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ハピネスの基盤名古屋

ファックコロナのお陰で夏に帰省できず半年ぶりに名古屋に帰った。もうすぐお正月だからと宥めすかされたものの強情に押し入って帰還した。実家で小言を聞きながらでも安心して眠りたかった。そして明確に幸せでいてほしい人たちを見つめるとこれ以上ないモチベーションが湧き上がってくるので実家は起爆剤なのだ。
電話口でも愚痴ばかりの母に毎度苛立っても会いたかった。皮肉な小言を連発しているグランマでも好きなのだ。
母の小言を流さず律儀にキレる父にも絶えず笑っていてほしいと思う。
家事も手伝わず成人しても弁当を平然と作ってもらう弟も当たり前のようにバイトの送り迎えをしてもらう妹も私が実家にいた頃は受けなかった類の愛情を注がれてる二人を憎みつつも愛おしく思ってしまう。
唐突に白髪を染めることを辞めた母を見て浦島太郎が陸に上がった時のような喪失感を覚えた。
毎朝6時に家を出て夜21時過ぎまで働き詰めの生活を送る父の横顔が十分疲れているように見えた。
姑との確執から父への愛情が見るからに減った母と年老いた母と妻の板挟みで疲れている父。
きっとあり触れた類の大変さだと思うが、電話越しから少し息継ぎのしずらい日々が伝わってきて助けたい気持ちもあった。
きっと根底から解決をするには数日の滞在では不可能で、何をどうしたらみんなが幸せだと感じるのかも分からなかった。
それでも父や母のこぼした小さな望みを家族で叶えに行った。岐阜までドライブして渓谷を眺めに行ったり栗きんとんの名店を巡ったり。
帰省のたびに寄るパン屋でカスタードクリームをその場で絞ってくれるコロネを食べた。
はしごしたパン屋で焼きたてザクザクのチーズバゲットにみんなでかぶりついた。
ドライブの道中イントロクイズで盛り上がってサザンを口ずさむ。
少し前に美味しそうな海苔を送ったのに一向に封を切らず、みんな揃ったら手巻き寿司を食べたいなと父が言っていたので奮発して刺身をたくさん買って手巻き寿司パーティーもした。
みんな無言で食べ続け沈黙に母が耐えきれず笑い出す。ビールで乾杯してからワインを開けた。
ありあまるささやかな幸せを幾度も感じて胸が詰まった。
ジェラートを食べに行こうとノリで訪れた牧場で母が撮った私はとても無防備な顔で笑っていた。
ハロウィンの仮装を中途半端に施されたカカシが並ぶ道で唐突に間に入ってポーズを取れと言う父の言葉に従ってダサい写真も撮ってもらった。

秋風はためくコスモス畑を3人で歩く。
小さな女の子が柔らかそうな頬を揺らして笑っている様子を横目で見ながら何度も可愛いなぁと父が言う。

そういう温度の眼差しを私も受けていたのかなと都合良く受け取っておいた。

帰省最終日の明日は母をヘッドスパに連れて行こうと思う。
夜は仕事終わりの弟を出待ちして飲みに行けたら最高。

次に帰る年末には奮発して蟹を買いたい。
そろそろ付き合いの長い彼も紹介して、余計なことを言う母に赤面したり絶望したい。
不完全なまま全力で愛してる。ここはハピネスの基盤のナゴヤ。

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