもしれない。
なにしろやると決めたら、生活おっぽりだして全力を尽くしてしまうタチで、仲間にも同等を要求してしまう。
そら、生活もあるから無理だとわかってきましたが、だいぶんプレッシャーだったと思います。

「進撃の巨人」の調査兵団のノリですね。

「心臓を捧げよ!」

組合ではなくわたしが、です。
やり過ぎでしたね。

地域合同労組というのは誰でも入れる社外の組合です。
ユニオンとか日本語では書いてますが、一般労組という。
General Union ですね。

海外では産業別労働組合、職種別労働組合など企業を超える労組が一般的で、産業、職種に組合がない人達は一般労組に入ります。
だから、「支部」という。
本体の一般労組の「支部」ですね。

労働組合はUK発祥だがギルドの伝統が強い。
レンガ職人、皮なめし職人とか職人同士の仲間意識が強かった。
パブで集まる。

つまり、企業を超えるから企業がブラックだったら企業をやめてしまえばよい。
組合はやめない。
企業に圧力もかけやすい。
産業別統一賃金を守らせることができる。

連合は「産別自認」ですが海外基準から言えばニセモノです。
企業内組合の「連合」(寄せ集め)に過ぎない。

だから、入社した企業によって賃金格差が激しい。
非正規労働者は割りを食いますね。
能力がいくらあっても差別される。
能力主義でもないんですね、日本は。
メンバーシップ社会という。

新卒一括採用は要するに賃金が高い大企業へのパスポートです。
子供の頃、そつなくしてばれば良いわけ。
実家も太くないと駄目。

これが日本社会の規範ですね。
下らないが「規格品」を資本主義がつくるために、惰性で続いています。

おかしいと気づく人は多いが「既得権益ダー」とやるので新自由主義化しやすい。

日本社会が能力主義ならアニメーターがビンボ人だらけのはずはない。
「クールジャパン」の職人さんですから腕がある。
電通やらのアニメもろくに知らない無能人間がなんもしないで「中抜き」して贅沢な暮らしなんてできませんね。
単に18歳ぐらいでガリ勉できる環境と才能があっただけ。
あとは暗記能力かな。


つまり、新自由主義も「既得権益」も、どっちも地獄で、変化すべきだが、日本人は変化を嫌う。
だから、失われた30年どうたらを延々とやっている。

維新が大人気なのも立憲民主党が連合とタッグを組んでいる満腹野郎だからであったりしますよね。

この辺は最近では小熊英二が「日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書)で書いていますから、読むと面白いです。

話が逸れました。
先輩の話です。

ある企業の労働者達が一般労組に駆込んで来て、水面下で仲間を集めて、団体交渉を申し入れたそうです。
「公然化」といいますが、バレたら社長にクビにされたりしますから、水面下で仲間を増やします。

組合に加入したことをもってクビにしたり賃金を減らしたり不利益をもたらすのは、ありがたいことに違法です。

不当労働行為という。

憲法28条に規定されている「生存権」(社会権)ですね。
生存権が一番だと、散々書いてきましたから、大事な理由はわかると思う。

資本主義社会では金がないと生存権が脅かされるからです。
だから、労働者に「権利」を与えている。
社長と対等になるためですね。

さて、ようやく生存権を行使して団体交渉の席についたら、サークルの先輩が会社側の席にいたそうです。

驚天動地だったことは想像がつく。
労働者仲間に尽くして信頼厚く、好かれていた先輩が労働者を裏切って会社側に?!

何故か。
在日コリアンが社長の企業だったからです。

散々説得したが、自分は日本人だし、差別されている在日コリアンの社長に敵対することは、どうしてもできない、と言って組合を脱退されたそうです。

在日コリアンは差別されています。
企業には就職できない、公務員にも昔はなれなかった。
弁護士だって最近までなれなかった。
朝鮮大学校は大卒と認められなかったから改めて大卒資格を取らなければならなかった。

今でも差別はありますが、昔は更に酷かった。
だから、自分で商売するしかない。
パチンコが有名ですが、とにかく起業して食わなきゃいけない。
生存権の危機です。
それが差別ですから。

サークルの先輩はもちろんすべて知っている。

K-POPや映画でコリアンが世界的に存在感を増す前の時代です。
そんな時代に関東大震災朝鮮人虐殺の追悼碑を建てる運動をやって、朝鮮民族の音楽をやって、在日コリアンの女性と好きあって結婚した人です。

どうしても譲らない。
日本人がそんなことはできない、と。

生存権と生存権がぶつかった訳です。

結局、先輩は組合を脱退したそうです。
組合の人達も先輩を憎む訳でもない。
先輩も組合を憎む訳ではない。

どうしようもないことです。

その後の在日コリアンの会社の組合がどうなったかは聞いていません。
わたしが加入したときは「支部」はなかった。

追悼式の後、しばらくしてサークルの先輩は若くして病気で亡くなりました。

葬式ではみんなで民族楽器の演奏をして送り出しました。

サークルの先輩とともに闘った組合の先輩達も来ました。

とても愛されていた人だった。
小さな教会に人が入りきれないくらい集まった。

「登川くん、ちょっと教えてくれよ。」

先輩は長くやってるけどチャングはそんなにうまくなくて、下手くそのわたしにまで聞いてくる。

叩いてみせると真似するけど変わらない。
そうではなくてですね、肩に力が入り過ぎです、と声をかけても耳に入らない。
夢中になって叩きつづける。

でも、いいんです。
チャングが下手だろうとなんだろうと一緒に叩ければいい。

チンを気持ちよく叩いてね。

お葬式はコッカル(朝鮮の花笠)を被って朝鮮農楽の服をきた先輩の写真が壇上にありました。
はにかんでいるけど、満足げな笑顔だった。

(蛇足)
エッセイではなく寓話なので教訓を書かなければなりません。
被差別者であろうと搾取してきたら、搾取された人達は生存権を行使して、搾取する被差別者と「闘わ」なければならない。
同時に差別構造をなくすために力を尽くす。
これです。
根本的解決は資本主義(搾取)と天皇制(身分差別)を解消することです。









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