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ねごやファームインタビューショートver. 津久井在来がつくる顔の見えるつながり

神奈川県相模原市の養鶏場ねごやファーム代表の石井好一さんのもとへ訪問し、お話を聞かせていただきました。

石井さんは3代続く養鶏場を経営する傍ら、津久井在来大豆の普及に努める「大豆の会」の代表を務め、地域の小学校でも体験農園の活動をされています。

ねごやファーム3代目代表の石井好一さん。
飾らない雰囲気で、終始楽しく取材させていただきました。

「大豆の会」の体験農園についてや津久井在来についてはもちろん、大豆の現状や課題、今後の展望について興味深いお話を伺うことができました。

地域とつながる体験農園

津久井在来に携わったきっかけ

――ねごやファームは元々卵の農家さんと伺いましたが、津久井在来を作り始めたきっかけはなんでしょうか?

◆20年前、この地域の農業の元気がなくなってきていて、これからの方向を検討していたら、ある先輩から「津久井には大豆があるじゃないか」「石井、大豆やってみろよ」と言われたことがきっかけです。

――体験型の取り組みはなぜ始めたのでしょうか?

◆当時、イベント的に体験型の栽培、農業体験を含めたものをやっていくような動きがあった時代だった。きっとこれをやれば成功するなと思って、みんなに提案して始まったんです。

「大豆の会」を通しての普及活動

――では作り始めた時からずっと体験型ですか?

◆そうそう。最初は4人で始めたんです。

その4人のメンバーが体験型で、この津久井在来の普及の中核を担っています。

――体験の参加者はどれくらいいらっしゃるのですか?

◆うちで40人ぐらいかな。あと他のメンバー入れると年間で130とか120とか。

この畑で、体験型で津久井在来が育てられています。

――仕組みはどのようなかたちですか?参加者さんがお金払って畑の一区画を買うみたいな?

◆違う違う、種まきから収穫まで全部携わってもらうやり方。私だけで作業するってことはしないっていう流儀でやってきてるから。

体験の最後に仕込み味噌10キロをお返しして、収穫物は私の方で販売しています。

会費が8000円だから、それだけの価値を認めてないと続かないじゃん。だからお客さんの意識が違うなと感じています。

今9割方はもうリピーターだから、ほとんど私はそんなに言わなくても自然と動いてっちゃう。

――顔が直接見える繋がりになってくるんですね。

◆そうです。だから、これは人の繋がりで成り立ってきたっていうことだと思います。人ってそこだと今になって分かるな。

地域小学校での取り組み

石井さんが「大豆の会」を始めたのは2001年。当初は小学校での活動はありませんでしたが、とある教員の声から地域小学校での取り組みが始まりました。

◆近所の根小屋小学校から一緒にやらせてくださいっていう先生が来て、学校がその時取り組み始めた。

その次の年ぐらいから新聞記事になったのかな。ちっちゃい記事だったけど。

――根小屋以外の場所でもやっているんですか?

◆そうです。相模原の大体全域。今年、1人で10校回りました。

子供たちとの関わりを通して

――農業体験だけではなく、大豆について教えたりもするのですか?

◆そう。大体種を蒔く前に1時間話をして、あと1時間を種まきに。

教科書で「姿を変える大豆」って単元があるのよ。それと一緒に総合でやればいいなっていう狙い。

子供たちに調べてもらってから作るから、子供たちの認知度・関心がすごく高くなるじゃん。

――これから認知してもらうには、子供が1番ですもんね。

◆そういう戦略もあるけど、これはもうね、私は道楽になってきてる

子供に「ありがとう」って言われてにっこりされたら、もうおしまい、全てがおしまい。学校で我々がこれをやる基礎だよ。

直売所にはこどもたちからのお礼のメッセージが。


認知度の高まり

――地域に普及しているという実感はどれくらいありますか?

◆地域の中では数量的には全然統計が出てないんだけど、当時に比べれば全く雲泥の差。やっぱり大きいのは認知度だね。

作る人たちの中、住民のたちの中にも"津久井在来大豆"であるということへの誇りが出てきているってことは、すごい価値のあることだと思う。

――認知の高まった実感があったのはどのような瞬間ですか?

◆年々、新聞とか、県内で他の仲間の地域が取り上げられたりするのよ。そういうことで県内にも結構知れ渡ってきた。

あと、大きいのは辰巳芳子さん。大豆100粒の。その会から大豆を出してもらえませんかって話が来て。辰巳先生と一緒にできたっていうのが大きいです。


課題

――今、大豆について課題に感じることはありますか?

◆やっぱり畑が足りないっていうのは現実です。あと、もう少し機械化をして体験の人たちの負担を軽くしていかないといけないのかなと思います。

――大豆は直売と、豆腐屋さんだけに卸しているのですか?

今、直接卸してるのはとちぎやさんくらい。あと時々日本味噌に頼まれたりするから、そうするとちょっと大口になってくるけどそのくらいだよ。

体験して味噌にするだけで300キロ近く使っちゃうからね。あと豆腐屋さんに卸したりして、なくなっちゃうんだよ。


津久井在来の今後

加工品の話

――津久井在来が使われてる豆腐や味噌ってそこまで多くないのですか?

◆多くない。味噌もそんなに出回ってない。大豆がないから。

豆腐は逗子のとちぎやさんと厚木の三橋さん。この2人が混ぜ物なしで100%の豆腐ができる。

――今後津久井在来がどういう位置になってほしいと思いますか?

◆うーん…もっと加工品ができて。豆乳、豆腐だろうなあ、その辺じゃないのかな。

――価値認める人は買うし、あんまり高いと思わない人たちは、美味しければ買う。

◆そう。だから勇気だよ。500円の豆腐を150円ぐらいの豆腐の脇に置けるかっていう。売れなかったらどうしようじゃなくて、売れなくて当たり前でおけるかってこと。

そういうふうになってくると、安い豆腐買った人もたまには高いのに手を出すこともあるじゃん。

今みんな安いのを豆腐だと思って、味のないもんだと思ってるわけじゃん。で、それに味を乗せていった時に驚くわけじゃん。要するにプリンを食べるっていう感覚になってくる。そこがポイントだろうと思うんだ。

――味噌についてはどうですか?

味噌っていうと、味噌汁を毎朝のめるような食生活ってのもやってかなきゃいけないじゃん。

それを進めるために小学校でやってるのが、学校で子供自身が味噌仕込みして、それを家庭に持たせる。そうすると、家庭の中にも味噌に対する愛着が生まれてくんじゃん。

そこは狙いでやってるんで、そうやって普及していければなっていう風には思って。

「はやまたのくろ」という品種

◆とちぎやがまた面白いこと始めたんだよ、はやまたのくろって大豆があるのよ。それをブランドにしたいって。

――それは地元にあった大豆ですか?

◆そう、葉山のね。だからはやまたのくろ。

とちぎやがそれを見て、豆腐にしたいって。500円で売ってるって。

――じゃあそのはやまたのくろがこれから津久井在来のようになるかもしれないですね。

◆だから県内に2つ在来種を持ったら面白いなと思って、たのくろもやってる。ほら、今までの津久井在来をやって色んなノウハウを持ってんじゃん。その後追いしていきゃいい。

今後について、まとめ

畑の拡大、最後の仕事

――今後は畑を拡大して、沢山大豆を作っていきたいという方向性ですか?

◆今この地域、農業の基盤整備の事業を市がやろうとしてる。で、おそらく大豆の面積を持たないといけないと思って。今後どういうふうに展開していくかっていうことを考えていきたい。

それがうまくできたら、私のやったことが残っていくんだろうな。

ここまで大豆を中心でやってきて、やってきたこの経験とか人の繋がりっていうのは、農業基盤整備に生かしていかなきゃならないことだろうと思う。

ここまでいろんなことができるとは思わなかったので、自分も、いい歳・いい人に巡ったっていうことがやっぱり1番大きかったのかもしれない。

最後に

インタビューを通して、石井さんが何よりも「人との繋がり」を大切にしていることが分かりました。

津久井在来を盛り上げるだけではなく、体験型農業や小学校での講座を通して、石井さん自身が食べる人たちと繋がっていました。

簡単にできることではないですが、それも石井さんの津久井在来や地域への想いが原点にあるからこそできるのだと感じます。

石井さん、取材へのご協力ありがとうございました!


津久井在来の畑に連れて行ってもらいました!

ねごやファームHP:http://www.negoyafarm.com/index.html



おまけ

石井さんがおっしゃっていた、とちぎやさんに先日行ってきました!

逗子にあるお豆腐屋さん、とちぎやさん

津久井在来とたのくろ豆の豆腐、しっかりいただいてきました!
どちらも甘くて、ほんのりしょっぱいお豆腐で、何もつけなくてもペロリと食べてしまうほどの美味しさ👏

取材した大豆で作られたお豆腐を食べることができて幸せでした!

左が津久井在来の豆腐、右がたのくろ豆の豆腐


豆乳ソフトもしっかりいただきました


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